(10)
⒑
「か――ふ――」
熱い。
脇腹が、たまらなく熱い。
焼けた鉄を押し付けられたみたいな感覚が、自分の身体に空いた大きな傷口全体を駆け巡っていた。
「ふっ……! ふっ……! は……あ……!」
自分の腹部を貫いたそれは、人の腕のように見えた。
ガクガクと足が震える。
その腕の先。
倒れそうになりながら、僕を貫いた相手の顔を目にして言葉を失った。
「――つか……さ……?」
「…………」
特段の感慨も無いと言った顔で目の前に立っていたのは、行方をくらませていた斉藤司だった。
いや。
これは偽物……いつからかクラスメイトのフリをしていた別の何かじゃあないのか?
その、司の姿をした何かが、一言言った。
「……つまらねえな……」
そして腕を引き抜き、僕の肩をトンと押した。
「――あ……」
足に力が入らず、よろけながら数歩後退って、そのまま仰向けに倒れる。
「お前!」
激高したクラリッサが氷の塊を司にぶつける。
「くっ!」
続けざまに横へ回り込んだララも焔の剣の一刀を振るうが、司は僕を刺し貫いた腕でそれを易々と受け止めた。
「チィッ!」
クラリッサが倒れ伏した僕の肩を担いで二人から距離をとる。
「あ……! ぐぅ……!」
「昇クン! しっかりするんだ!」
視界の中のクラリッサがぐにゃりと歪んで見えたり、霞んで見えたりしている。
「おい魔導人形! 昇クンは君と礼装で治癒力もリンクしているんじゃないのか⁉」
「……あの魔術師との戦闘で私自身かなり力を使ってしまいましたから……」
「――昇」
司が、僕の名前を呼ぶ。
「……司……偽物……なのか、本物……なのか? あぐ……!」
「偽物なんて最初から居やしない。俺はアイツに……立川に育てられ、身体をいじくられ、お前の監視をするとか言うワケわからねえ目的のために友達のフリをずっとしてきた」
「育て……られ……? だって……あの人は……」
「隠し子ってやつらしい。表向きのアイツは普通に孫まで持ちながら、俺を自分が諦めきれていなかった魔術研究の実験台にするために俺を飼っていた。斉藤は母親の姓だけど、母親は気が狂っちまって随分前に出てったきりだよ」
「……」
じゃあ、ずっと腐れ縁だと思ってた司は……初めから立川が仕向けた監視役だったって言うのか。
「だったら何故……あ……ぎ……!」
脇腹の痛みが激しさを増す。
出血が止まる様子が無い。
「昇クン! 喋るな!」
「クラリッサ……!」
ララが焔の出力を上げ、斬り結んだ司を押していく。
そして僕らの方へ視線を僅かに向けて言った。
「――昇さんを連れて撤退をしてください」




