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14.お茶会①

アリスタルフとのお茶会です。

月に1~2回は、設定されてる感じ。

 綺麗に手入れのされた中庭にある東屋。その下に置かれたテーブルの上には、温かな紅茶と美味しそうなスイーツが並んでいる。

「どうだろう。少しは、こちらでの生活には慣れてきただろうか」

 紅茶の香りを楽しみながらティーカップに口をつけたラリーサへ、向かいに座ったアリスタルフが尋ねてくる。コクリと紅茶で喉を潤した後、ラリーサは手にしたティーカップをテーブルへ戻すと、にっこりと微笑んで見せる。

「お陰様で、忙しくさせていただいてますわ」

 ラリーサの返答に、アリスタルフが〝ミハイルから、話は聞いている〟と苦笑を浮かべた。


 ラリーサがトリーフォンへ来てから約1ヶ月ほどが経つ。現在、ラリーサのスケジュールは分単位で詰め込まれている状態だ。成婚の儀に向けた準備。正妃となった後に使う部屋――ちなみに、後宮の中でもアリスタリフの私室に一番近い場所にある部屋だ――も整えねばならないし、皇宮作法やトリーフォン帝国史を学ぶ時間も取らねばならない。さらに、マルファによって毎日必ず一定時間〝刺繍の時間〟を取られている。まさに、休む暇もないといった状況となっている。


「予定を詰め込み過ぎではないか?」

 〝休んでいるのか?もう少し余裕を持ってもいいのでは?〟と心配そうに眉尻を下げたアリスタルフに、ラリーサは〝大丈夫です。休日も作っておりますし〟と告げる。

「元気があるうちに進められることは進めておきたいのです。期限が迫ってからあれもこれもとバタバタするよりも、時間のあるうちにバタバタしておいた方が、後の余裕に繋がると思いまして」

「ふむ……。そのような考え方もあるか」

 アリスタルフが納得したように小さく頷く。そんなアリスタルフへにっこりと深めた笑みを向けて、ラリーサが〝ただし、そんな余裕が生まれることなんて、滅多にないのですけれどね……〟と言い放つ。

「どんなにスケジュールを巻いて事を進めても、結局はなぜか不思議とバタつくのです……」

 どこか遠い目をして〝そして思うのですわ。早めに進めておいて本当によかった……と〟と続けたラリーサに、アリスタルフが僅かに表情を引きつらせて〝そ、そうか……〟と言葉を返して、紅茶を飲む。

「陛下の準備は、進んでいらっしゃるのですか?」

 〝陛下のお衣装は、ほとんど仕上がっているのでしょう?〟と尋ねたラリーサに、アリスタルフが〝その点は、今のところ問題はないな〟と答える。

「次回の衣装合わせの際には、俺も同席する」

 アリスタルフの言葉に、ラリーサが〝まぁ。陛下のお衣装も見れるのですね。楽しみです〟と声を弾ませる。

「お互いに並んでみて、バランスを調整せねばならないからな。……その際に、アクセサリーの類を貴女に贈りたいと思っている。貴女のドレスのデザインに合わせて、いくつか選んだのだが……」

 どこか気恥ずかしそうに視線を逸らせてアリスタルフが、〝正直、俺にはセンスがない〟と溜息をつく。そんなアリスタルフに、ラリーサは〝まぁ〟とクスクス笑うと〝どんなものであれ、お贈りいただけるものは嬉しいですよ〟と告げる。

「それが例え、ガラス玉でもその辺に落ちている石でもいいのですよ。そのお気持ちが嬉しいのですから」

「謙虚だな。他の妃は、誰がどんな宝石をもらったのか、いつも気にしているようだぞ」

 苦笑したアリスタルフに、ラリーサは〝あまり、そのようなことに興味はありませんねぇ〟と頬に手を添える。


 現在、アリスタルフには皇妃が1人、側妃が3人いる。皇妃は、アリスタリフがまだ皇子の頃――皇位を継ぐ前に婚姻を結んでおり、3歳になる皇子がいるという。アリスタルフの血を引く唯一の皇子の生母であるため、その皇妃が〝正妃〟に立つことになると本人も周囲も思っていただろう、結局、ラリーサが隣国から〝正妃〟として嫁いでくることになり、その皇妃は〝第二皇妃〟という地位に落ち着くことになる。

 ラリーサの嫁入りが決まる前から勝手に〝正妃〟の部屋を整え始めていたらしく、ミハイルが〝勝手に家具を入れるなど、誰が許可したのか……〟と渋い表情を浮かべていた。


「陛下の正妃に相応しい質と格のあるアクセサリーを着ける必要はあるとは思いますけれど、そう多くはいりません」

 〝普段から、あまりアクセサリーの類は着けないですし〟と続けたラリーサの言う通り、アリスタリフの他の妃と比べてラリーサが身に着けるアクセサリーは控えめだと感じる。鎖が細く、石もそれほど大きくないラピスラズリのネックレスに、同じ石を使ったピアスとリング。身に着けているドレスも比較的シンプルだ。

