126話
月影を構えると月影に喰われるような感覚が押し寄せる。一瞬でも気を緩めれば喰われる。今度は喰い合いか、やってやろうじゃないの。
不思議そうな顔をするクロエ。
「ルクス。あんた、蹴られ過ぎて可笑しくなっちゃった?」
「え?」
「あんた。嗤ってるわよ?」
慌てて自分の顔を触ると頬が上がっていた。全く笑っている自覚なかった。いつまでも戦闘中のゲーム感覚が抜けない。ゲームじゃないことなんて頭じゃあわかっている。痛みもモンスターを斬った感覚も現実であることを証明している。
それでも魂が『ゲームなんだから戦闘を楽しめ!』と訴えてくる。3歳のあの日からその訴えを否定し拒絶してきた。否定ではなく。肯定しよう。じゃないと勝てない気がする。自分に足りないものなって多過ぎてどれから身につければいいかもうわからない。ならば魂に忠実になろう。
「え。笑ってますね。――たぶん色々と吹っ切りたんですよ。」
「そう?なら行くわよ」
クロエの目にも止まらぬ飛び蹴りを勘で回避ながら上段から振り下ろす。
――空を斬る。
クロエの速さに追い付かない。
俺の目の前に回避してたよとどや顔を見せつけるクロエが立っている。
「あら?追撃しないの?」
「え。当たる気がしないので――」
魔力でクロエの位置がわかっていても攻撃速度が遅すぎてクロエに当たらない。不意を突いた一撃なら与えられるかもしれないけど二度目は喰らわないだろう。
魔力を纏って身体能力を強化してもクロエには、届かない。
あの少年やスライムが見せた斬撃を飛ばすしかないのか。




