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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者は秘密の加工場へと行く


「とりあえずこんなもんかな?」


オリハルコンゴーレム討伐のために、ミスリルゴーレムとアダマンゴーレム、その他の魔物のスタンピードを発生させ、その波が落ち着いたころにクロウがつぶやく。


『いやぁ、見ごたえ満載でしたね』

『かれこれ二時間ぶっ通しで戦っていたよ』

『しかも当人に疲れた様子は一切ない』

『化け物かな?』

『化け物だよ』

「失礼な」


好き勝手言うコメントに対して文句を言いつつ、軽く体を伸ばす。疲れた様子はないが、それでも体を動かしている以上それなりの疲労感はもっている。


「クロウさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫。さすがにちょっと疲れた程度だから」

「二時間戦い続けてちょっと疲れた程度なんだね…」

『クロウさん故致し方ない』

『それで、どうするん?一旦落ち着いたしこれで終わり?』

「あー…どうするかなぁ…最低限欲しい数としては足りているけど、欲を言えばまだ欲しいんよなぁ…」

「あまり無理はしてほしくないんだけどなぁ…」


悩んでいるクロウへとみらいが言う。


「ちなみに、やってたことは連続でできるの?」

「できなくもない。ただ、回数を重ねれば重ねるほどイレギュラーが発生しやすくなる。最悪、スタンピードで出てくる魔物すべてがイレギュラーによって出現する特殊モンスターだったりすることもあるんだよなぁ…」

『ちなみにここの特殊モンスターってなんなの?』

「えっと…たしか…マゼランゴーレムだったかな?」

「なんですそれ?」

「複数のゴーレムのつぎはぎみたいな感じでできているゴーレムだよ。胴体アイアン、腕ストーン、拳アダマン、足ミスリル。みたいな感じ」

「そんな魔物いるの?」

「イレギュラーでしか出てこない特殊な奴だからなぁ。知らなくてもおかしくはない」

『ちなみにそれってドロップどうなるの?』

「構成されている鉱石の一つが少量ドロップする感じだな。さっき言った奴でいうのなら、鉄か石かアダマンタイトかミスリルのどれか一つが小石一つ分出てくるって感じ」

『強いの?』

「何とも言えんといった感じかな。胴体とかがアダマンタイトやミスリルでできているとちょっと面倒だったりする」


胴体が石や鉄でできていればそこまで強くはないが、アダマンタイトやミスリルのような素材でできていると、その分防御力が高くなので厄介になる。そして防御力が低かったとしても、代わりに拳のほうがアダマンタイトなどでできていれば、その分攻撃力が高くなったりする。

このように構成されている物質によってステータスが変動するので、共通の戦い方というのができなくなるのがマゼランゴーレムの面倒なところだ。


「だから、あまり何度もやりたくはないんだが…それでもたいていは二、三回くらいならやっても問題ないんだが、後々どういう影響出るかわからないんよなぁ…はてさてどうするか」


現在手に入れたオリハルコンでも、当初考えていた対シャドウ用の侵食を防止するアクセサリーは作成することができる。ただ、それでもミスリルをオリハルコンでコーティングする感じなので、時間経過でオリハルコンが侵食されればその先にあるミスリルにも影響が出てくる。

オリハルコンはミスリルよりも侵食されにくく、クロウが加工することでさらに浸食を抑えることができてはいるが、それでもおそらく完全にシャドウの闇の侵食を防ぐことはできないだろう。

