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第十九話 宿命の対決

はじめまして、大森林総史です。

主人公・優星(ゆうせい)が復讐の果てに何を見るのか。

そんな物語を書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

 優星と儀蔵。


 二人は静かに向かい合う。


 悪代官は後ろへ下がり、震えながらその様子を見守っていた。


 姉を斬った男。


 師匠を斬った男。


 目の前にいる。


 改めて対峙すると、その存在感は圧倒的だった。


 全身から溢れる殺気。


 まるで人ではない。


 鬼。


 まさにその言葉が相応しい。


 だが――


 優星は気圧されていなかった。


 むしろ。


(殺気では俺の方が上だ)


 そう感じていた。


 しかし、優星は気付いていない。


 それこそが危うさだという事に。


 儀蔵の口元が歪む。


「若い鬼かァ……」


 優星の目が細くなる。


「鬼はお前だ」


 言葉と同時に床を蹴った。


 鋭い踏み込み。


 刀が閃く。


 ガキィン!!


 儀蔵が受け止めた。


「ほォ……」


 優星は止まらない。


 二撃。


 三撃。


 四撃。


 連続する斬撃。


 儀蔵は受ける。


 ただ受ける。


 その度に火花が散った。


(こいつの姉貴の剣は美しかった)


 儀蔵は思う。


(華麗で美しく……だが軽い)


 優星の刀を受け流す。


(爺の剣は違った)


 さらに斬撃が飛ぶ。


(技術は高ェ……だが速さと重さが足りねェ)


 そして。


 目の前の少年。


(こいつの剣は――)


 激しい金属音が響く。


(重い!)


 火花が散る。


(速い!!)


 床が軋む。


(鋭い!!!)


 そして。


(何より殺気が桁外れだ⋯!!!!)


 儀蔵は笑う。


「俺が憎いか?」


「黙れ」


 優星は即答した。


 儀蔵が大きく刀を振り下ろす。


 凄まじい一撃。


 だが。


 優星は見切る。


 紙一重で躱した。


「お前は強ぇ……」


 優星は答えない。


 踏み込む。


 鋭い突き。


 儀蔵の頬を掠めた。


 鮮血が舞う。


「……」


 悪代官が青ざめる。


 儀蔵は笑みを深めた。


「お前の師匠の剣は軽かった」


 優星の眉が僅かに動く。


 ガキィン!!


 儀蔵の刀を受け止める。


「黙れ……」


 儀蔵は続けた。


「お前の姉ちゃんの剣はもっと軽かった」


 ガキィン!!


 再び受け止める。


 だが。


 今度は違う。


「黙れ……!」


 優星の目に黒い炎が宿る。


 怒り。


 憎しみ。


 復讐。


 一瞬。


 ほんの一瞬だけ。


 心が戦いから離れた。


 儀蔵は見逃さない。


 鬼だからだ。


 ズバァッ!!


 必殺の一撃。


 優星は我に返った。


 咄嗟に身を捻る。


 切っ先が肩を掠めた。


 鮮血が舞う。


「隙を見せちゃぁいけねぇなぁ⋯」


 優星は肩を押さえない。


 痛みも感じていない。


 その時だった。


 何かが。


 心の奥で。


 ぷつりと切れた。


 黒い炎が消える。


 代わりに。


 虚無が宿った。


 優星の目から感情が消える。


 姉も。


 師匠も。


 悪代官も。


 何も見えない。


 ただ。


 儀蔵の刃先だけが見えていた。


 儀蔵はその目を見た。


 そして。


 静かに呟く。


「お前の姉ちゃんはこの斬撃で死んだ」


 刀を構える。


「姉弟仲良く暮らせ……」


 必殺の構え。


 空気が張り詰める。


 悪代官が悲鳴を上げた。


「やれぇ! 儀蔵!」


 だが。


 次の瞬間だった。


 優星の刀が閃く。


 一筋の光。


 キィィン――


 乾いた音が響いた。


 儀蔵の刀が折れる。


 折れた刃が回転しながら宙を舞った。


 儀蔵の目が見開かれる。


 優星は無言。


 虚無の瞳のまま。


 儀蔵を見つめていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は7/28 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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