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「で、その後どうなったんですか?」
エグリシア王国、王宮内、中庭。
優雅にお茶を飲む3人。
1人はレティシア=アンバード。16歳。子爵家令嬢。
1人はミンフィナ=ロールシス。16歳。公爵家令嬢。
1人はゼイル=アス=エグリシア。17歳。エグリシア王国第一王子にして、王太子。
「ミルーは、番詐称で逮捕だな。本人曰く、金持ちの元に嫁げば、将来安泰だからと、色々声をかけて、その中で1番いい条件の相手にしたと話してるらしい。
次に、アウロだが、まあ当然婚約破棄。そして父親からの叱責の後、後継ぎからは外されたらしい。エンリール公爵家は弟が継ぐらしい。まぁ、除籍されなかっただけ、マシな処分といえよう。で、最後にナターシャ=イルハイム侯爵令嬢だが。勿論彼女の方に非はなかったとし、今は新しい婚約者を探している最中らしい。身分も教養も申し分ないし、すぐに見つかるだろう。まあ、ことの顛末はこれくらいだろう」
ゼイル様が私の疑問に関して簡単に話してくれた。
なぜ、この国の第一王子である、そして王太子である彼が私にこのように話をしてくれているのか。そして、何故彼の婚約者でもある公爵令嬢のミンフィナと
王宮でお茶をするような仲なのか。
それは私の特別な事情によるものからである。
私こと、レティシア=アンバード。16歳。このエグリシア王国で子爵家の次女として暮らしている。
5つ上に兄であるフィルド兄様。2つ上に姉であるサンドラ姉様がいるごく普通の子爵令嬢…のはずだった。
4歳の頃、領地にある川の側で遊んでいた際に、空から人が降ってきた。銀色の腰までの髪に宝石のような紫色の目。背が高く、耳は尖り、頭にツノが生えていた。ボケーっとその人を見つめてしまった。そして、その人は私のそばまでくると、いきなり私を抱き上げ、愛おしそうに告げた。「私の番」と。そのまま唇を合わせてきて、私はあまりの衝撃に意識を飛ばした。
その後の話は全部伝え聞いたものである。
私が誰かに抱き上げられ、ぐったりしてることに遅ればせながら気がついた侍女さんが叫び、衛兵がやってきた。しかし私を離すまいと威嚇している存在に近寄ることができなかったらしい。(後で聞くと、オーラがこの世のものとは思えないくらいで、死ぬ未来しか見えなかったらしい)
その後、騒ぎを聞きつけた父が現れ、話を聞いてびっくりし、急いで私と彼を家へと連れ帰ったそうだ。
応接間に通しても私を離そうとしないので母が声をかけたそうだ。それでも最初は離そうとしなかったらしいが「このままではその子がどうなるかわかりませんわよ」の母からの笑顔の一言にたじろぎ私を離したという。(お母様、怖い)
『番』であると聞き、やっぱりと思った両親。そして、彼の種族を聞いて、頭を抱えたらしい。
彼は『龍人』だったそうだ。
『龍人』
その名の通り、『龍』である。彼等は物語の中のみで語られ、実際にあったものは皆無とも言われている存在。世界最強とも言われ、龍人1人いれば世界を滅ぼせるとも言われている。人と交流することはなく、誰かに従うこともない。どこに存在しているのか、もう滅んでいるとも話されていた種族である。
そんな種族がいきなり現れ、そして娘を『番』と呼んでいる。その時の2人の心境は想像を絶するだろう。
私は意識を戻した後、その話を聞かされた。
ただ、私もそれどころではなかった。
キスをされたショックか、ある世界で生きた35年分の女性の記憶が脳内を駆け巡ってきたのだ。
そのキャパ越えの状況に今度は熱を出し、3日間意識が朦朧としてしまった。
やっと意識が戻って色々な変化の状況を受け入れ、精神年齢39歳となってしまった私が誕生日した。
起きて初めに思ったのは、みんなに心配かけてしまったなということだった。お父様、お母様、お兄様、お姉様。みんな顔に疲れが見え、お父様に至っては、クマまでできていた。
そして、壁際にいる一際存在感のある方。朦朧とする意識の中、何度か心配そうに顔を覗き込まれた記憶がある。
私の視線にお母様とお父様が気づき、少し気まずそうにこちらを伺っている。
「大丈夫です。お話覚えています。少し彼とお話しさせてもらってもいいですか?」
一応、前の人格と同じように話すように心がける。
私が話したいというのは想定外だったのか、驚いた顔のお父様。ただそうするしかないとわかっているのか、皆を退出させてくれた。
「あの、どうぞ」
目を見て、私のベッドのそばの椅子をすすめる。
少し驚きながらも座ってくれた。
「えっと、私はレティシアです。レティシア=アンバード。あの、あなたは?」
「…リュークバルドだ」
名前を返してくれたので、一先ず安堵する。
「私、貴方の番だとお聞きしましたが、その、事実でしょうか?」
まずは、最重要事項の確認。
「…ああ。そうだ。お前は俺の『番』だ」
目を見て、しっかりと告げられる。これは逃れられないなと心の中で思う。
「『番』なのはわかりました。それで、どうしたいのでしょうか。すいません。獣人の文化にはまだ疎くて」
「我が棲家に連れて帰る。片時も離す気はない。やっと見つけた番だ。大切に大切にする」
わぉ。と心で叫んでしまった。そして、恥ずかしくてたまらない。確かに精神年齢アラフォーだが、前世で彼氏はできたことなかった。二次元にどハマりし、推しを愛でる生活。そして私の推しは彼の様なファンタジーな風貌だった。
「えっと、私、まだ4歳なんです。親の庇護がいる年齢です。なので、まだ貴方と共に行くことはできません」
そういうと、明らかに沈んだ顔。
「あ、あの、でも番というのは、理解しましたし、受け入れるつもりです。私に婚約者もいないですし、その、拒絶する理由はないので」
そういうと今度はパァーッと喜びに満ちた顔になった。




