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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者は改めて準備をする

精霊界で起こった事件から数日後。

クロウはシンと神獣を預けてある研究施設へと来ていた。

ちょうどギルマスの方もこちらに来てシンたちの様子を見ていた。


「どうだ?」

「まだ眠っている。やはり治療したとしても、侵食されていた時間が長かったから、その分体力の消耗が激しかったのだろう」


クロウの問いかけにギルマスが答える。


「起きたら話を聞きたいところだが、すぐ行けそうか?」

「難しい所だろう。結構な長い期間伏せっていたと神獣が話していた。まずは栄養などを取って体力を取り戻さなければ長く話すのも大変になりそうだ」

「やっぱりかぁ~」


淡々と伝えてくる言葉にクロウは肩を落とした。


「レイさんの方は?」

「問題ない。まあ、疲労は残っていたから二日ほど休ませたけどね」

「まあ、それがいいだろうさ」

「そっちの方は?指輪に吸収した闇の属性、解析は進んでいるのかい?」

「それなりだな。波長やら、それに対抗するための属性やらいろいろとわかってきてはいるが…」

「何か問題でも?」

「浸食力が強すぎて長時間解析できないんだよ。場合によっては解析の魔法陣にすら侵食してきやがる」

「そこまでなのか」


基本的に魔法陣というのは使い手の魔力で構成されている。その強度というのは籠められた魔力や構築した技術によって変化するのだが、クロウの魔法陣はその強度がとてつもなく高い。その魔法陣を侵食してくるということは、闇の侵食率もかなり高いということになる。


「対策は?」

「できなくはないが、キャパがなぁ…対策用の魔道具が侵食されて効果を失う可能性が高い」

「それを防ぐ方法は?」

「あー…今のところ思い浮かばん」


対策として浸食防止の魔道具を作ればいいのだが、完全に防ぐことはできない。

そしてその浸食防止をメインに据えた場合、対策のほうがおざなりになりかねない。どちらも補えるようにするにはミスリルでは役不足だ。


「自浄作用は?」

「やろうと思えばできるが、そうなるとミスリルでは役不足だ。自浄作用がメインになって、他の耐性がおざなりになる」

「あー、そうか。闇属性にだけ対応すればいいというわけではないね」

「そ、他の五属性にも対応できるようにしておかないと、そっちで対応ができなくなる」


今回は精霊界の精霊が相手だ。火、水、風、地、光の五属性も敵となっている。

風の大精霊候補であるシェルフと光の大精霊候補であるシンがこちらにいるので、二人分減ってはいるが、それでも、五属性の大精霊と三属性の大精霊候補。そして闇の大精霊とその候補がいると考慮すればそれだけの対応力が求められている。

しかもそれだけでなく、五属性が全員闇の属性に浸食されていると考えると、それぞれの属性にも闇の性質が混ざっている可能性がある。

そうなると二つの属性を同時に対応できるようにならなければならないので、なかなかに厄介な状況だ。


「今以上の物を作るとなると…ミスリル以上の素材が必要になるな」


今回の対策用にミスリルで腕輪を作っていたが、闇の侵食力が想定以上に高い。そうなるとさらに細かな仕様を練りこまないといけなくなる。そうなると魔導伝導率などから考えると、ミスリルでは心もとない。


