ラディンの場合 32
それから、親衛隊の騎士のすべてがラディンを探して城中を駆け回った。レナードもその中に参加する。
横暴な態度の隊長は、本当は皆に嫌われていた。いままで鬱憤の溜まっていた騎士達はこの機がチャンスと思い結託をしたのだ。
アディセとレクステが言った事が本当ならば、これは隊長とシャムロックの二人の、地位を失墜させる、絶好の機会になるはずだ。
当然、レナードもそれに参加していた。そして、レナードはこういう時にかぎって、ラディンにとっては迷惑なことに頭を回転させた。
「薬の検査をされるのが嫌なんだから……」
そう呟くレナードはある場所を探した。
飲める水が大量にあるところだろう。水を飲めば体の中の薬の成分は薄まる。検査をしても引っかからないかも知れない。
「井戸だ……」
そう考え、一直線に井戸に向かっていった。
一方、逃げ出したラディンはレナードの考え通りに井戸に向かっていた。
ラディンは、血からクスリの成分が検出されるワケにはいかない。水を飲めば薬の成分は薄まる。だから、大量に水を飲むべきだと考えた。
向かう先は当然井戸。水をガブのみして薬を抜くこと。そして、出来る限り長く逃走をする事がこれからの課題だ。
ラディンは井戸にまで行くと桶を井戸の底に落とした。
「いたぞおおぉぉぉ! ラディンだあああぁぁぁ!」
ラディンは背後からレナードの声が聞こえてきて驚いた。
すぐさま水を飲むのを諦めて逃げ出す。
「うおおおおぉぉぉぉ!」
そう叫んだ親衛隊の騎士達が、ラディンの眼前に現れた。
前からも、後ろからも、騎士達が迫ってきている。逃げ場がなくなったと感じたラディン。
そこに、騎士達が組み付いてきて、ラディンは捕まった。
「皆の者! やはり、検査の結果は陽性であった!」
ここは食堂。今は騎士たちの昼食の時間で、親衛隊の騎士たちは、全員ここに揃っていた。
検査の結果を伝えるため、レクステは高らかに声を上げた。
あの時の事は皆が記憶している事だ。暴れるラディンから、無理やり血を抜き、血液の検査をする。
今は魔法の力を使って検査をしているため、検査にそんなに時間がかかるワケではなく、数日で出るのだ。
あれからの隊長の行動は、今まで通りの横暴な行動であった。
ラディンとレクステを前線送りにして、アディセも王宮から追放をした。アディセもこうなる事は分かっていたため、素直にそれを受け入れ、今はどこかに行ってしまったらしい。
そして、隊長の方は、逃げるようにして、地位を辞したのだ。
自分を陥れた者達に復讐をしただけにしか見えない、隊長の行動を見て、大人げないとか、見苦しいとか、親衛隊の中で噂される事になる。
「俺が前線送りかよ」
勝ち誇ったレクステのことを見ながら、ラディンは隅の席で愚痴る。
こんなんじゃ、成り上がりなど、夢のまた夢。隊長が辞任をして皆が喜んでいるのに、自分の出世の道が断たれたのを感じて、ラディンは辛い気持ちになりながら、飲めない酒を飲んで、気を紛らわしていた。




