神獣の子供(木)
*植林した木の状態を変えています
緑の琥珀がある低木→緑の琥珀がある枯れ木
大岩に住む生き物がカーバンクルだと確認できた後。残る二匹の正体を確認する前に時間が昼過ぎになっていたので、縁側で昼飯にそうめんを食べながら近くにいる二匹を観察をしていた。
「・・・相変わらずどっちも寝てばかりでほとんど動かないな」
今朝は木に何かしていた子ぎつねは、木に自分の寝床を作り終えてその中で丸まって眠ってからは一度も出てくることはなくて、縁側に伏せている灰色の子狼に至っては今朝見た時から少しも変わらず伏せたままだった。
「どっちもなんとなく正体の予想はついてはいるが、決定的な証拠を見たわけではないから何とも断定しずらい・・・ズズ・・・・・あっ、そういえば・・・」
そうめんをすすりながら二匹の正体を見極めるためにはどうしようかと考えていると、もし正体が予想している生物なら本体じゃなく他の事で分かるかもしれない事に気が付いたので、残りのそうめんを素早く食べきって片付けた後に、自分でインテリアとして植えた枯れ木の前まで近寄った。
「もしあの生物なら、この枯れ木と何か関係があるか調べればわかるかもしれない」
そう言うと、今朝少し成長するように形を変えた枯れ木を調べ始めて、根元から枝先まで隅々まで調べると近づいて初めて分かるほどの枯れ木の変化と分かりやすい副産物が見つかった。
「まあ、あるよな・・・」
調べてすぐに分かったのは、属性結晶になりかけている新しい葉っぱが一枚生えている事だった。透過しているほどに薄い葉っぱが木の上の方に生えていたので始めは見間違いかと思ったのだが、よく見るとちゃんと木に生えてきている葉っぱで薄い緑色が葉の根元から広がっていて魔力を感じる事から属性結晶になりかけている葉っぱだと判断できた。
「属性結晶の葉・・・という事はこれはあの木なのか?」
神野が呟いたあの木とは、ダンジョンで発見されたことがある世界樹の事で、噂だけが出回って真実かどうかも分からない話が沢山ある木の事である。
世界樹のうわさには様々なものがあってその中でもよく噂で流れているのは、葉っぱ全てが属性結晶で出来ている巨木を見たというものだった。だが、その噂を真実にする属性結晶の葉っぱが世間で公表されたことはなく、噂のみが独り歩きしているだけだった。
「まさか、ほんとうに?・・・でも、今まではただの枯れ木だったはず・・・・・でも、もし本当にこの木が世界樹だとしたら、この子狐は世界樹の番人と呼ばれる噂の生き物なのか?」
枯れ木の洞の中で丸まっている子ぎつねを見て呟くと、片手で口を覆うようにしながら考えだした。
世界樹を見たという人が居るのは事実だが、証拠となる者が何一つ手に入れることが出来ていない状況なので世界樹は探索者の間で噂のみ広がっていたが、その噂の中にある生き物に遭遇したという噂もセットで話されることが多く、その生き物に遭遇したときの噂が原因でより多くの探索者や果ては一般人にまで広く知られる事となっていた。
その生き物は様々な異名で呼ばれているが、探索者協会が定めた名称はその特徴的な見た目のままに【九尾の狐】と呼ばれている。
「世界樹の番人・・・エレメンタルフォックス・・白尾の狐・・・・・冥府の狐・・・・・」
【九尾の狐】についている異名を呟きながら、異名のもととなった噂を思い出していた。
世界樹の番人は世界樹を見つけた探索者が世界樹に近づこうとした時に、警告のように森が襲い掛かって進ませないようにした時に狐の鳴き声が辺りに響き渡っていた事から他の噂も併せて呼ばれるようになったはず。
他の噂は九尾の狐と戦闘をしたという噂で、森の中でただの大きな狐を狩ろうとしたら仕留めるどころか五属性を操る攻撃で反撃されて壊滅状態で逃げ出したという噂で、逃げる時に巨大な木を見た事と攻撃されるときに尾が増えている狐だった事から九尾の狐=エレメンタルフォックスかもしれないと噂されている。
そして、冥府の狐だけは他の噂とは毛色が違う話しで広まっている。その噂を話す人達の誰もが夢の中の話しだと言っており、誰もが光る葉っぱが生い茂る巨大な大木の下で亡くなった人と出会うことが出来たという噂だった。そして、その話で必ず最後に別れる時には亡くなった人が青白い人魂の様な炎になった後、巨木の下にいつの間にか九尾の狐が一匹座っていて、空を見上げるようにひと鳴きしたら目が覚めていたという噂話だった。
「他にも絶世の美男美女で現れたとか噂されているけど、今まで人になれるダンジョンの生き物は見たことがないから多分創作だろうな」
だが一番広く知られている九尾の狐の噂は、人伝で話されている美男美女の噂で一部の探索者などは噂を信じて九尾の狐を探す為に探索者を続けている人達がいるらしい。
「いつかは人に擬態するダンジョンの生き物が出てきてもおかしくないとは思うが、ダンジョンの生き物に人の美醜まで考えて擬態するとも思えないんだが・・・」
ほぼ最初期の頃からダンジョンで探索をしてきて、ダンジョンの生き物も変化したり進化ともいえるような変わり方をする生き物も現れて始めていることを知っている為、無い話ではないと思いつつも疑問の残る考察をしていたが、それよりも今は他にするべきことを思い出して木の洞で眠る子ぎつねを見た。
木の洞で眠っている子ぎつねは今は一本の尾を頭に巻き付けるようにして眠っているが、今朝は確実に二尾になっている所を見たので普通の狐ではない事は確実なのだが、二尾に増えたからと言ってまだ九尾の狐なのかは断定できないのが正直なところだった。
ダンジョンの生物で尾の数が二本以上ある生物はよくいる話で、尾が増えただけでは断定できないのだが、この木が世界樹に関係する場合は話が変わってくる。噂でしか聞いた事のない話と一致する木があって、その噂とセットで出てくる生き物とよく似た生物がいるなら、九尾の狐だと仮定して考えておいた方がいかもしれない。
「世界で初めて世界樹の葉っぱを売りに出したら一体いくらになるんだろうか・・・・・、この庭にある物の価値がどんどん上がっていくなぁ・・・本来なら嬉しい事のはずなのに、ため息が出そうになるのはなぜだろうな」
一旦確定ではないが、子ぎつねの正体を九尾の狐と仮定して今後の様子を見る事に決めて、世界樹(仮)から離れて再び縁側に腰掛けて、最後に残る子狼の方を見るのだった。
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