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21.祝いの宴②

アリスタルフの身内を紹介していきます。

 ヴェネジクトの周りを囲む貴族たちが、〝第四皇子派〟と呼ばれるヴェネジクトを推している貴族たちだろうか。集まっている男たちの顔を覚えながら、ラリーサは〝皆、腹黒そうねぇ〟と心の中で呟く。

「ヴェネジクト兄上」

 アリスタルフが名を呼べば、大仰に両手を広げたヴェネジクトが〝これはこれは〟と口元に笑みを浮かべた。

「ようやっと、会えましたな。挨拶に来てくれるのを待っていたのだが」

 意地の悪い笑みを浮かべるヴェネジクトに、ラリーサは不思議そうに小首を傾げて見せる。

「あら、申し訳ありません。私からご挨拶に伺うのが、トリーフォンの作法でしたか?不慣れなもので、どうかご容赦くださいませ」

 申し訳なさそうに眉尻を下げ、ラリーサが〝申し訳ありません。陛下のお兄様に、失礼なことを〟と傍らのアリスタルフを見上げる。

「気にすることはない。リーサの立場であれば、どちらが先に挨拶に行こうが問題はない。言うならば、顔合わせの場を作らなかった私の落ち度だろうな。兄上も、リーサと挨拶をしたければ、言ってくれれば時間を取りましたよ」

 〝なぜ、俺の妃があなたの下に見られなければならない〟とでもいう様に僅かに瞳を細め、アリスタルフがヴェネジクトを見据える。

「俺は、お前の兄だぞ」

 不快に顔を歪めたヴェネジクトに、アリスタルフが〝それが何だというのですか〟と返す。

「私は、この国の皇帝です。リーサは、その私が〝正妃〟とするべくイリダールより貰い受けた妃です」

 〝礼を尽くしていただかねば〟と続けたアリスタルフに、ヴェネジクトが〝はっ〟と馬鹿にしたように笑う。

「行き遅れの年増を押し付けられただけだろう」

 そう吐き捨てたヴェネジクトに、ピリリとその場の空気に緊張が走る。不快感を露わに眉根を寄せたアリスタルフに、ラリーサは微苦笑を浮かべると〝陛下〟とその腕を軽く引いた。アリスタルフの視線が、ヴェネジクトからラリーサへと移る。己を見たアリスタルフに、ラリーサはにっこりと微笑みを向けると〝顰め面はダメですよ。笑顔です。笑顔〟という風に、ポンポンとアリスタルフの腕を軽く叩いた。スッと、アリスタルフの表情から刺々しさが剥がれ落ち、その顔にふっと余裕めいた笑みが浮かぶ。

「皆、リーサの年齢ばかりを気にするのは何故だろうな」

 〝なぁ、リーサ。君は、こんなにも美しいのに〟とその頬に口づけたアリスタルフが、ヴェネジクトへ視線を戻す。

「年齢など関係ありませんよ。むしろ、リーサが誰とも結婚せずにいてくれたことを、私は創造主に感謝しなければならないとさえ思います。彼女は、私にとって最高の〝后〟だ」

 〝私の元に来てくれてありがとう〟と続けたアリスタルフに、ラリーサが〝まぁ〟と嬉しそうに華やいだ笑みを浮かべ〝勿体ないお言葉ですわ〟と薄っすらと頬を染める。

「他にお話が無ければ、この辺で」

 〝行こうか〟とラリーサを見やったアリスタルフに、ラリーサが〝はい〟と頷く。

「では、ヴェネジクト殿下。失礼いたします」

 スッと膝を折り、ラリーサはにっこりとヴェネジクトへ微笑みかける。余裕めいた笑みを浮かべ、仲睦まじく去っていくアリスタルフとラリーサの背を、ヴェネジクトは苦々しく睨み付ける。背後から感じる不穏な視線に、ラリーサは〝確かにこれは……お世辞にも皇帝の器とは言えないわね〟と心の中で溜息をつく。明らかに敵意を表してくるということは、皇位を諦めていないということだろう。アリスタルフの周りは、大丈夫なのだろうか。皇太后はヴェネジクトを皇位に据えたいと考えているのだろうし、アリスタルフの味方は思いのほか少ないのかもしれない。近いうちに、ミハイルに聞くか、キリルやキーラに調べさせなければと心に決めて、ラリーサはアリスタルフとホール内を巡りながら、貴族たちから挨拶を受けていく。

