ラディンの場合 31
ラディンは、シャムロックの攻撃が、どんどん短調になっていくのに嫌気がさしてきた。
『その上、ヤバい場所ばかりを狙ってくるし……』
シャムロックは、完全にラディンに殺意を持っている。だが、それに殺されてやるようなマネもできないラディン。
『早く……なんかいい感じの攻撃をして来い……』
心の中でそう思うラディンだが、シャムロックの攻撃の速さと鋭さはどんどん増していくばかり。
「待ってください!」
そこに声がかけられる。ラディンはその声がした方に向けて振り向いた。
アディセが、周囲の見物人達を割ってラディン達の前に進み出てきたのだ。
「この決闘には不正が行われています!」
一斉に、周囲の視線がアディセに集まる。
「私は、騎士ラディン様の食事に下剤を盛りました!」
そう、アディセが言うと、周囲の視線が、ラディンに集まっていく。
タイミングが悪く、その瞬間に腹が鳴った。
「こ……これはただの胃腸風邪で……」
なんとかしてゴマかそうとするラディン。とうのシャムロックは、ラディンよりさらに声を大きくして言う。
「そうだ! 言いがかりは止してもらおう! 下賤な使用人風情が、そんな妄言で、私の事を陥れようなどと!」
「下賤な使用人だけではない! 私も証人だ!」
さらに人垣の中からレクステまでも飛び出してきた。
「私が証人だ! 士爵レディッツの娘、レクステ!」
そう大声で叫ぶ。周囲の者に聞こえるように。
シャムロックの事を見る者、そして、レクステの事を見る者、この場にいる者は、そのどちらかに、視線が集中していた。
「私は魔導師の知り合いがいる。調べれば、騎士ラディンの血液から、薬の成分が検出される事だろう!」
『ヤバい……血を検査などされたら、言い訳ができなくなる』そう思い、ラディンは人垣をかき分けてその場から逃げ出した。
「待て! 騎士ラディン! どうして逃げる!」
レクステがそう言い、ラディンの事を追っていく。