「その……アクセサリーだけでなく、貴女に何着か……ドレスを贈りたいと思っているのだが、シンプルなデザインの方が好みだろうか」

 実は、すでに専属のデザイナーにいくつかデザインを起こさせている。他の妃の好みも参考にして書かせたのだが、再考が必要のような気がする。

「まぁ。ありがとうございます。そうですね。出来れば、動きやすいドレスだと嬉しいです」

「動きやすい?」

「はい」

 にっこりと笑みを深め、〝シンプルなドレスの方が、執務を進めやすいのですよ〟とラリーサが言う。

「陛下のお手伝いをすると、お約束しましたから」

 〝成婚の儀が終わるまでは、大したことはできませんけれど〟と軽く肩を竦めて、ラリーサは背後に控える侍女――今回連れているのは、マルファとカルロッタの二人だ――カルロッタを見やる。ニコリと笑みを深めたラリーサに、カルロッタはスッとテーブルに歩み寄るとラリーサの前に置かれた皿を手に取る。そして、ラリーサが指さしたスイーツをいくつか乗せると、再びその皿をラリーサの前に戻す。

「……新しい侍女とは、うまくやっているか?」

 ラリーサとカルロッタのやり取りを眺めていたアリスタルフが、背後のミハイルを視線で呼びながら尋ねる。カルロッタと異なり、主の好みを把握しているミハイルは、アリスタルフに確認することなくいくつかのスイーツを皿に盛る。

「そうですねぇ。カルロッタの為人は何となくわかってきました。侍女も護衛騎士たちも、まだ少しギクシャクしていますけれど、こればかりは時間が解決してくれるのを待つしかできませんね」

 〝はぁ〟と一つ息を付き、〝皆、よくやってくれておりますよ〟とラリーサが笑う。

「すでに、数名、辞任を申し出たと聞いたが?」

 ラリーサの背後に立つカルロッタへと、アリストタルフが少し厳しい視線を送る。謝罪するようにスッと頭を下げたカルロッタに、ラリーサは〝仕方ないですよ〟と取り成すように声をかけ、微苦笑を浮かべた。

「どうしても〝相性〟というものは、ありますし。気を付けてはいるのですけれど、私も、どうしてもイリダールから連れてきた侍女を頼ってしまうことが多くて……」

 〝筆頭を変えませんでしたしね〟と苦笑を深めたラリーサに、アリスタルフが〝筆頭に信頼のおける者を置きたい気持ちはわかる。仕方なかろう〟と息をつく。

「そこは、トリーフォン側が呑み込むべきだろう」

「皆、呑み込んでくれておりますよ」

 〝カルロッタもよく纏めてくれておりますし〟とカルロッタへ笑みを向けたラリーサに、カルロッタが〝恐れ入ります〟と微苦笑と共に頭を下げた。その小さな苦い笑みから、トリーフォン側の侍女たちを纏めるのに苦労していることが読み取れる。しかし、今は耐えるしかない。ラリーサは侍女たちの、侍女たちはラリーサの為人を知り、理解し信頼し合えるようになるまで――一朝一夕で解決するようなことではないのだから。

「辞任は受け入れております。今のところ、人が足りないということはありませんので、侍女の補充は結構ですよ」

 〝まずは、侍女たちの連帯感を高めることに注力したいので〟と、ラリーサが告げる。

「護衛騎士たちの方は、良くも悪くも単純といいますか……実力主義といいますか……」

 〝一度剣を交えてしまえば、ある程度の纏まりを見せてくれるので助かっています〟と、ラリーサが笑う。

「そういえば、離宮の中庭で護衛騎士たちの〝剣術大会〟を行ったらしいな」

「はい。キリルが、一人一人の得手不得手を把握するのにもちょうどいいと申しまして。とても、盛り上がりました」

 〝楽しかったです〟と笑みを深めたラリーサに、アリスタルフが〝次回は、俺も呼んでくれ〟と笑う。

「あら。よろしいですよ。陛下も参加されますか?そうですわ、私と前座の試合を行いましょう」

 〝いい考えを思いついた〟と胸の前で両手のひらを合わせたラリーサに、アリスタルフが〝貴女と手合わせしろと?〟と苦笑する。

「もちろん、ハンデはいただきますよ」

 茶目っ気を交えて片目を瞑ったラリーサに、〝あははは〟とアリスタルフが声を上げて笑う。

「わかった。では、俺も体を鍛え直さねばならないな。貴女に無様な姿を見せるわけにはいかない」

「まぁ。なら、私も護衛騎士たちに稽古をつけてもらわなければ」

 〝マルファ、刺繍の時間をいくつか、剣の稽古の時間に変えてくださいな〟と背後のマルファを振り返ったラリーサに、マルファは〝やられた〟というように僅かに眉根を寄せた後〝畏まりました〟と仕方ないといった様子で頭を下げた。

ラリーサ王女は、体を動かしたい。

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