「ミスリル以上の素材………オリハルコンか」

「あれ、数揃えるのめっちゃ面倒なんだよなぁ…」


よくあるゲームで登場する鉱石。ミスリル、アダマンタイト、そしてオリハルコン。

伝説の鉱石と言われているその鉱石は実在しており、ミスリル以上の魔導伝導率を誇る希少金属だ。

ただし、それらを手に入れるにはとてつもなく大変な条件があり…。


「ミスリルゴーレムとアダマンゴーレムを同時討伐した際に低確率で出現するんだったか?」

「そ。それぞれの素材同士が混ざり合ってオリハルコンゴーレムが誕生される」

「その確率は?」

「二割くらいだったかな?」

「なるほど。その状態になる条件を満たすのにどれくらい時間がかかる?」

「………一時間に一回できればいいほう?」

「………ドロップ率は?」

「一体で拳大位のが出れば御の字」

「必要数は?」

「ミスリルと同等くらい」

「………間に合うのか?」

「無理だろうなぁ…」


ギルマスの問いかけにクロウは遠い目で答えていた。

ミスリル集めに関しても数時間の探索を数日続けて集まった。

それ以上に集まりにくいオリハルコンとなると数日どころか数週間…下手したら数か月はかかる可能性がある。そこまで時間をかけられる余裕はない。


「………一部オリハルコンにすれば少しはましになるか?」

「そんなことできるのか?」

「わからん。やってみないことにはな。ただ、外側をオリハルコンで塗装し、内部をミスリルで構築してそこに魔法陣とか刻み込めば…少しは材料節約できるか?」

「そこらへんはそっちで考えてくれ。問題ない者を用意できそうならば取り掛かるように」

「へいへい。そう言えばオリハルコンゴーレムについて周知してよかったっけ?」

「問題ない。というかそもそも隠していない。オリハルコンが希少なのはそもそもミスリルゴーレムとアダマンゴーレムを同時に倒すことができるやつが少ないことと、できたとしてもオリハルコンゴーレムになる確率が低いというだけだからな」

「それもそうか」

「にしてもどうしてそんなことを?」

「また素材集めが配信のネタにされるかもしれないからなぁ…」


ギルマスの問いかけにクロウは遠い目をして答えた。



「さあ、今回も始まりましたマスターの素材採取探索配信!司会進行のシェルフと…」

「みらいでーす。ちなみに私はまた作業配信ですので」

『なんか始まった』

『また素材採取探索?前にミスリル集めてなかったっけ』

「うん、それなんだけど、この間の精霊界でのことでどうにもミスリルじゃ物足りないらしくて、新しい素材集めに来たんだって」

『新しい素材?』

『ミスリルで物足りなかったってことはそれ以上の物?』

『なんだっけ。アダマンタイトは魔導伝導率とかが足りないから無理とか言ってたよね』

『となると…他に何かあったっけ?』

『伝説的な物で言うとオリハルコンとか?でも、あれって実在してたっけ?』

『少量流れたって言う噂は聞いたことあるけど噂だけだからなぁ』

「そこらへんはマスターに聞いてみよう。ってわけでマスター大丈夫―?」

「おーう、いいぞー」


シェルフの言葉に配信画面に映像が映る。


「………何してるの?」


映った映像に作業を進めていたみらいが手を止めて思わず問いかけた。


「え?スタンピード起こしてる」

「本当になにしてるの!?」


あっけらかんというクロウにみらいが叫ぶような声を上げた。

それもそうだろう。クロウが来ているダンジョンは以前ミスリル集めのために来ていたダンジョン。

そのダンジョンは通常の洞窟のようなのだが、それでも広さはかなりあり、その天井付近にクロウがおり、その近くに配信用ドローンが飛んでいる。

故に今ドローンが映し出している光景は、クロウが見ている物とほぼ同じだ。

そこに広がっているのは…。


『うわぁ…すっごい量のゴーレム…』

『色合い的に…アダマンとミスリルか?それ以外も要るっぽいけど…』

『スタンピードを起こしたって…え、人為的に起こせる物なの?』

「やり方次第だけどなぁ。まあ、普通にやっても無理だけど、ちょっと特殊な魔力を魔力の流れにちょちょいと仕込めば引き起こせるんよ。正直後処理面倒だからあんまりやりたくないんだがな」

『後処理?』

「乱れた魔力の流れ整えて…あとは出現したり集まってきた魔物を全部倒して…まあ、そんな感じ。それに基本的にその特殊な魔力がなくなるまでずっと討伐し続けないといけないんだよな」

『それをやらないといけない状況なの?』

「そんなところ」

『で、あんだけゴーレム集めて何集めるの?』

「さっきコメントに出てたオリハルコン。あれを集める」

『え』

『どうやって集めるん?』

「それは、こうやって…」


複数の魔法陣を展開していく。


「えーっと…物理干渉、魔法耐性無効化、範囲拡散っと…」


威力上昇をメインに今回は対ゴーレム特化にしていく。

基本的にミスリルゴーレムは魔法耐性が高い。故に魔法陣による攻撃の場合、かなり威力を盛らなければならない。魔法耐性を無視する魔法陣もあるにはあるが、難易度が高く他の魔法陣との互換性があまりよくないので、三重か四重ほどで限界になる。

故に普段数が多くない場合は物理攻撃の方をメインに戦っているが、今回は数が多く、まとめて始末する必要があるのでそれをやり始めた。


「こんなもんかな?んじゃ行くぞー」


そう言って魔法を放つ。

放たれた魔法が魔法陣を通過し、特性が付与され、強化されていく。

そしてレーザーのように放たれた魔法は複数の特製が付与され、地面へと直撃すると地に落ちた水のごとく周囲へと広がっていく。

広がっていく魔法がミスリルゴーレム、アダマンゴーレムの足元へと広がっていき、接触した瞬間に蛇が這いあがるようにまとわりついていく。

そしてまるで網で捕えたかのようにゴーレムの全身を魔法が覆う。そして次の瞬間。


ガギッ!メキッ!ゴリッ!


