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新嘗祭詩 掌編列車

今話から書き下ろしです。


まずは、秋祭りである新嘗祭の感想詩です。

一両車


列車は線路をかけてゆく

夏の暑い日も

冬の寒い日も


晴れの日も

雨の日も


一切関係なく

線路をかけてゆく


二両車


看板が架け橋となったのは

酔っ払いの女性の恋と

彼女を好いていた青年の恋


両想いだった二人は

愛しき日々を

重ねていくだろう


三両車


意外なメニューが折り合わせたのは

寒い夜に食べた

あの鍋の美味さ

それは、芯まで冷えた身体を

その温かさで

内側から包み込む


二人の思い出がつまったメニューは

幾度季節が巡っても

離れることなく

強く結びついてゆく


四両車


告白の代筆がもたらしたもの

それは、恋人たちの続出


されど、代筆者が抱いた想いは

奥底に秘めたまま

そして、心の揺さぶりを経て

蕾が花咲き、実るように

想いの花が咲くだろう


五両車


部屋の掃除で見つけたのは

一欠けのさくら貝に込められた

幼い頃に交わした約束


時を経て思い出した

約束の結末は

望んだものとはかけ離れたもの


せめて、約束だけは果たそうと

彼女は思い出のさくら貝を

海へと放り投げた


空の上で、大好きだったあの子が

笑ってくれることを願って


六両車


彼の一日は

ただ掃除することに

費やされる


それだけのために

掃除するためだけに

彼は存在する


朝は、猫による妨害に

苦汁を舐められても

夜の掃除を

心地良く楽しんでいく


人が望む限り

彼の一日は

変わることはない


掃除するだけの日々を

彼は繰り返していく


七両車


一定の温度に保たれた

空間で語るのは

中に入れられた

様々な調味料たち


常に出し入れされるもの

たまに出し入れされるもの


それらを見た彼女は

気落ちを感じながらも


やがて、自分のパートナーが入った時

自分の出番に笑みを浮かべるだろう


それは、わずかしかない

報いの時なのだから


八両車


鏡の広がりに

思いを馳せて

合わせ鏡に

種々様々なものを

写し合わせる


やがて、時が経て

告げられたのは

残酷なる真実


光を失った暗闇の中

自身をモグラに例えて

嘆きながらも

これからを生きるだろう


九両車


不思議な魔法

不思議な力


他人にその実態を

知られることはない


不思議な力を持った

彼らの日常を

切り取った一コマは

どこにでもありそうで

そこにしかない魅力が

そこにある


十両車


幾度カードを照らしても

異常を鳴らしていく


繰り返しの異常の真実は

クスりと笑えてしまうもの


ちゃんと見よう

確認しよう


そうすれば、異常の音は

収まってくれるものだから


十一両車


拾ったカードに願った思いは

孤独から救ってくれるもの


そして、彼女は

苦痛の日々を捨て去って

新たな日々を重ねていく


なぜならば、彼女はもう

孤独じゃないから


十二両車


花の知識が豊富な彼女

彼女を見るだけで満足だった彼は

キンモクセイの良い匂いに包まれて

彼女が持ってきた花の

秘められた花言葉を

知るだろう


心の中にある花を

彼だけに咲かせながら


十三両車


自転車で駆けた先にあるのは

一軒の家

それは、彼のための甘味処


クリスマスのためのエチュードで作られた

半分弱のホールケーキ


彼が招かれたのは、

味覚偏りのリカバリーのためだったが

彼からの素直な評価に

彼女は豪快な関節キスをする

それは意図されたものなのか


ケーキを食べ終え

彼は帰路に着こうとするが

異質な異音が邪魔をする

それは、明らかな意図

彼女の微笑みに

彼は何を察したのか


十四両車


物心ついた時から

少女は菓子を食べれなかった

時を経た今も

彼女は菓子を食べれなかった


彼女は自嘲しながら笑う


現在のこの世で食べれないなら

輪廻転生した来世でも

食べれないだろうと


そして、彼女は託すだろう

お菓子が食べれない自分を笑ってほしいと


転生する者たちへと

祈りながら


十五両車


転生者を乗せた列車は

次なる世界へと

汽笛を鳴らしながら

かけてゆく


いつしか心を宿しながら

転生者の語る話を聞きながら

輪廻環状の線路をかけてゆく


どこまでもどこまでも――


《終》

次は、冬祭りの感想詩です。


量も多くて、長くてだったので、前後編に分けましたけど。

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