 その中に、皇族を抜け、貴族の元に嫁したアリスタルフの腹違いの姉たちもいた。


「皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶させいただきます」

 深々と礼をし、一組の男女が二人の前に進み出る。年の頃は40歳に届こうかという男性と、ラリーサと同じ年頃の女性だ。

「あぁ、久しいな。チェレプコフ辺境伯。アクサナ姉上も、お元気いらっしゃいますか?」

 どこかホッとしたような笑みを浮かべたアリスタルフが、辺境伯の隣で微笑みを浮かべる女性を見やる。

「えぇ。お陰様で。平和に過ごせているわ。皇后陛下も、お久しぶりです」

 にこりとラリーサに微笑みかけたアリスタルフの姉――先々帝の第一皇女である女性――アクサナに、ラリーサは〝その節は、お世話になりました〟と微笑みを返す。


 アクサナが嫁いだチェレプコフ領は、唯一イリダール王国と接している領地だ。ラリーサがトリーフォンの地へ足を踏み入れた時、向かえてくれたのはチェレプコフ辺境伯とその妻であるアクサナだったのだ。


「一度、ゆっくりとお話をしてみたいと思っていたのです。アクサナ様は、いつまで帝都にいらっしゃるのですか?」

 チェレプコフ辺境伯は、〝中立派〟に近いと聞いている。〝皇太后派〟〝第4皇子派〟ではない人から、出来れば情報を得ておきたい。〝せっかく、義理とはいえ姉妹となったのですから、お茶会に招待したいのですけれど〟と続けたラリーサに、アクサナが〝よろこんでお受けしたいと思います〟と笑みを深める。

「なんなら、夫は先に領地へ返しますわ」

 〝ふふふ〟と朗らかに笑ったアクサナの隣で、夫であるチェレプコフ辺境伯が〝ひどいな〟と苦笑する。

「もしよろければ、チェレプコフ辺境伯も一緒にいかがです?もちろん、アリスタルフ陛下もですよ」

 〝いろいろと聞かせてくださいませ〟と、ラリーサが微笑む。

「今、トリーフォン帝国の地理について学んでいる最中なのです。その土地に実際に住まう方のお話も聞いてみたくて」

 〝駄目でしょうか?〟とラリーサが傍らを見上げて尋ねれば、アリスタルフが〝たまには内輪のお茶会もいいだろう〟と笑って頷く。

「チェレプコフ辺境伯も、我が妻の我儘に付き合ってくれないだろうか」

 軽口めいた口調で片目を瞑ってみせたアリスタルフに、僅かに目を見張ったチェレプコフ辺境伯が〝喜んでお受けいたしましょう〟と笑う。

「妻に先に帰されるのも淋しいですからな」

 そう言って、チェレプコフがアクサナと微笑み合う。その姿から夫婦仲が良いものであることが伝わってきて、ラリーサは〝よい関係が築けるかしら〟と期待する。

「日取りは、改めて使いを送ろう」

「お待ちしております」

 〝では、また〟と笑みを交わして、アリスタルフとラリーサはその場から移動した。

【宴に参加中のアリスタルフの身内】

・皇太后 ⇒ 先々帝の〝后〟

・ヴェネジクト ⇒ 先々帝の第4皇子。母は、皇太后。

・アクサナ ⇒ 先々帝の第1皇女。母は、第1側妃。現在は、チェレプコフ辺境伯夫人。年の差婚です。

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