雪祭り セリフ・シャッフル 前
雪祭りの感想詩の前編です。
短かったり長かったり、閉村数日前だったので大変でしたね。
「私の言葉をあなたに託して――」
一つめの言葉
棄てられていた仔猫は
優しい飼い主と出会い
生命の喪失を免れる
成長した今では
飼い主の膝が指定席
押し付けの代償は
仔猫の拒絶
育てられた恩を返すかのように
仔猫は今日も
指定席で寄り添ってゆく
まるで、愛し合う恋人のように――
二つめの言葉
我が子に望むは
忍者であることと
妻は思う
子への教育は
忍者を参考にしようと
妻は思い描く
運動神経を鍛え
自然に敏感になれと
それは、我が子への愛の一つ
ゆえに妻は、今日も
我が子の産まれを望み
夫を愛していく――
三つめの言葉
彼女との出会いは陸上
つまらないと思っていた
裏方の仕事は
彼女が彼にかけた一言で
彼に変化が訪れた
つまらないと思っていた仕事が
楽しく思えたから
彼女を支えようと
彼は裏方の仕事で
努力を積み重ねていく
やがて迎えた卒業式
涙とともに抱きついた彼女とは
一時の別れとなるが
彼の未来への方針は定まった
彼女をこれからも支えようと
彼女の助けとなるための道を
彼は学んでいく
やがて、二人は対になり
共に住まうだろう
彼から投げかけたものに
彼女は答えるだろうか――
四つめの言葉
彼の不幸は何だったのか
それは、この世の者ではないものが
視えてしまったこと
託された願いは
残していく我が子への遺言の
その忘却
答えを探し求めても
答えを合わせることが
できないという
虚しき矛盾
それがもたらす苦悩を
死した父である幽霊は
悔やんだのか
されども、残した我が子のユーモアに
父は救いを見たのだろう
取り憑いた彼の心を
言葉で抉りながらも
真実がもたらした
罪悪感に謝りながら――
五つめの言葉
時計の秒針が定期的に
時を刻む音の中
インテリアのサボテンと
見つめ合う彼女
心の中の焦燥感に突き動かされ
長く付き合っている彼へと
逆プロポーズを仕掛けるための練習
自分の都合に付き合わせている
サボテンを不憫に思いながらも
いくら待ってもプロポーズをしてこない
彼のせいにして気を紛らわす
やがて、決死の思いをかけて
彼へと逆プロポーズをした彼女は
望んだ結果を手繰り寄せるだろう――
六つめの言葉
彼女からの手紙
それは、警告を秘めたラブレター
彼が飲み干した赤ワイン
意識を喪失い、遺されたもの
それを後から現れた彼女は
愛おしそうに抱え上げ
それが放つ独特の魅力に
魅入られたかのように
うっとりとした微笑みを浮かべた――
七つめの言葉
絵馬に書かれたものならば
善も悪も問うことなく
どんな願いでも叶えてくれる神社
周囲との共通点を見出せず
孤独感に包まれた彼女は
有り得ない妄想を
絵馬に書き続けた
彼女は理解しなかった
神社の力は諸刃の剣であることを
人を呪えば穴二つ
彼女が確信した神社の力という災いは
願われたとおり
彼女のもとへと降り注いだ――
八つめの言葉
部屋に響きわたる悲哀の声
幼子にできた深い隈と
長い時を苦しませる悪夢
白いコートの女性が
幻惑にて誘ったのは
真実を知らせるための
夏の日の記憶
悲哀の真相を導いたのは
細い目をした青年
風花とともに散り去っていった青年は
どこへ行ったのか――
九つめの言葉
推理好きの探偵である彼
アマノジャクな性格の彼女
彼女に襲いかかる不安を
彼は得意な推理で解き明かそうと
指輪を渡すも
アマノジャクな彼女によって
理解不能に陥るだろう
そんな彼の様子を
彼女は呆れながらも
見守るだろう
性格改善を望みながら――
十つめの言葉
犬も食べたくもない
男女の争いから
もたらされたのは
怒りの鎮静と愛の証明
交わされたキスに込められたのは
深い愛の表れなのか
それは本人たちしか
知り得ない――
十一めの言葉
進歩無き病弱な身体を
生まれついて
持ってしまった彼女は
弱音を吐き続ける
過去の思い出も
病弱であるがゆえに
辛いものばかり
そんな彼女のそばにいるのは
幼なじみの彼
馴染み深い彼女のことを
励ましたり、茶化したり
そうしながら
二人の時を重ねていた
四十四ある病から外れた
恋煩いを抱きながら
彼女に対する愛は
彼に対する愛は
冬の時を経て
想いが伝わり
さらなる時を重ねるだろう――
十二めの言葉
灰色の施設
不要者たちの召集場
弱肉強食の子供たち
初めての友
無知の哲学
ストリートの強さ
脱出の時
施設外の世界
モラルの廃棄
生きるための狩場
友との時間
狩人の嘲笑
友の乱入
逃走の疾走
狩場の移動
季節の移り変わり
不要者たちへの狩り
友の深手
初対面の記憶
空の色
救いの手
彼らの真実――
十三めの言葉
遥かな未来に人は
時を移動する力を得る
遠き過去に廃れた力は
テクノロジーで蘇る
過去を変えて未来を変える
すべてはより良き未来のために
彼が出会ったのは
職場の仲間
彼らとの憩いの時間
目指すべき目標
彼女との距離感
届けられるキンギョソウ
嫌な予感
差し入れのコーヒーから
彼女の悲鳴
逃げ出した彼女と
抱腹絶倒のリーダー
追いかける彼が出会ったのは
敵対する悪の組織の怪人
捕まった彼女を救うため
彼は一人戦う
援軍として乱入したのは
彼の同朋
記憶を消したことに憤りつつも
二人は共闘する
共闘の果てに倒された怪人
そして、別れの時
彼女たちに迫られた選択
忘れるか覚えているか
再び会うことは無いが
抱いた恋心に突き動かされ
想いを伝えあう
彼との思い出は
彼女の思い出は
いつまでも、心の中にある――
十四めの言葉
生命を育む陽光
降り潤す雨水
そして、人の唄
それだけで彼は十分だった
時は流れ、降り潤す雨水は
いつしか毒の水へと
変わっていた
毒の水は生命力を奪う水
彼の仲間たちも
自分の生命が
尽きようとしていた
仲間たちは死期に願い求めた
照らすものを
死へと誘い奪う
星月の光を
彼が拒んでも
仲間たちは拒絶を抗い
星月に身を照らした
朝日に照らされ
彼が見たものは
仲間たちが枯死した姿
幾度泣いても
枯死した仲間たちは
返事ができない
幾ばくかの時が過ぎ経て
彼の仲間たちは
人間の手によって
切られた
やがて、長い時を経て
彼は知るだろう
仲間たちが切られた訳を
しかし、仲間たちが
生まれ変わった姿で
強かに眠りについていることを
孤独ではないことを知った彼は
静かに生命を尽かせていった
枯れ果てた大樹は
目覚めることのない
夢を見ながら
静かに眠り続けている――
十五めの言葉
歯科の話から始まったのは
過去の話
今では理由にならない理由
でも、あの時は理由になっていた
仲良き友に話したら
「崇高になればいい」と言われ
勉学によって堪えきった
意図とは違うと感じながら
深い意味があると感じながら
今思えば
助けを求めれば良かったと
思うのだろう――
後編もお楽しみに




