表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

32話:手の温もり


 目が覚めた瞬間、外が騒がしかった。


 コノハは跳ね起きた。


 怒鳴り声。木が軋む音。何かを引きずる音。


(まだ戦ってる!?)


 立ち上がろうとした、その瞬間。


 すぱん、と戸が開いた。


「うわっ」


「うわっ」


 お互いの声が重なった。


 戸の向こうに立っていたのはサノだった。右腕に包帯。額にも包帯。着物のあちこちに滲んだ赤い跡。それでも飄々とした顔で、コノハを見下ろしていた。


 コノハはサノを見た。サノはコノハを見た。


 沈黙が三秒あった。


「……起きてたんだ」


 サノが先に言った。


「……起きました」


 コノハが答えた。


「外、まだ戦ってるのかと思って飛び起きたのか?」


「は、はい。そうですけど」


「終わったよ。今は修復してる」


「そうなんですか」


 また沈黙。


 コノハはサノの包帯を見た。右腕。額。肩のあたりも怪しい。軽傷、ではなさそうだった。


「……怪我、されたんですね」


「したね」


「痛いですか」


「痛い」


 あっさり言った。コノハは思わず笑いそうになって、堪えた。


「手当て、ちゃんとしたんですか?」


「した。赤朔がうるさいくらいしてくれた」


「そうですか」


 コノハはゆっくりと立ち上がろうとした。足元がふらついた。結界を張った後遺症がまだ残っているらしい。


 サノが手を伸ばした。


「大丈夫か」


「大丈夫です」


「嘘つくな、ふらついてる」


 コノハは素直に、サノの手を掴んだ。


 温かかった。包帯越しでも、変わらず温かかった。


(どうして)


 コノハは思った。


(どうして、この人の側にいると安心するんだろう)


 理由が分からない。出会ってそれほど経っていない。記憶喪失で素性も分からない。それなのに、ずっと前から知っていたような気がする。


 そんなはずはない。


 でも、そう感じてしまう。


「コノハ?」


 サノが顔を覗き込んでくる。


「……なんでもないです」


「顔赤いけど」


「結界の後遺症です」


「そっか」


 サノは疑わなかった。コノハはそれに少し、ほっとした。


「サノさん」


「なに」


「……ありがとうございました」


 サノは少し黙った。


「俺は何もしてないよ」


「してます」


「してない。コノハが結界張って、赤朔が戦って、俺はただ——」


「してます」


 コノハは繰り返した。サノが黙った。視線を少し外した。包帯の巻かれた右手が、コノハの手をまだ掴んでいた。


 どちらも、気づいていなかった。


あっさり風味

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