表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

第十一話 光の月

はじめまして、大森林総史です。

主人公・優星(ゆうせい)が復讐の果てに何を見るのか。

そんな物語を書いてみました。

よろしければお読みいただけると嬉しいです。

 朝。


 氷魔は一人、屋敷を出ていた。


「少し調べたい事がある」


 それだけ言い残して。


 優星も別の調査を任されていた。


 最近、各地で起こる盗賊騒ぎ。


 その裏に何者かがいる。


 氷魔はそう睨んでいた。


 優星は町へ向かう。


 賑やかな通り。


 行き交う人々。


 だが、優星の興味を引くものは何も無かった。


 必要な情報だけを集める。


 それだけのはずだった。


 その時。


 人混みの向こうに、一人の女性が見えた。


 白い着物。


 長い髪。


 柔らかな横顔。


 優星の足が止まる。


「……姉ちゃん」


 思わず漏れた声。


 心臓が大きく脈打つ。


 女性はこちらを見ない。


 人波の向こうを歩いていく。


 追いかけようとして。


 優星は動けなかった。


 違うかもしれない。


 期待して違ったら。


 そう思うと足が出なかった。


 やがて女性は人混みへ消える。


「…………」


 優星はしばらく立ち尽くしていた。


 こんな感情は久しぶりだった。


 任務中だというのに。


 冷静でいられない自分に戸惑う。


 結局、有力な情報は得られなかった。


 夕方。


 屋敷へ戻る。


 縁側には月花がいた。


「お帰りなさいませ、優星様」


 いつもの優しい笑顔。


 優星は少し迷う。


 そして、珍しく自分から口を開いた。


「月花」


「はい?」


「今日は町へ行ったか?」


 月花は少し驚く。


 優星から話しかけられる事など滅多に無い。


「はい。お買い物へ」


 優星は黙る。


 やはりそうか。


 今日見た女性は、月花だったのかもしれない。


 そう思うと、不思議と胸の奥が落ち着いた。


「何かありましたか?」


 月花が首を傾げる。


「いや……別に」


 そう答える。


 だが。


 その目は、ほんの少しだけ柔らかかった。


 月花は気付く。


 昔の優星。


 まだ笑っていた頃の優星に少しだけ近い。


 そんな気がした。


 だから自然と微笑む。


「そうですか」


 優しい笑顔。


 優星は思わず視線を逸らした。


 胸の奥が妙に落ち着かない。


 刀を向けられても動じないのに。


 月花の笑顔には慣れない。


「……変な奴だな」


「え?」


「なんでもない」


 月花は小さく笑った。


 その笑い声を聞きながら。


 優星はほんの少しだけ、自分の中の冷たさが和らぐのを感じていた。


 しかし。


 夜になっても氷魔は帰らなかった。


 月花が空を見上げる。


「お爺様……遅いですね」


 優星も空を見る。


 満月が浮かんでいた。


 胸騒ぎがした。


 理由は分からない。


 だが。


 静かな夜の中に、不穏な気配が漂っているような気がした。


 その頃。


 人気の無い山道で。


 氷魔は刀を抜いていた。


 その視線の先には、一人の男。


 月明かりに照らされた鋭い眼。


 獣のような殺気。


 儀蔵が立っていた。


「見つけたぜェ……」


 低い声が夜に響く。


 氷魔は静かに構えた。


 そして。


 二人の剣士の戦いが始まろうとしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は7/12 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