フルータの場合 18
夕食会も終わり、調理場で全員が帰る時間。フルータは一人で片付けをしていた。
今は、料理に使われた皿を洗っているところだ。
「貴族の人らって、なんでこんなに物を残すんだろうね? こっちがせっかく頑張って作ったんだっていうのに……」
フルータの後ろには、手をつけられずに残った料理がズラリと並んでいた。
その中で、エビのフリッターをつまんで、自分の口にまで持っていくレイティが言う。
「意地汚くガツガツ食うと、パーティから追い出されるよ。こういうパーティでは、料理は飾りみたいなものらしいからね」
フルータが言うのを聞きながらエビを食べたレイティ。
「それでも、料理を作る人間からすると、何のためにこんなものを作っているのか? 分からなくなるものじゃない? 手抜きの料理を出してやろうって気にもなるもんじゃない? このスープには、フルータの作ったブイヨンが使われているんだよ」
もう一つ、エビをつまもうとしているレイティの手を叩いて止めたフルータ。
「人の食べ残しなんて食べない」
レイティにそう一言言うフルータ。
レイティは、それで、フルータの隣に立って、皿を洗い始めた。
「君は子爵の家の娘なんだろう? もうちょっと、つつしみを覚えたらどうだい?」
「何よ……? フルータの前でまで、そんな事をしないといけないの?」
「そうだね、そういう考えじゃなくて、こう考えるんだ」
「ボクの前だからこそやるんだよ。この前ドレス姿を見せてくれた時の事を思い出してくれ」
そう言うと、ぼう……とした顔をし始めるレイティ。
「そうだね……フルータのためにも、可愛くしなきゃ」
フルータは考える。こういうタイプにはこう言っておくのがいい。レイティが自分に好意を抱いているのなら、それを最大限に使うだけ。フルータは、レイティに背中を向け口元を笑わせながら、していた。
「失礼します。フルータさんはこちらにいますか?」
突然に声をかけられたフルータは、厨房の入口の方に視線を向けた。
厨房の入口にいる人影を見て、レイティは顔を険しくした。その声の主は女の子だったからだ。
「ボクがフルータだけど、一体どうしたの?」
背中に刺すような視線を感じるフルータ。
フルータは、ビリビリとくる背中の痛みを感じながらも、その声に答えた。
「あなたが……」
そう言い、その女の子はフルータの前にまで歩いてきた。歩くたびにその子の金色の髪がフワリと揺れ、薄めの唇が緊張で引き絞られていた。
「私と……」
そこまで言って、言葉を止めたその女の子。フルータの前に立ち、頭を下げながら言う。
「私と、結婚をしてください!」
初対面の相手から、いきなりそう言われたフルータ。この状況についてこれず、フルータとレイティは、ポカンとした顔をした。




