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二十四話 忍び完全敗北

はじめまして、大森林総史です。

主人公・優星(ゆうせい)が復讐の果てに何を見るのか。

そんな物語を書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

 数日後――


 氷魔の屋敷。


 居間では月花がお茶を淹れていた。


 向かいには優星。


 穏やかな時間が流れている。


 ふと月花が口を開いた。


「優星様」


「何だ?」


「光様の居場所に心当たりはありますか?」


 優星は少し考える。


 そして頷いた。


「ある」


 月花の目が輝く。


「まあ!」


「前に一度だけ見かけた」


「本当ですの!?」


「ああ」


 優星は腕を組む。


「姉さんにそっくりな人だった」


 月花は立ち上がりそうな勢いだった。


「では早く!」


「ひとまず声をかけてみるよ」


「はい!」


 月花は嬉しそうに微笑んだ。


 優星も小さく頷く。


 そして立ち上がった。


「月花は屋敷で待っていてくれ」


「分かりましたわ」


 優星は静かに屋敷を後にした。


 ――町。


 以前見かけた辺りを歩く。


 すると。


「あ……」


 あっさり見つかった。


 優星は立ち止まる。


 遠くにいる女性。


 光にそっくりだった。


 いや。


(姉さん……?)


 優星は目を凝らす。


(本当にそっくりだ……)


 しかし。


 次の瞬間。


(いや……月花?)


 頭が混乱する。


(いやいや、月花は屋敷にいるはず……)


 ますます分からなくなる。


 女性は買い物をしている。


 今なら話しかけられる。


 だが。


(なんて声をかける……?)


 優星は固まった。


(せ、拙者はあなたの弟です!)


 想像する。


(いや、おかしい……)


 即座に却下。


(では何と言えば……)


 悩む。


 悩む。


 ひたすら悩む。


(わ、分からない……!)


 その間に。


 女性は宿屋へ入っていった。


「あっ……!」


 優星は手を伸ばした。


 だが遅い。


 宿屋の扉が閉まる。


 立ち尽くす優星。


 忍び。


 盗賊退治。


 悪代官捕縛。


 人斬り儀蔵との死闘。


 全てを成し遂げた男。


 しかし。


 女性への声のかけ方が分からない。


 その時だった。


「あっ!」


 子供の声。


 振り向くと数人の子供達がいた。


明里(あかり)姉ちゃんに変な虫がついたらいけないって言われてたけど!」


 一人の少年が優星を指差す。


「兄ちゃんが変な虫か!」


「ち、違う!」


 優星は慌てる。


「拙者は――」


「怪しい!」


「怪しい!」


「追い払えー!」


「待て!」


「どっか行けー!」


「待てと言っているだろう!」


 石ころ。


 木の枝。


 砂。


 次々飛んでくる。


「やめろ!」


「変な虫だー!」


「違う!」


「変な虫だー!」


「違うと言っている!」


 忍びは敗走した。


 完全敗北だった。


 ――夕方。


 氷魔の屋敷。


 月花が出迎える。


「お帰りなさいませ」


 そして。


 優星の顔を見る。


「……何がありましたの?」


 優星は絶望的な顔をしていた。


 月花が心配そうに座る。


「話しかけられなかった」


「はい?」


「子供達に追い払われた」


 月花は瞬きをした。


「……え?」


 優星は全てを説明した。


 沈黙。


 そして。


「ぷっ…」


 月花が吹き出した。


「ふふっ……!」


 肩が震える。


「ははははっ!」


 とうとう堪えきれなくなった。


 優星が顔を赤くする。


「わ、笑うな!」


「だ、だって……!」


 月花は涙を浮かべながら笑う。


「盗賊にも殺人鬼にも立ち向かう、優星様にも弱点があるのですね!」


「か、からかうな!」


「ご、ごめんなさい……!」


 そう言いながらまだ笑っている。


 優星はそっぽを向いた。


 月花はようやく落ち着く。


「分かりました」


 優しく言った。


「明日は私が話しかけてみますわ」


 優星は少し安心した。


「頼むよ……」


 その姿に月花はまた笑いそうになる。


 必死に我慢した。


 ――翌日。


 月花は町へ向かった。


 そして。


「あの」


 あっさり話しかけた。


 女性が振り向く。


「あら?」


「失礼ですが……私とそっくりですわね」


 女性は目を丸くした。


「本当ですね」


 二人は見つめ合う。


 数分後。


 すっかり意気投合していた。


 離れた場所から見ていた優星は驚愕する。


(何故だ……)


 そして月花が手招きした。


「優星様こちらへ⋯」


 優星は緊張しながら近付く。


 右手と右足、左手と左足が同時に動いている。


「こちらが優星様です」


 女性が微笑んだ。


 優星は、すでにからくり人形のようだが更に固まる。


 そして。


「せ、拙者……忍び……優星でござる……」


 月花の肩が震える。


 必死に笑いを堪えていた。


 女性は優しく微笑む。


「私は明里です」


 穏やかな声だった。


「立ち話も何ですから、宿屋の方へいらしてください」


 優星と月花は顔を見合わせる。


 そして頷いた。


 宿屋へ向かう。


 案内された席に座る二人。


 しかし。


 明里はなかなか戻ってこない。


「遅いですわね」


「何かあったのか……?」


 そこへ店の者がやって来た。


「お待たせしました」


 二人に頭を下げる。


「こちらへどうぞ」


 奥へ案内される。


 優星と月花は顔を見合わせた。


 そして。


 部屋の襖が静かに開かれる――。


 そこには――

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は8/7 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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