可能であればすべてをオリハルコンで作成したいところだが、いかんせんいつ問題が起きるかわからない。だからこそ下手に欲をかくのも悪手だろう。


「一度龍脈の流れを整えて、その後別のところでもう一回スタンピード起こすか。それで集まった分で今日はおしまいにするか」

「大丈夫なの?」

「問題ないよ。龍脈にはいくつか枝葉があるからね。こっちの龍脈に影響が出ない位置ならそこまで大きなことにならない。まあ、その分移動に時間がかかるがな」

『そんなものまであるのか』

『まあ、ダンジョンなんて言う広い場所に広がっている川が一本道なわけもないか』

『離れた場所なら影響ないの?』

「ほとんどね。と言っても、それを複数やると全体に影響が出て魔窟暴走引き起こしそうだから、それも危険だがな。だからやっても二回か三回。最大サイズのダンジョンであったとしても、多くても五回が限度だろうな」


ダンジョン全体に魔力をいきわたらせる龍脈にちょっかいをかけると、いきわたらせる魔素にも影響を与える。

ちょっかいをかけた場所から離れれば離れるほど影響は薄れていくが、それでも別の場所で同じようなことをすればその影響が交わり大きくなる。だから、十分に間隔をあけて、そのうえで回数を減らさないと発生する影響がダンジョン全体に広がってしまう。


「んじゃ、まずはさっき魔力を置いた龍脈の調子を整えるとしますかね」


そう言ってクロウは移動し始めた。



『そういえばクロウさん』

「んー?」


龍脈の調子を整え終えて次の地点に向かう途中、リスナーから質問が来る。


『今回みたいなことって配信に乗せても大丈夫なの?』

「というと?」

『ほら、龍脈を乱してスタンピードを起こすなんて、結構悪用できることじゃない?』

「あー。それか。大丈夫大丈夫。確かにやろうと思えば悪用可能だが…これ、本当に繊細な魔力操作が必要になるから」

「そうなの?」

「生半可な魔力じゃ普通に龍脈にのまれて消えるし、圧縮して解けないようにすると逆に龍脈に干渉しない。つまり、消えずに干渉できる段階を維持しないといけないんでな」

「その魔力作り出せばできるの?」

「いや、そこにさらに龍脈を乱す魔力を加えないといけない。しかもその魔力はダンジョンごとに違う魔力だから、難易度がめちゃくちゃ高いんだ」

『つまり、今回の魔力を解析して真似てもここでしか使えないってことか』

「と思うじゃん?ところがどっこい、そううまくいかないものだ」

『どういうこと?』

「一度乱したら龍脈も学ぶのか、龍脈が再度安定した後は同じ魔力を投下しても全く乱れないんだ」

『つまり?』

「その時その時で乱れさせることができる魔力を発見して、それを硬くもなく柔らかくもない絶妙な強度の魔力で固めて放り込まないとスタンピードを引き起こすことはできないってことだ」

『なるほど』

『そりゃ確かに真似るなんて無理か』

『それができるクロウさんは一体…』

『まあ、クロウさんだし…』

『納得したくないのにそれで納得してしまうのが悔しい…!』

「ま、そんなわけで真似をしようにもそうたやすくできる物でも無いからな。普通に公開してるんだよ。それでもやろうとしている奴に関してはどうなっても俺は知らんしな」


クロウは追加で言わなかったが、これだけの事を話しても真似ようとするやつはいるだろう。だが、そういうやつは痛い目を見る。

乱された龍脈が学んで自らの耐性を上げることから龍脈…もしかしたらダンジョンに意思があるように感じていた。それ故か、生半可な魔力を流して乱れさせようとすると手痛い反撃を受ける。

先ほどまでの事を見て、真似ようとするやつならば痛い目に遭うべきだろう。どれだけ注意しても悪だくみを考える奴だっているし、面白半分にやろうとする奴だっているだろう。そういう奴らに何を言っても無意味だろうからな。


