110話
階段を降りると大きな空間に出た。
至る所に壁画が描かれている。
黒い太陽と白い剣を持った勇者が戦う様子が描かれた壁画。
黒い太陽は、龍の姿となって世界を滅ぼそうとしている。世界を守るために勇者は立ち上がり仲間たちや精霊共に龍に挑み龍を封印した。
「――封印?」
壁画を眺めながら歩いていると朽ちかけている剣が台座に刺さっている。
この壁画を見る限りこの剣が龍を封印したモノだよな。今にでも壊れそうだ。これが壊れれば世界を滅ぼす龍が目覚めるのか?
ん。なんでここに。
「まぁ。考えても無駄か――さて、他のところ探索しよう」
探索に戻ろうと振り返り背伸びをしながら歩き始めた。
「何処に行く気だ」
背後から無機質な男性の声が聞こえる。
「何処って そりゃ・・・へ?」
質問に答えようと口走った瞬間。ふと、俺以外この場所に誰か居たか。
慌てて振り返ると幽霊がそこに居た。
後ろの剣の台座が透けて見える程透明にも関わらず存在感がすごい。
「おい。小僧。これを抜け」
「え? 嫌ですよ」
「お願いだから抜いて!」
幻覚を見るほど疲れているだな。よし帰ろう。うん。そうしよう。俺は何も見ていない。このフロアにも来ていない。
「何、逃げようとしてんだ。ゴラ 」
腕を掴まれ振りあろうとしても振り払えない。
「離してください」
「抜いてたら離してやるよ」
「それは絶対に嫌です。だってそれ壁画の龍が封印されてますよね?」
幽霊は、ゆっくりと目を逸らす。
「そ、そ、そ、そんなこと、な、な、な、ないよ」
あー。絶対そうだ。なら抜くわけにいかない。てかこいつ誰だよ。
「ところで貴方、誰ですか?」
「俺か? 俺は・・・」
幽霊の目線の先には、黒い龍がいた。
「あの龍の残滓ってことですか」
「まぁ。そうだな。」
あ、こいつ認めたぞ。
「それに本体は生きているしな」
「え?」
幽霊は手を離して台座に刺さっている剣を抜く。するとドス黒い液体が勢いよく吹き出す。
「え?え?え? 自分で抜けんの?」
「なんか抜けたわ」
「試してないのかよ」
ドス黒い液体は、幽霊の剣に纏わりつき黒い光を放ち目を覆う。
光が収まりようやく視界が戻る。
幽霊が持つ朽ちかけていた剣は、混じり気のない純白の炎を放出している太陽のような美しい剣になっていた。
「その剣は、」
「これか。これはな。『サンガリオン』と呼ばれる最初の宝具にして黒き太陽を狩るためだけに作られた神剣だ。」
黒い太陽を狩るために作られたのがサンガリオン? 最初の宝具? あれがネコが探していた宝具か。
「さて。お前さんが『月の天使』どもにこれを探せって言われてるんだろ?」
月の天使? ネコやルナのことか。
「おいおい。無言は肯定だぜ? 小僧。」
「そんなことはどうでもいい。なんで『サンガリオン』ここにあるんだよ。そもそもここは何処だよ」
「・・・まぁいいっか。ここは『神の寝床』。とある神が黒い龍を封じたあとに台座ごとここに持ってきただけに過ぎない。そして、精霊王にここの入り口を封じてもらったってわけだ。」
「え?」
「とある神ってのが俺な訳だが」
「ん? 貴方の正体ってあれじゃないの?」
俺は壁画の黒い龍を指差す。
「あー。違うけど?」
「へ?」
「お前さんをからかっただけだよ。え? もしかして気づいていなかったの?」
なんだろこいつ、全力で殴りたい
「まぁ。俺はアイツに喰われている訳だけど」
「待って情報多すぎるわ」
え?という表情をする自称神。




