相談
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「それでリコちゃん。相談したいことって何?」
ゴードンさんを見送った後。
走ってきたらしいベクターも帰ってきて、ゼノと三人で晩ご飯前に少し話をすることに。
というのも、以前から相談したいと思っていたことがあったからだった。
「実は、お弁当箱がほしいなと思ってるの。だけど何をどうしたらいいかがわからなくて」
「オベントウバコ?」
「うん」
私はアンナちゃんに借りてきたお絵描き用の紙とクレヨンを使い、本来私が作りたかったお弁当とは何か、お弁当箱とは何かを絵に描いて説明する。
言葉ではうまく説明できる自信がなかったけど、元々の職業柄、絵なら得意なほうだ。
ベクターとゼノは私の描く絵をまじまじと見つめている。それはそうだろう。干し肉以外の料理を外に持ち歩くという発想自体、この世界では珍しいことなんだから。
「つまり、このオベントウバコがあれば、さらに弁当の幅が広がるってことか?」
「そうなの。今はおにぎりしか作れないからお米とその中に入れる具材の一つだけだけど、お弁当箱があればもっとたくさんのおかずが入れられて、もっとたくさんの栄養が取れると思うの」
もちろんその分金額は上がってしまうだろうし、本当に注文してくれる人がいるかどうかは別問題だけど。
ただ、おにぎりだけというのもやはり栄養が偏ってしまう。
冒険者というのは聞けば聞くほど危ないお仕事だから、少しでも栄養のあるものを食べてほしい。そう思ってしまう。
「だけど、お弁当箱はこの世界に無いでしょう? 私の世界でもこれは既製品を使うのが当たり前だったから、作り方とかもわからなくて。どうしたらいいか相談したかったの」
「材質は?」
「……木材、かな。おかずを詰める箱と、それを封するための蓋。あとは食べるためのフォークが必要かな」
プラスチックなんてないだろうし……。カトラリーも箸よりも慣れてるフォークの方が食べやすいだろう。
曲げわっぱを想像して答えると、二人は頭を悩ませるように考え込む。
やっぱり難しいかな。そう思って諦めようとした時。
「そういえば、木材加工の工房がどこかにあるって聞いたことがあるな」
ベクターの声に顔を上げると、ゼノも思い出したように
「あぁ、そういえば。ただ直接見たことはねぇな」
と頷く。
「それ、場所とかは……その人の名前とか!」
思わず前のめりに聞いてみるけれど、二人は困ったように首を横に振るだけ。
「そっか……」
木材加工の工房なら、どうにかして頼めるかもと思ったんだけど……。場所も名前もわからないならどうしようもない。
ふりだしに戻ってしまったと下を向いていると、
「あ、そうだ」
ベクターが思い出したように呟いて。
「それって、商業ギルドに相談してみたらいいんじゃない?」
名案を出してくれたのだった。
そういえば、ギルドに登録した時に相談カウンターがあるという話をされた。何か不安なことがあれば気軽に相談していいと言われたことを思い出す。
木材を扱う工房なのだから、ギルドに登録しているはず。ギルドから紹介してもらえることができれば、もしかしたらお弁当箱を作ってもらえるかもしれない。
善は急げ、とすぐに二人を連れて出発。
商業ギルドにたどり着くと、すぐに受付の右側にある相談カウンターへと向かった。
「あの、木材加工の工房がこの街にあると伺ったんですが……」
「はい、いくつかございますよ」
「そうなんですね! ……あの、そちらの工房をいくつか紹介していただくことってできますか?」
相談カウンターのお姉さんは親身になって私の話を聞いてくれた。
まだ私もお金がないから、ひとまず話だけでも聞いてもらいたいこと。興味を持ってくれたら、見積もりがほしいこと。可能ならば、いずれ注文できればと考えていること。とにかくたくさんの工房の方と話がしたいこと。
さっき描いた絵やおにぎりの販売の話、冒険者の栄養面なんかを夢中で話していると、カウンターのお姉さんもうんうんと頷いてくれた。
「かしこまりました。工房はいくつかございますが、その中でも家具を加工しているところもあれば、住宅用の木材加工専門の工房もあります。まずリコさんの希望はかなり小さいサイズでの加工となりますので、請け負うことができる工房は限られてくるはずです」
「そうですよね……」
そうだ。一口に木材加工と言ったって、大きさも専門も様々だろう。
こんな小さなサイズのものを加工してくれる工房なんて、本当にあるのだろうか。
「ですが、そういう加工が得意な工房もございます。そちらの工房に許可をとってからにはなりますが、ご紹介できる可能性はあるかと」
「本当ですか!?」
「えぇ。ただ、先方と話を進めるために数日お時間をいただくことになりますがよろしいですか? 良いお返事をいただけるかの保証もできかねてしまいますが……」
「はい! 大丈夫です! よろしくお願いします!」
話を通してくれるだけでもありがたい。それで断られてしまったら、また別の方法を考えよう。
「よかったら、この絵も使ってください」
「よろしいのですか?」
「はい。その方が先方もイメージが湧きやすいと思うので」
「かしこまりました。では一度お預かりしますね」
参考資料として絵を渡し、何度も頭を下げてからギルドを後にする。
「あとは工房側からの返事を待つだけだね」
「うん。本当に良かった」
第一歩を踏み出せたような、そんな気持ちだった。