「っと。ここらへんでいいかな?」


そう言ってよさげな位置で止まる。


「んじゃ二回目行きますかー」


そう言って手を握り、内部に魔力を溜めこんで龍脈へと落とした。



「ただいまー…」


二度目のスタンピードを戦い終え、クロウは自宅へと帰宅した。


「おかえり。遅かったね」


ルディと共に寝ていたマーサが顔を上げてクロウを見た。


「ただいま。夕飯どうする?」

「お願いできるかい?シェルフは?」

「みらいちゃんのところで食べてくるからいらないってさ」


そう言いつつささっとルディとマーサのご飯を用意する。


「母さんたちが自分でご飯の用意できるようにした方がいいかねぇ?」

「私は構わないけどね。いざとなったらこっそりダンジョンに行って食べに行くし、そもそも魔素で十分だから。ただ、ルディの分は必要だろうね」

「やっぱそうだよなぁ」


ルディはカリカリだけでは食べたがらないので、自動餌給仕機では補えない。


「ま、そこらへんは後で考えましょうかね」


そう答えてからささっと夕飯を作る。


「それで?肝心な物はどうだい?」

「必要数の八割ってところかな」

「足りないのかい?」

「あくまでオリハルコンだけで作るにはって前提があるけどね。もともとの予定であれば余りができるくらいかな」

「ふぅん…どうするんだい?」

「とりあえず当初の予定通りミスリルとオリハルコンでアクセ作って、余った分でオリハルコンのみのアクセを作ろうかな」

「そう。それでどこで作るんだい?前は自室で作ってたけど、今回もそうするのかい?」

「いや、オリハルコンはちょっとリスクあるからね。昔からちょこちょこ広げてた秘密の作業部屋で作る予定だよ」

「秘密の作業部屋?」

「うにゃ?」


首を傾げるマーサを真似るようにルディも首を傾げていた。


夕飯を食べ、後片付けを終える。


「よし、んじゃあ作業部屋に行くとしますか」


そう言って立ち上がったクロウが階段下の扉に近づく。


「?そこは物置じゃないかい?」

「ああ。別にこの先じゃないんだ。扉があればそれでいい」


そう言って空間収納から透明な円形の板のようなものを取り出し、扉へと張り付けた。

すると板の中に魔法陣が浮かび上がり、扉全体を薄い青色の幕が覆った。


「これは…」

「前々から作ってた異空間拠点の入り口だよ。この特定の石を張り付けることで張り付けられた扉を異空間への入り口にすることができるんだ」


そう言って扉を開けると、その先は物置ではなく、青と黒が渦巻くような景色が広がっていた。


「入って大丈夫なのかい?」

「ああ。まだ作成中ではあるが、それでもきちんと拠点として暮らせるようにはしてあるからね」

「じゃあ遠慮なく」


そう言ってマーサが歩いて扉をくぐる。ついでに頭の上に乗っているルディも入っていく。

マーサたちの後をついてクロウも扉をくぐる。そこは玄関のような場所であり、扉を閉めてからクロウは張り付けた石を取り外した。


「それ、内側からでも外せるのかい?」

「ああ。じゃないと作業中に勝手に入られることもあるからな。きちんと位置情報はこの石に記憶されているから、きちんと戻れるよ」

「そうかい」

「んじゃ、ここに誰かを招いたのは母さんとルディが初めてだ。ようこそ。俺の秘密基地に」


そう言って玄関先の扉を開けてリビングへと招いた。


「ほう…いつもの部屋と遜色ない広さだね」

「あまり広いと落ち着かないからね」


そう言って冷蔵庫を開けてマーサとルディに飲み物を渡す。


「冷蔵庫とかも魔石があれば使えるから便利でいいよね。なんか食べるかい?」

「いいよ別に。それより少し中を散策してていいかい?」

「どうぞー。庭もあるからある程度は動けるぞ。まあ、そこは畑にもしてるけど」

「そうかい。じゃあ散策させてもらおうかね」

「あいよ。んじゃあ俺は地下の方で作業してるから何かあったら呼んでくれ」

「わかったよ」


そう言ってマーサはトコトコと屋内を歩き出した。

それを見送ってからクロウも地下へと降りていく。


「んじゃ作りますかね」


空間収納からオリハルコンとミスリルを取り出し、作業をし始めた。





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