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やらかし女神と忘却の勇者  作者: 鹿苑寺ゲン
第一章 女神との再会
10/19

ルルの森での魔物退治

さあ、いよいよ魔物との戦闘回となります。

そのため今回は少し長めです。

 「この森は回復や解毒用のポーションの材料になる薬草やキノコ、それから魔物除けになる木の実もあるし、街や王都のレストランに卸している山菜なんかも採れる。俺たちスコット村の人間にとって、ルルの森は生活の要なのさ。だから魔物が住み着いてでも森に入らなきゃならねえ。畑の野菜だけじゃ、領主に税金を払うだけで精一杯だからな」

 

 森を進んで行く道中、先頭を歩くロニが村の生活事情を教えてくれた。

 サレンが怪我の治療を申し出た際に村長が言っていたように、のどかで平和な村とは裏腹に村の金銭事情はなかなか厳しいようだ。

 

 「俺みたいに職業持ちで戦える奴も数人いるんだが、普段は生産ギルドの仕事で村から野菜とか薬草なんかを街に卸しに出かけてるから、付きっきりって訳にもいかないんだよ。それにオーガクラスが出てくると、ここの人間じゃ太刀打ちできない」

 「それで俺たち冒険者ギルドの出番ってわけか」 

 「その通りってこと。頼りにしてるぜ、二人とも」


 村の人達には言ってなかったけど、俺達まだ冒険者ギルドに登録したばっかの新人なんですよねぇ・・・。

 今更そんなこと言ったら俺達をなめているのか、と依頼を取り消されて村から追い出されるかもしれん。 

 ロニに気づかれないよう、後ろを歩くサレンに手招きをして耳打ちをする。


 「いいかサレン、言うタイミング完璧に逃したけどすごい気まずくなるから、実は私達今回がギルドでの初仕事なんですーとか言うんじゃないぞ?」

 「そんなことわかってますよぉ。このまま自然な感じで行きましょう」


 二人で顔を合わせて頷く。

 サレンも同じこと考えていてよかった。

 意識合わせを終わらせて再び歩き出し、しばらく進んで行くと突然先頭を歩くロニがぴたっと止まる。


 「森へ入って北西のあたり・・・弟達が襲われたのはこの辺だ。いまのところ何もいないが、そろそろ鉢合わせるかもしれん。二人とも気をつけてくれ」


 ロニが周囲を見回して、慎重に告げる。

 瞬間―――どこからかピリピリとした強い敵意のようなものを感じた。


 俺のスキル『第六感』の効果がここで発動したのだ。

 神経を集中させて、さらに周辺の気配を探ってみる。

 

 近くではない。少し遠く離れた位置に何かがいる気配を感じる。

 そして、何かがこちらにどんどん近づいてくる。

 早くて小さい。恐らく飛来物だろう。


 着弾するまで、3、2、1・・・!

