第四話 束の間の姉弟
はじめまして、大森林総史です。
主人公・優星が復讐の果てに何を見るのか。
そんな物語を書いてみました。
よろしければお読みいただけると嬉しいです。
夕暮れの縁側。
優星は、目を輝かせながら光の話を聞いていた。
「それでね、その妖魔、すごく大きかったの。普通の剣じゃ歯が立たないくらい」
「えっ!? どうしたの!?」
光はくすりと笑った。
「落ち着いて。ちゃんと倒したから、こうして帰って来れてるんでしょ?」
「あっ、そっか!」
優星は恥ずかしそうに笑う。
光は湯呑みに口をつけながら、穏やかに続けた。
「でも、妖魔退治は危険なの。一歩間違えれば、死ぬことだってあるわ」
優星は真剣な顔になる。
「……姉ちゃんでも?」
「ええ」
光は静かに頷いた。
「だから、剣は人を守るために振るうの。力任せじゃ駄目。心まで鬼になったら、負けなの」
優星は黙って聞いていた。
だが次の瞬間、ぱっと顔を上げる。
「それでも僕、姉ちゃんみたいになりたい!」
光は少し驚いた顔をしたあと、優しく笑った。
「……そう」
その笑顔が、優星は大好きだった。
◇
翌朝、光は優星に稽古をつける。
「ほら、ちゃんと構えて」
「う、うん!」
庭で、優星は木刀を握っていた。
光は向かい合い、構えを見ている。
「足が浮いてるわ。もっと腰を落として」
「こう?」
「そうよ。今の感じ」
優星は懸命に木刀を振る。
まだ身体は小さい。
力も無い。
速さも足りない。
だが――。
(……筋がいいわ)
光の目が細くなる。
剣筋が素直だった。
変な癖も少ない。
何より、相手の動きを見る目がある。
「姉ちゃん! どう!?」
汗だくになりながら聞く優星。
光は、ふっと笑った。
「頑張ってるね」
「へへっ!」
褒められた優星は、嬉しそうに笑う。
その姿を見ながら、光は少しだけ胸が痛んだ。
(この子は……本当に才能がある)
でも同時に思う。
(剣の道になんて、進ませたくない⋯)
退魔⋯そして時には人を斬る世界。
血と死が当たり前の世界。
そんな場所に、優星を立たせたくはなかった。
◇
「いただきます!」
「はい、召し上がれ」
夕食の湯気が、部屋を暖かく包む。
優星は夢中で飯をかき込んでいた。
「そんなに慌てて食べたら喉詰まるわよ?」
「だってお腹減ったんだもん!」
「もう……」
光は困ったように笑う。
その時だった。
戸を叩く音が響く。
「光殿! 退魔の報せです!」
空気が変わった。
光の表情が、退魔剣士のものへ変わる。
「……場所はどこですか?」
「北の街道沿いです! 旅人が襲われたと!」
「分かりました。すぐ向かいます」
静かな声。
優星は、不安そうに光を見る。
「姉ちゃん……また行くの?」
光は優星の頭を優しく撫でた。
「大丈夫よ。すぐ戻るから」
「……ほんと?」
「ええ、心配しないで」
そう言って微笑む。
優星は、小さく頷いた。
だがその胸には、
言いようのない不安が残っていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は6/28 20:00に投稿予定です。
続きも読んでもらえると嬉しいです。




