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(2)

 ⒉


 婆ちゃんは魔術師の家の子として厳しく育てられ天才と呼ばれながら、何より心寄り添える友人を欲していた。

 それはやがて魔導人形ララを『人と同じように感情持つ個体』として創造を目指す動機になり、日本へ渡って来たばかりのクラリッサと魔術師同士親交を深める事にも繋がっていった。

 吸血種としての出自から追われる身となり、命を狙う他の魔術師達を殺める事から退けなくなったクラリッサを殺しの連鎖から解放するため、婆ちゃんはララ止む無く戦闘特化に調整してクラリッサと戦い、彼女に自分の寿命が限り続く封印を施した。

 そしてララにも戦闘能力と感情制御を両立させる魔術兵装を残し、魔術工房とともに休眠させることになった。

 婆ちゃんはきっと、自分はもう二人には会えない苦悩を抱えながら先の時代に託したんだろうと思う。

 ララが心を持って、人と暮らせる事を。

 クラリッサが人を殺める必要なく、自由気ままに生きられる事を。

 そしてその願いは紆余曲折の果てに、僕に託された。

 それは僕にとって突然で。

 奇妙で。

 恐ろしくて。

 でも婆ちゃんを亡くして一人きりになったばかりの僕には眩しくて。

 騒がしくて。

 温かかくて。


 ――僕はそれを、こんな所で手放したくない。



「――まだここに居てくれたんだな」


 暗闇の奥から、声が聴こえた。


「探す必要が無くて助かった。……コレ運ぶのも一苦労だったからな」


 クラリッサが魔術で灯していた薄明りの下に、司は何かを無造作に投げ捨てる。

 力を使い果たして動かなくなったララだった。


「……司」

「傷、塞がってんな。そっちの女に治してもらったのか」

「あの人の事憎んでたんなら、もう司の事縛るものなんて無いだろう。……何で僕らを襲ったんだ」


 僕の言葉に、司は冷たい眼差しを向けてくる。


「お前……さっき俺の話聞いてなかったわけ? アイツに身体いじられて人間じゃなくなっちまってさ。俺の人生もうどうにもなんねーんだよ」

「どうにもならないかどうかなんて――」

「……あの司と言う少年の言っている事は間違ってない。吸血種の因子を普通の人間の肉体に移植された場合、膂力の強化と魔術特性の強化、再生能力が発現する。しかし吸血衝動を理性で抑えられるのは生来の吸血種と、契りの吸血で吸血種に変異したものだけだ」

「……じゃあ……」

「衝動を抑えられず、生きている限り屍人を増やし続ける」

「……」


 司は僕の顔にまだ迷いがあるのを見て滑稽そうに笑いだした。


「は! 憐れんでんじゃねーよ。俺の人生滅茶苦茶になったの、お前も関係してんだからよ」

「……ごめん」

「悪いと思うんなら黙って殺されろ。そしたら少しは俺の気も晴れる」


 司の足元に倒れ伏すララをもう一度見て、僕は静かに息を吐いた。


「……それはできない」

「あ?」

「ララを連れて帰らなきゃいけないから」


 大きく息を吸い込み。


「わけわかんねーコト言っ――」


 姿勢を低く。


「ふぅっ!」


 息を吐き出すと同時に、踏み出す……!


「――な⁉」


 ()()()()()()、最初の一歩を。

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