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やらかし女神と忘却の勇者  作者: 鹿苑寺ゲン
第一章 女神との再会
11/19

クエスト達成

 「この先に洞穴があるんだが、恐らくそこがこいつらの住処だ。住処を叩けば、森で見回りをしているゴブリン達も戻って来るに違いない。そいつらも一網打尽にすれば、森の魔物達の討伐は完了だな」


 魔物達の襲撃を返り討ちにした俺達は一旦休憩をする。

 ロニの提案の元、俺達は地図を広げて今後の確認を行う。


 「この森に魔物達が現れる時は大抵、この洞穴が住処になっているんだ。前に穴の入り口を岩で塞いだんだが、魔物達には大して効果がないようで困ってるんだよ・・・」

 「いっそ洞穴ごとふっ飛ばすなんてどうだ? そうすりゃ魔物の相手もしなくて済むし、今後他の魔物が住み着くこともなくなるだろ?」

 「・・・遊星さん、なんでロニさんではなく私の方を見て言うんですか?」


 サレンが抗議するが目をそらして知らん顔をする。


 「それだ! うん、そうしよう! あの魔法の威力なら洞穴なんて簡単に消し飛ばせるな!」


 俺の意見にロニが興奮気味に賛成すると、よほどの名案だったのか背中をバシバシ叩いてきた。

 ステータスの差のせいか全く痛みは感じないが、褒められてる感じが心地いい。


 「ということでサレンさん、君の出番だ。さっきの魔法以上にド派手で強力なのを使ってくれ」

 「洞穴周辺は採取する物もなく、村の人間も誰一人行かないので、今回は遠慮なく吹き飛ばしちゃってください!」

「なんですか二人してぇ・・・そうですか。それでしたら、遠・慮・な・く、いきますからね」


 嬉々とした声を上げる俺達とは裏腹に、サレンは何故か不機嫌そうな顔で言った。

 先程と同様にロニが先頭で、その後ろを付いていく。


 洞穴までの道中、やはり住処が近いためかゴブリンに何度か出くわすが、俺とサレンが武器を構える前にロニが弓矢で仕留めていった。

 彼は生産ギルドの人間だが、それでも職業持ちで魔物と戦っているだけあってか、弓の腕前は中々だ。


 しばらく歩いて行くと、洞穴のある開けた場所が見えてきた。

 俺達は茂みの中に隠れて様子を伺う。


 入り口には、見張りのゴブリンが二匹とオーガが一体。

 俺とロニのスキルで、洞穴内と周辺の索敵を行う。


 「今のところ、俺らの周辺に魔物の気配はなし。洞穴の方はどうだ?」

 「中にうじゃうじゃいるな。詳しい数までは分からんが、数的にゴブリンが多いだろう」


 索敵をある程度終えると、三人で顔を合わせて作戦の確認をする。


 「まずはサレンさんの魔法で洞穴を吹き飛ばす。その間ユーセイは洞穴側で、俺はこの周辺を見張る。


 魔法発動後、残った奴らを俺達で仕留める。もしオーガがいたら、申し訳ないが二人にお願いする」

 俺とサレンが頷いて答える。


 「魔法の発動までは少し時間がかかります。発動後はすぐに動けますので、私も槍で戦います」

 「・・・え? す、すぐに動けるんすか? 魔力切れで回復するまで動けないとかもなく?」

 「・・・? はい、大丈夫ですけど・・・?」


 小さい声で驚くロニに対し、サレンは不思議そうに首をかしげる。

 この子もステータスが異常なので気にしないでください。

 俺はサレンの肩を叩いて囁く。


 「魔力の調整間違えて、森ごと消滅させるとかはやめてくれよ?」

 「そんなことしないですって。今度の魔法は失敗すると洒落にならないんで、細心の注意を払いますよ!」


 サレンは静かに起こると、そっぽを向いて配置に付き始めた。

 洒落にならないって、どんな魔法使おうとしてるんだよこの女神。

 

 しかも俺の見張り担当って着弾位置が近い洞穴側でしょ? ロニ、代わってくれないかな・・・?

