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退魔師、異世界に転生する  作者: るうと280
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第七話:手加減はデコピン一撃


「……南無阿弥陀仏。安らかに眠ってね、フォーハンドベア四号くん」


私は森の湿った地面に金剛杖を立て、目の前の「惨状」にそっと手を合わせた。

そこには、さっきまで元気に襲いかかってきた魔獣の姿がある。……いや、正確には「かつて魔獣だった、よくわからない肉片」が四散していた。


「ミズキ様……。またやっちまいましたな。これで通算三頭、すべて『買取不可』のゴミクズでございますぞ」


「違うのよゴン! 四聖たちの『軽い一撃』で、まさか熊が風船みたいに破裂するとは思わないじゃない! 白虎なんて、ちょっと前足でチョイチョイってしただけなのに!」


「あやつらの『チョイチョイ』は、あちらの世界の大型トラックが突っ込んでくるのと同じです。……というか、ミズキ様。ご自身のこともお忘れなく」


ゴンが呆れたように、私の持っている金剛杖を指差した。


「四頭目、四聖を引っ込めてご自身で対処されましたな。あの時のこと、覚えておいでで?」


「……ええ、覚えてるわよ。杖でポカッと叩いて気絶させようとしただけよ」


10歳の、銀髪で、細っこい腕の幼女の力なら、まあ気絶くらいで済むと思ったのだ。

でも結果は。


「『ポカッ』と一振りしただけで、熊の頭が地面にめり込んで、衝撃波で後ろの木が三本へし折れましたぞ。この体、どんだけ〜! って感じでございますな」


「本当によ。10歳の子供の体で、金剛杖の一撃が対戦車ミサイル並みなんて誰が思うわけ!? 霊力の出力がバグってるのよ……」


でも、私は学習した。そんな尊い犠牲オーバーキルがあったからこそ、ついに極意を掴んだのだ。名付けて、デコピン!(そのまんまやないかい)


「ほら、五頭目が来たわよ! ――はぁっ!」


私は金剛杖を置き、素手で構えた。

突進してくる熊の鼻先に、霊力を99.9%カットした、至極優し〜い「デコピン」を放つ。


ピシッ!


「ガフッ!?」


巨体がまるで時間が止まったように硬直したあと、白目を剥いてドサリと倒れた。

破裂なし、欠損なし、綺麗な毛皮もそのままだ。


「やった……! やったわゴン! 完璧な手加減よ!」


「おおお! お見事です、ミズキ様! これならギルドで高値がつくこと間違いなしですな!」


「ふふーん。……あ、そうだ。手加減に集中しすぎて、本来の依頼の『薬草』を採るの忘れてたわ。ゴン、あとは分裂してお願いね」


私は倒れた熊の上にちょこんと腰掛け、やり遂げた感に浸った。


「……やれやれですな。主様がデコピンで遊んでいる間に、それがしがせっせと草むしりですか。因果な商売でございます」


ゴンはそう零しながらも、手慣れた様子で30匹に分裂し、草原へと散っていった。

さあ、お仕事が終わったら、次こそはこの熊を換金してお肉だ!

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