すさまじい音と共にゴーレムたちがつぶれていく。


『わぁ…』

『まさに一網打尽』

『でも、これがオリハルコンを取るのに関係あるのか?』

「まあみてなって」


そう言って魔法を解除する。集まっていたゴーレムがすべて倒され、ほとんどのゴーレムが消えて、魔石と素材へとなっていく。

しかし、ちらほらと一部のゴーレムの破片はそのまま残っていた。

クロウがクイッと人差し指で引き寄せると散らばっている魔石と素材がすべてクロウの方へと引き寄せられた。

それをそのまま空間収納へと放り込んでいくと、その間に残っていたゴーレムの破片がわずかに震えだした。


『なになに?何が起こるの?』

『あの残ってるの、素材じゃないのか?』

『前にクロウさん、ゴーレムの場合コア?魔石?を抜き取るの無理だから素材集めしにくいって言ってたような』

『ああ、言ってたね。じゃああの残ってるのなに?』


その質問に答えるように突如残っていたゴーレムの破片が浮き上がる。

それらがいたるところで竜巻が発生したかのように回転していく。


「クロウさん、これは何が起こっているんです?」

「答える前に一つ問題だ。ミスリルを採取するにはミスリルゴーレム、アダマンタイトを採取するにはアダマンゴーレム。では、オリハルコンを手に入れるには?」

『…オリハルコンゴーレム?』

『でも、そんなのいるの?』

「いるんだよ。特定の状況でのみ出現する幻のゴーレムが」

「特定の状況でのみ?」

「もしかしてこれが?」

「そう」


回転しているゴーレムの破片がぶつかり合って一つにまとまっていく。


「ミスリルゴーレムとアダマンゴーレム。それら二体を同時に討伐する。そして二体のゴーレムの素材が混ざり合うことによって低確率で出現する幻のゴーレム。それが…」


一つにまとまったゴーレムの破片が形を変え、紫色のゴーレムが現れる。


「オリハルコンゴーレム。希少鉱石オリハルコンを落とす唯一の魔物だ」


ドシンッ!と重低音が地面を揺らす。複数のオリハルコンゴーレムがクロウを敵と認識していた。


「ひぃ…ふぅ…みぃ……二十か?あれだけいてもやっぱそれだけかぁ」

『あれだけいてもそれしか出てこないのか』

『本当に低確率なんだな…』

『ってか、そんな情報広げていいの?オリハルコンが希少ってことはそういう情報開示されてないんだろ?』

「いや、開示されてる。ただ、あまりにも確率低いし、ミスリルゴーレムとアダマンゴーレム同時に討伐できる奴じゃないとできないしでそもそも見向きもされなかった情報ってだけ」

「あー…」


クロウの言葉にシェルフが納得したような声を上げていた。


「さて…」


話は一段落させて、クロウはオリハルコンゴーレムの方へと降りていく。

降りてきたクロウへと向けてオリハルコンゴーレムがオリハルコンでできた腕を振り下ろしてくる。


「よっと」


それを片手で受け止め、そのまま横へとはらって胴体をがら空きの状態へとする。そこに拳を叩き込むが…。


ガギィン!!


甲高い金属音を立ててゴーレムが倒れこむ。


「久しぶりにやったけどガチでかてぇな…もうちょい本気出すか」


そう言って右手に魔力を籠める。


『クロウさんの一撃を耐えられるゴーレム…だと…!?』

『さすがオリハルコン…神の金属と言われるだけのことはあるな』

『それを殴り飛ばしているクロウさんに対して一言』

『いつもの事よ』


そんなコメントをスルーして魔力を籠めた拳をオリハルコンゴーレムへと叩き込む。

するとその部分を中心にゴーレム全体にヒビが入り、一撃で砕け散った。


『なお二撃で死ぬ模様』

『情けないやつ…!』

『相手が化け物なだけなんだよ…!』


砕け散ったオリハルコンゴーレムの下に一つの魔石と紫色の拳大の大きさの石が現れる。


「お、最大量手に入った。ラッキー」

『え、それで最大量なの?』

『見た感じ…インゴット一つになればいい方くらいな量だけど…』

「小さいと小石程度だからなぁ…さて、この調子でたくさん出てくれることを祈りますか」


そう言ってクロウは再度こちらに向かって歩いてきているオリハルコンゴーレムに向かって行った。



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