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第十八話 鬼と忍び

はじめまして、大森林総史です。

主人公・優星(ゆうせい)が復讐の果てに何を見るのか。

そんな物語を書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

 薄暗い牢の中。


 月花は、静かに儀蔵を見つめていた。


「そんな事が……」


 儀蔵は壁にもたれたまま目を閉じる。


 しばし沈黙。


 だが次の瞬間。


「……!」


 儀蔵の目が鋭く開かれた。


「お喋りはこれまでだ……」


 月花が顔を上げる。


「奴が来る」


 その言葉に月花の胸が高鳴る。


「優星様……」


 儀蔵は懐から鍵を取り出した。


 そして何気なく牢の中へ放り投げる。


 カラン――


 乾いた音が響く。


 月花は驚いたように鍵を見る。


「自分の身は自分で守りな」


 月花は儀蔵を見る。


 人斬り。


 祖父を傷つけた男。


 だが今、その背中はどこか違って見えた。


「儀蔵……様……」


 儀蔵は振り返らない。


 そのまま牢を後にした。


 ――――――


 悪代官は落ち着きなく部屋を歩き回っていた。


「儂を馬鹿にしおって……」


 苛立ちが収まらない。


「あの小娘も……儀蔵も……」


 拳を握り締める。


「今に見ておれよ……」


「今に見ておれェ……?」


 背後から声がした。


 悪代官は飛び上がる。


「ひっ!?」


 振り返る。


 そこには儀蔵。


 まるで最初からそこにいたかのように立っている。


「ぎ、儀蔵!?」


「俺を殺す気かァい?」


 悪代官の顔が青ざめた。


「ち、違う! 違うぞ!」


「どっちでも良いさァ……」


 儀蔵は鼻を鳴らす。


「だが、あんたにゃ刀を向けねェよ」


 悪代官は胸を撫で下ろした。


「そ、そうか……」


 だが安心は続かなかった。


 儀蔵が静かに窓の外を見る。


「来るぜェ……」


「誰がだ?」


 その瞬間だった。


「流石に気付いていたか」


 天井から声が響いた。


 悪代官が見上げる。


 そこには黒装束の少年。


 優星。


 静かに床へ降り立つ。


 悪代官は顔を引きつらせた。


「き、貴様……!」


 儀蔵の口元が歪む。


「来たなァ……優星……」


 優星もまた儀蔵を見据える。


 両者の間に張り詰めた空気が流れた。


 悪代官は慌てて儀蔵の後ろへ隠れる。


「ぎ、儀蔵頼むぞ!」


 儀蔵は無視した。


 優星は低い声で言う。


「月花をどうした?」


「さァなァ……」


 儀蔵は肩をすくめる。


 優星の瞳が鋭くなる。


「では質問を変える」


 一歩前へ出る。


「そいつを渡せ」


 悪代官が震え上がる。


 だが儀蔵は動じない。


「そいつもできねェなァ……」


 優星の眉が動く。


「護衛対象を渡せねェなァ」


 優星は拳を握る。


「ならば……」


 殺気が膨れ上がる。


「お前も捕まえる!」


 儀蔵の目が獣のように細められた。


「やってみろォ!」


 次の瞬間。


 両者の殺気が正面からぶつかる。


 部屋の空気が震えた。


 悪代官は腰を抜かして後ずさる。


 だが二人の目には映っていない。


 互いしか見えていない。


 鬼。


 そして忍び。


 運命に導かれた二人の決着が。


 今、始まろうとしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は7/26 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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