表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

第五話 罠

はじめまして、大森林総史です。

主人公・優星(ゆうせい)が復讐の果てに何を見るのか。

そんな物語を書いてみました。

よろしければお読みいただけると嬉しいです。

 夜の風が、木々をざわめかせていた。


 白い退魔装束を纏った光は、山道を静かに進む。


 腰には退魔刀・白霞。


 月明かりに照らされ、その刃が淡く輝く。


「……妙だわ」


 光は足を止めた。


 退魔が現れたという報せを受け、急ぎこの山へ向かった。


 だが――。


「気配が……薄い……」


 退魔特有の瘴気が感じられない。


 風も静かすぎる。


 嫌な胸騒ぎがした。


 その時だった。


「うおおおおっ!」


 茂みから黒い影が飛び出す。


 牙を剥き、異形の仮面をつけた退魔――に見えた。


 しかし。


「……違うわ!」


 光は瞬時に踏み込み、白霞の峰で男の手首を打つ。


「ぐあっ!」


 仮面が落ちた。


 現れたのは、退魔ではなく人間。


 薄汚れた盗賊だった。


「な……」


 光が目を見開く。


「人……?」


「ちっ、バレたか!」


 次の瞬間。


 周囲の闇から次々と人影が現れる。


 十人……いや、それ以上。


 皆、退魔の仮面を被っていた。


「囲め!」


「殺せぇ!」


 盗賊達が一斉に襲いかかる。


 光は白霞を振るう。


 だが刃は使わない。


 峰打ち。


 手首を打ち、足を払う。


 次々と盗賊を無力化していく。


「ぐっ!」


「がはっ!」


 光の剣は速く、美しかった。


 まるで舞のように敵を制していく。


 しかし。


「なぜ……人が退魔の真似を……?」


 困惑が、光の動きをわずかに鈍らせる。


 その時。


 盗賊達が左右へ割れた。


 重い足音。


 一人の男が現れる。


 黒い羽織。


 鋭い目。


 腰の刀から、異様な殺気が滲み出ていた。


「……あなたは? 何者です⋯!?」


 男は口元を歪めた。


「儀蔵だァ⋯」


 挿絵(By みてみん)


 その名に、光の表情が変わる。


 人斬りとして噂される剣鬼。


「退魔剣士か。噂通り綺麗な剣だなァ」


 儀蔵が刀を抜く。


 ぞわり、と空気が震えた。


 次の瞬間。


 ギィン!!


 火花が散る。


 光と儀蔵の剣がぶつかった。


 速い。


 重い。


 互角。


 光は驚く。


(この人……強い……!)


 再び刃が交錯する。


 光の剣技は決して劣っていない。


 だが。


 押される。


 じわじわと。


 呼吸が乱れる。


「どうした?」


 儀蔵が笑う。


「人を斬れねぇ剣ってのは、甘いなァ」


 その目には迷いがない。


 人を斬ることへの躊躇が、一切無かった。


 光は歯を食いしばる。


(この人は……)


 その時だった。


「姉ちゃん!!」


 幼い声が夜に響いた。


 光の瞳が大きく開かれる。


「優星!?」


 山道の先。


 息を切らしながら、優星が立っていた。


「来ちゃダメ!!」


 光が叫ぶ。


 姉の顔に戻った、その一瞬。


 儀蔵の目が細まった。


「隙を見せちゃァ⋯いけねぇなァ!」


 ザン――。


「あ⋯っ!」


 鈍い音。


 光の身体が揺れた。


「に、にげて⋯ゆ、優星⋯⋯」


 白い装束に裂け目が走る。


 光の瞳が震え、そのまま崩れ落ちた。


「姉ちゃん……?」


 優星の顔から血の気が引く。


 退魔刀・白霞が地面へ転がった。


 光は、うつぶせに倒れピクリとも動かない⋯


「姉ちゃん!!」


 強くて優しい姉が、斬られた事が信じられなかった。


 優星は無我中で駆け寄る。


 涙を流しながら⋯


 だが盗賊達が立ちはだかった。


「ど、どけよ! ね、姉ちゃぁん!!」


 優星は泣き叫ぶ。


 地面に倒れたまま動かない光。


 月明かりだけが、静かに二人を照らしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は6/30 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