 心の中でカウントダウンを行い、1のカウントで腰の鞘から剣を引き抜き、0のカウントで飛来物を弾き飛ばす。


 バキンッ、と木が砕けたような音が聞こえた。

 タイミングはぴったり。俺の剣はどこからか放たれた矢を確実に弾いたのだ。


 「攻撃だ! 敵はここから十時の方向、たぶん二十メートル先に二体いる」

 「わかりました! 私に任せてください!」


 剣を持ったまま振り向くと、サレンの足元には魔法陣が現れていた。

 次に彼女が右手を天にかざすと、巨大な光の剣が形成されていく。


 これがおそらく魔法だ。直接見たことはないが、雰囲気からして分かる。

 そして、俺の言った方向に向けて右手を振り下ろし、こう叫ぶ。


 「殲滅せよ光の巨剣―――『シャスティフォル』ッ!」


 彼女の叫びと共に巨大な光の剣が勢いよく射出された。


 光の大剣は地面を抉り、森の木々をなぎ倒して一直線に向かって行く。

 その直後―――激しい閃光と共にドゴォォン、と何かが砕けるような轟音と衝撃がした。 

 光が消え、魔法が描いた一直線に伸びる軌跡の先には五メートル程のクレーターが出来ていた。


 「な、ななっ、なんて破壊力だ・・・! こんなの何発も打たれたら、ルルの森がなくなってしまう・・・!」  


 先ほどまで生い茂っていた森の木々が閃光に飲まれて消滅してしまった惨状を目にして、ロニが腰を抜かしてしまった。


 「おい・・・君は加減というものを知らないのか?」

 「あれぇー・・・出力は絞ったんですけどね・・・」

 「出力絞ってあの規模っておかしいだろ! 絶対使う魔法のチョイス間違えたよね!?」

 「それはその・・・私の実力がどれ程のものかを見せる場でもあったので、派手なやつをつい・・・」


 彼女は気まずそうに俺からの目線を外し、か細い声で述べた。

 先ほどの魔物が何だったのかと、サレンのギルドカードの魔物討伐欄を見せてもらう。

 そこには、ゴブリン×2と記されていた。


 魔物の姿を確認する前に消し飛んでしまったが、いちおう目標の魔物は討伐していた。

 やりとりを終えた後、再び『第六感』で気配を感じ取る。

 ロニも何か感じ取ったのか、即座に立ち上がりこちらに振り返って叫ぶ。


 「二人とも聞いてくれ! 複数の気配がこちらに近づいてくる! 恐らくさっきの衝撃音を聞きつけて来たのかもしれん!


 サレンがビクッと震えるのを横目に、意識を更に集中させて気配の正体を探る。


 「・・・足音が大きいのも混じっているからゴブリンだけじゃないな」


 俺がぽつりとつぶやくと、ロニが顎に手を当てて返す。


 「だとすると、オーガも一緒にいるな。サレンさんの魔法があればまとめて蹴散らせると思うがどうする? いったん引くか?」

 「あれで森を更地にするわけにはいかないだろ。どっちみち討伐するんだ、ここでまとめて迎え撃つ!」


 先ほど矢を弾き飛ばした時に大体自分の実力が分かった。

 この規模の魔物程度なら俺一人で対処できる自信はある。

 

 さっきはサレンに見せられたから、今度は俺が良いところ見せちゃいますかね。


 やがて複数の気配の主たちが視認出来る所までやって来た。

 緑色の肌に角が生えた子供ほどの大きさの魔物と、体長がおおよそ2メートル以上はある体の至る所にぶつぶつとした突起が生えている橙色の巨人。

 手には短剣、こん棒、弓矢とほとんどの個体が武装までしている。


 「ロニさんは私の後ろに下がってください。遊星さん、今度は攻守交替と行きましょうか」


 サレンがそう言って虚空に手をかざすと、光と共にどこからともなく槍が現れた。

 天使の羽の様な装飾と青白く神秘的に輝く大剣のような刃の槍。

 見た目が少し派手だが、神々しいというか如何にも武器から迫力が伝わってくる。


 「ああ、守りは任せるよ。さてと、俺もいっちょやりますかね!」


 剣を構え、一呼吸と共に地面を蹴りだし、魔物の大群へと瞬時に間合いを詰める。

 スキル『縮地』による高速移動で相手の意表を突く。

 

 そして、剣を横薙ぎに振るって一閃。

 斬った音もなく、血しぶきを上げてゴブリンの首が三つ飛んだ。

 

 「ギィッ! ギギャアッ!?」

 

 不意の攻撃によって首をはねられた仲間を見て、ゴブリン達が騒ぎ始めた。

 その隙を逃さずに一匹、二匹、と一刀のもとに斬り伏せていく。

 

 「ギギィッ! ギャオッ!!」

 

 『第六感』による予知で、左右からナイフと棍棒を持ったゴブリンによる攻撃のヴィジョンが頭に流れてくる。

 

 「んな攻撃、効くか!!」

 

 先に右からナイフを掲げて飛びかかって来た奴の顔面に裏拳をかまし、左からの棍棒を持ったゴブリンには首筋に回し蹴りを叩きこむ。

 

 「グッ、ガァッ・・・!?」

 

 鈍い悲鳴を上げて二体のゴブリンは吹き飛んだ。

 

