第三話 優星の姉、光(ひかり)
はじめまして、大森林総史です。
主人公・優星が復讐の果てに何を見るのか。
そんな物語を書いてみました。
よろしければお読みいただけると嬉しいです。
闇夜に、赤い血が舞った。
「――遅いわ」
女は、静かに呟いた。
月明かりに照らされた黒い髪。
茶色の瞳。
白い退魔装束。
その手に握られた退魔刀・白霞が、妖魔の血を滴らせる。
周囲には、無数の死体。
人を喰らう鬼。
女の姿に化ける妖狐。
墓を荒らす死霊。
その全てが、たった一人の女によって斬り伏せられていた。
「ば、化け物め……!」
最後に残った大鬼が、震える声を漏らす。
光は冷たい瞳を向けた。
「化け物はあなたです」
次の瞬間。
大鬼の首が宙を舞った。
鮮血が噴き上がる。
だが光は、一歩も退かない。
血飛沫すら、美しく見えた。
「任務完了です」
刀を鞘へ収める。
すると、それまで張り詰めていた空気が、ふっと緩んだ。
「……早く帰らないと」
その表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
鬼を斬る退魔剣士の顔ではない。
一人の姉の顔だった。
◇
「姉ちゃーーーん!!」
勢いよく戸が開いた。
小柄な少年が、光へ飛びつく。
「きゃっ!」
光は少し驚き、優星を受け止めた。
「ただいま、優星」
「おかえり姉ちゃん! ねぇ! 今日も妖魔倒した!?」
「倒したわ」
「すげぇぇぇ!!」
目を輝かせる優星。
まだ幼い。
あどけなさの残る顔。
その瞳は、憧れで満ちていた。
「僕も早く退魔剣士になりたい!」
「そうね⋯きっと優星ならなれるわ⋯でももう少し大きくなってからね」
「うん! 僕、姉ちゃんみたいに強くなる!」
「……ええ」
光は優星の頭を優しく撫でた。
優星は嬉しそうに笑う。
「へへ……」
その笑顔を見て、光も小さく微笑んだ。
鬼を斬る時の鋭さは、そこには無い。
「姉ちゃん! 今日の話聞かせて!」
「また聞きたいの?」
「聞きたい!」
光は、優しく微笑んだ。
「仕方ないわね⋯」
二人は並んで家へ入る。
暖かな灯り。
静かな夜。
優星にとって、それが世界の全てだった。
(光の挿絵。AIイラストです)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は6/26 20:00に投稿予定です。
続きも読んでもらえると嬉しいです。