 げんなり顔で俺も仕方なく配置に付くことにした。

 

 全員が配置に付くと、互いに目で合図を送って頷く。


 「―――ッ!」


 サレンが詠唱を開始すると、足元に魔法陣が出現する。

 一瞬だけ周りの空気がビリッと変わるが、見張りの魔物達は何も気づいていない。

 

 スキル『第六感』を発動し、意識を集中させて洞穴周辺を見張る。

 後方にいるロニの方も特に問題はないようだ。



 ――そろそろ二十秒は経っただろうか。

 なんか後ろから光の粒子がぽわぽわ出始めているのに気づく。


 ちょっと目立ち始めたなーと思っていると、前方の洞穴に動きあり。

 森の見回りからゴブリンが二匹戻ってきたのか、門番と何かキーキー言っている。



 ――たぶん一分経ったあたりで、空に違和感が起き始めた。


 洞穴上空の雲がグルグルと周り初め、その中心に一本の光がゆっくりと降りていく。

 さすがに異変に気付いたのか、洞穴から他のゴブリンやオーガが数体出てきた。


 全員上空を見上げて、鳴き声で何かを言い合っている。

 このまま何事もなく魔法が発動してくれればと思った矢先、『第六感』で後方から複数の気配がこちらに向かってくるのを感じ取る。


 「ギー! ギギャー!」

 「ちくしょう、来やがったか!」


 恐らく向こうも気配を感じ取ったのだろう。

 後ろからロニの叫び声と矢を射る音が聞こえてきた。


 洞穴の前にいる魔物達も騒ぎに気づき始め、俺達がいる茂みの方に向かってくる。

 いかん、これでは挟み撃ちに合う。


 武技で前の奴らを瞬殺して、ロニの援護に行くか・・!

 腰から剣を引き抜き、構えて突撃しようとした瞬間———―


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ、と空から地響きのような音がし始める。

 魔物達は不気味な音に足を止め、上空を見始めた。


 「地表に蔓延る穢れし者に神の断罪を! 裁きの光―――『ジャッジメント』―――ッ!!


 サレンの叫び声と共に、空から巨大な光の柱が落ちてくる。

 光の柱が洞穴に着弾した瞬間、強烈な閃光と共に大気を震わせ、激しい轟音が鳴り響いた。


 あまりの衝撃に俺の体は吹き飛ばされて、数メートル先の木に背中から激突した。

 やがて光が消えて、煙が晴れていく。


 剣を鞘に戻し、痛む背中をさすりながら元の場所に戻る。


 「うわぁ・・・・・・」


 洞穴を吹き飛ばせばいいじゃん、なんて自分で提案したものの目の前の光景に絶句する。

 天より放たれた巨大な光の柱は、洞穴と付近にいた魔物達諸共消滅させ、ゴブリン二匹を吹き飛ばした時よりも巨大なクレーターを残した。


 まあ、サレンは俺達の指示通りに魔法を放ったんだ。

 これ以上、何も言うまい。


 「すげえ・・・! 俺、地形が変わる程の魔法なんて生まれてこの方初めて見たよ!」


 手に弓を携えたロニが、目の前の光景を目にし、興奮気味に叫ぶ。


 「今度はちゃんと魔力の調整も上手くいきましたし、範囲の調整もしっかり出来ました! もう不器用とは言わせませんよーブイッ!」


 サレンがその後ろから走って戻ってくると、先程放った魔法の出来をものすごく嬉しそうに語り、手でブイサインをする。


 「吹き飛ばされた上に背中から木に激突したんだけど・・・?」

 「俺なんて頭をおもっきしぶつけて気絶しかけましたよー。」


 こちらにどや顔を向ける彼女に対し、俺とロニがやんわり苦情を言うと。


 「体が消し飛ぶよりはマシですよ」


 サレンがニコッと満面の笑みで答えた。

 怖ッ・・・!

 ド派手で強力なのを撃てだの、遠慮なく吹き飛ばしちゃってくださいなど、言っていた俺達への腹いせか、彼女の毒はすごかった。


やはり神様は人間の気持ちなど分からない・・・。


◇◇


 魔物達の巣を潰した後は、もう簡単な作業だった。

 魔法の余波で吹き飛ばされたゴブリン達を俺とロニの感知スキルで見つけて狩っていき最後に初めに襲撃を受けた地点から、魔物の残党がいないか見回りをして無事に依頼完了した。


 村に戻って村長に報告をすると、ほっとした表情を浮かべて深々と頭を下げた。

 一緒にいたロニの弟も涙交じりに感謝を述べており、それに釣られて俺とサレンも泣きそうになる。

 あとは心身共に元気になってくれることを祈るのみだ。


 村からの帰りは、ロニが馬車でティンレアの街まで送ってくれた。

 わずかな間だけど一緒に仕事をこなした仲間との別れは寂しいが、ロニは浮かない顔をする俺達に「また会おう」と述べ、最後に互いに腕を交わし、村へと戻っていった。


 別れを済ませた俺達は依頼完了の報告を行いにギルドへと向かう。

 受付で依頼達成の旨を伝えて、ギルドカードと村長さんにサインをしてもらった冒険者ギルド専用の依頼完了書を提出した。


 報告の際、証明のためにこの二つの提出は義務付けられている。

 カードには倒した魔物の情報や数が記録されるし、依頼書と完了書にはあらかじめ依頼者の血液や筆跡といった情報が魔法の力によってエンチャントされているので、虚偽の報告や依頼者のサイン偽造といった問題行為が全く出来ないように工夫されているのだ。

 カードと依頼完了書の確認が終わり、報酬のお金を受け取った俺達は、初仕事達成のお祝いとして『カナマの里』の食堂で祝杯を挙げることにした。


 「「初仕事達成の記念にかんぱ~い!!」」


 俺とサレンはジョッキをカチンと合わせる。

 メニューには『コールドエール』と書かれており、なんでも店主の氷魔法で極限まで冷やしたエールとジョッキが織りなす氷点下のハーモニーだとか。


 要するにキンッキンに冷えた麦酒だ。

 サレンから「乾杯は麦酒がマナーだ」と言われたので、釣られて頼んでしまった。

 どうも初めの一口が苦く、なんだこれと思ったが、火照った体を潤すような冷たい喉越しが一気に体の中へ流れていく感じが妙に心地良く、気づけば一瞬で飲み干していた。


 「はぁーやっぱり労働の後は冷たいエールですねぇ!」


 同じように飲み干したサレンが、ジョッキを力強く机に置いて言う。

 なんだかおっさん臭く見えてしまったが、彼女の言うことも分かる。

この液体を流し込んだ瞬間、体が内側から浄化されていくような感じがするのだ。


 「やばいなこれ、癖になる」

 「でしょー! 二杯目も同じの行きます?」

 「もちろん!」

 「合点招致です! すいませーん、コールドエール追加で二つお願いしまーす!」


 サレンが追加で頼むと瞬く間に同じ酒が机に出されて、再び一気に飲み干す。


 「「ぷはぁーー!! 最ッ高ォ!」」


 酒が互いの体にしみわたって行き、同時に叫んだ。

 次第に頼んだ料理がどんどん机の上に並べられていく。

 そして更に追加の酒も運ばれてきた。


 「さて、今回初めてギルドの仕事をしましたが、どうでしたか?」


 オーダーの嵐が過ぎ去り、料理を口にしながらサレンが唐突に聞いてくる。

 

 「・・・初体験が色々あったけど、やっぱり人の喜ぶ顔を見るのは良いな」


 俺達はただ依頼書通りに魔物を討伐しただけだが、最後の村長さんやロニの弟さんの嬉しそうな顔が印象深かった。

 報告した際の嬉しそうな顔や安堵した表情から察するに、それだけ村にとって魔物の存在は脅威なのだろう。


 「さすがは私が見込んだ勇者候補です。その答えを聞いて、確信しました。あなたをこの世界の救世主に選んで本当に良かったと思います」

 

 サレンは優しい顔でほほ笑みながら静かにそう言った。

 そんな彼女の表情を見て、俺は思わず顔を赤くしてしまう。

 

 言葉に照れているのでない。単純に、男の本能として、彼女に心がドキッとしてしまうからだ。

 おちつけ、今は対等な立場だが相手は女神。それに本来あった元の世界の記憶をちょっとしたミスで消し飛ばした張本人だぞ? 目を覚ませ俺!

 心の中で自分に言い聞かせ、記憶喪失の当事者としての側面を強調させていき、ちょっとした恋心を無くしていく。

 

 よし、ここは話題を変えるとしよう。

 「そういえば・・・今回の魔物の討伐でレベルはどれくらい上がった?」

 「え? あーどうでしょう? お互いに見てみましょうか」


 サレンは俺の問いに少々戸惑いながらも、手元にギルドカードを出して確認し始めた。

 ついでに自分のも確認する。

 

 「レベル10ですね」

 「・・・俺はレベル8。なんでだ? 俺の方が魔物倒してたはずなのに・・・」

 

 そう言って、今日の森での出来事が脳裏に浮かんでくる。

 サレンは魔法を使って、魔物達の巣であった洞穴を消し飛ばしたのだ。

 つまり目にしてはいないが、洞穴の中にいた魔物達も含めて討伐していたことになる。

 俺とロニは道中も含めて地道に倒していたと言うのに・・・ちくしょう、魔法ずるい!


 「・・・今日は遊星さんのおごりってことで良いですか?」

 「言い訳ないだろ! 昨日の宿代と今日の朝食代だって俺が立て替えてんだぞ!? 報酬貰ったんだから、その分含めて逆に返せ!」

 

 結局たくさん飲み食いしたせいで、サレンの分け前分はきれいに無くなり、本日の宿代も俺が負担することとなりましたとさ。


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