 「これでラスト!」

 

 後衛の二匹に向かって突進していく。

 ゴブリン達もバカではない。最後に残った奴らは、仲間たちが軽々と蹴散らされていく様を目にしたからか、弓を掲げて盾にするかのように構えていた。

 

 だがそんな抵抗も虚しく、俺の振り下ろした剣は弓ごと頭を叩き斬り、噴水のように頭から血を流して地面に崩れ落ちる。

 最後の一体はそのまま剣を横薙ぎに振って首を飛ばした。

 

 ゴブリン達は掃除完了。残るは、大きな棍棒を持った三体の橙色の巨人ことオーガだ。   

 いくら店の店主に名刀と言われたアルバコアでも、大柄な上に肥満体の魔物をゴブリンみたいに一太刀で切り伏せるのは難しいだろう。

 

 サレンから動きはトロイがパワーはあると、事前に聞いている。

 まともにパンチを喰らえばただじゃ済まないし、剣で防いでも力で押し負ける可能性だって十分あり得る。

 

 まあ、俺に当たればの話なんだが。

 

 一体のオーガが地響きを鳴らしながら突撃してくる。

 案の定、動きは遅い。


 地面を蹴り飛ばし、『縮地』を使って先程と同様にまずは間合いを詰める。

 目前まで接近し、そのままスピードを利用して上に飛ぶ。 

 オーガの顔の高さまで到達した後、すれ違いざまに目に向けて剣を一閃。

 

 「グォォォォォォォッ!?」

 

 両目から勢いよく血を流し、オーガは太い悲鳴を上げる。

 地面に着地をし、振り向きざまに両足の腱を切り裂いた。

 

 「グォォォォンッ!!」

 

 オーガは鈍いうめき声を出して膝から崩れ落ちる。


 「まずは一体目!」


 膝と腕をついて四つん這いになった魔物の背中の上に飛び乗り、剣を首に突き立てた。

 少しは抵抗するかと思いきや、オーガの首はうなだれて力尽きた。

 

 死体を足場に利用して、そのまま二体目へと跳躍。

 このまま急降下して脳天を突きさす・・・と行きたい所だが、その前に腕で体を掴まれてしまうかもしれない。

 あの巨体の腕で掴まれれば、腕や足の骨は確執に折れるどころか砕けてしまう。

 

 サレンが助けてくれるとは思うが、あの不器用さで魔法を放たれれば俺もろともお陀仏になりかねない。

 ゴブリンをふっ飛ばした後のクレーターを思い出して思わずゾッとした。

 

 ここは・・・『武技』を使ってみるか。

 

 剣、槍、槌、弓矢といった物理攻撃を与える武器には、『武技』と呼ばれる技がある。 

 古来より伝わる武術、スキルを通じて覚える技、更には独自に考案した技など種類は様々あるようだ。

 これを会得するには、武術を伝授してもらうか、武器種に通じた技能スキルの習得、もしくは自身でオリジナルの技を編み出すといった手段がある。

 

 俺はスキル『無形』が刀の技能スキルに該当していたので、ギルドカードを作成した時点でいくつかの武技を既に習得していたのだ。

 

 自分でも気がつかなかったが、村までの道中でサレンに教えてもらった際に意識してみると、頭の中に技のイメージがいくつも浮かんできたのである。

 ちなみにサレンは、師匠の槍術に長けていた神様より技を伝授しているため、この世界では誰も使えない独自の『武技』を会得しているようだ。

 

 魔法も武技も使えるとか、女神様すごすぎでしょ・・・。

 

 こちらに迫ってくるオーガの真上の位置まで到達すると、そこから空中で体を回転させ、急降下で突っ込む。

 

 「武技――『風車』!!」

 「グゴガァァァァァァァァッ!!」


 空中で回転切りを行い、頭部から背中に掛けてオーガの肉を削り取っていく。

 野太い悲鳴と血しぶきを上げて、オーガは前に倒れた。


 俺は地面に激突する前に態勢を変えて、受け身を取る。

 『風車』は空中で、自らの体を回転させた遠心力による斬撃を放つ技だ。


 初めて使ったけど、なんか慣れてるかのように体が勝手に動いて、しかも一撃で倒せるとは・・・!!

 おっと、喜んでいる暇ではない。

 残りは一体。


 「グゴォオオオオオオオオオオ!!」


 よそ見をしていた俺の隙を突こうとしていたのか、三体目のオーガは既に目前に迫っており棍棒を振りかざしている。

 はいはい、手の内はもう読めてますよ。


 振り下ろされた棍棒を左に飛んでかわす。

 かわしたと共に剣を両手持ちに切り替えて、オーガの右腕めがけて力任せに振り下ろした。


 「グガァァァァッァァッ!?」


 オーガは切り落とされた右腕の部分を左手で抑えながら地面に膝をつく。


 「これで止めだ。『覆滅』――ッ!」


 『武技』を使い、剣を両手で構えた状態から渾身の力による一太刀を浴びせる。


 オーガは声を出すことなく大量の血しぶきを左右に上げて、頭から真っ二つに切り裂かれた。

 ひとまず大群は蹴散らせたな。


 周りを見渡してみると、魔物達のグロテスクな死体が所々に散らばっている。

 

 これ、全部俺一人でやったんだよな。


 自分でもこんなに戦えるなんて思ってもいなかった。

 相手の動きが手に取るようにわかるし、体が曲芸みたいな動きにもついてこれる。これならサレンの言う通り、魔王も倒せそうな気はするな。


 「おつかれさまです! すさまじい戦いっぷりでしたね」

 「すごいな、ユーセイ! ゴブリンの大群だけじゃなくオーガまで一人で倒しちまうなんて!

 

 後方に下がっていた二人が感嘆の声を上げて、俺の元へと走ってくる。


 「なあサレン、気持ちを落ち着かせる魔法ってないか? 死体見てたら気分が悪くなってきちゃって・・・」

 「ええ・・・自分で首チョンパにしたり、頭から真っ二つにしてた癖に・・・」

 「戦ってる間はテンション上がってるから対して感じないんだよ! そ、それより早く・・・なんか吐きそう」

 「あっ、ま、待ってください! 気高き心よ、御霊に集え、『ブレイブソウル』――!!」


 サレンは口元に手を当て始める俺を見て、慌てて魔法を唱えた。

 彼女の手からオレンジ色の魔法陣が現れると、俺の体を光が包みこむ。

 なんか落ち着くというよりかは、高揚感が出てくる感じがする。


 「ご気分はどうですか?」

 「うん、良くなった。ありがとう。周りの死体を見ても動揺しなくなったよ」

 「それはそれで人として大丈夫なのか・・・?」


 やり取りを横目に見ているロニが若干引き気味な表情で言う。


 「いや、あくまで気分が悪くならないだけであって、人としての感情はちゃんとあるからな!」

 「そ、そうか。それなら良いんだが・・・」


 俺の必死の弁明に、ロニは顔を引きつらせて答えた。

 今後も魔物を討伐していくんだし、慣れていかないとダメだよなぁ・・・。


 「死骸の処理は村の人間を連れて後やっておくから、今はこのまま先へ進もう」

 

 ロニの言葉に俺達は頷き、再び森の奥へと歩き始めた。

 その道中、俺はサレンに質問をする。

 

 「あの場で聞けなかったけど、魔物の死骸の処理って必要なのか?」

 「死骸の処理は人間も魔物も共通なのですが、そのままにしておくと疫病が発生するのと、それを食料として他の魔物が寄り付いてしまうので、燃やして処理をする必要があるんです。今回は村の人達がやってくれますが、普通は狩った冒険者が行うので、私達もいつかやる時は来ます。その時は、できるだけ腕とか首とかバラバラにしないでくださいね」

 「気をつけるよ・・・。あと、今度自分達でやる時はさっきの魔法を頼む。」


 教えてくれたサレンに、俺はげんなり気味で答えた。

 次からは後処理のことも考えて、立ち回ることにしよう・・・。



魔物相手に無双するシーンが書けて、ようやく異世界転生作品っぽくなったと思います。

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