第六話:いでよ!四聖、ちょいやりすぎ?
街の外へ一歩踏み出すと、そこにはどこまでも続く緑の草原と、深い森が広がってるよ、改めて別世界って実感するよ。
「よーし、この辺りなら広いし、人目もないから平気かな?」
昨日、おっちゃん(25歳以上はおっちゃんだよね)に高級なステーキを奢ってもらった。美味しかった。なんでもギルドにとって「とってもいいこと」があったらしいけど、詳細は教えてくれなかった。まあ、お肉が美味しかったからいいんだけどね!
さて、今の私はギルドの依頼で薬草採取に来ている。……のだけど、その前に確認したいことがあるんだよね。
「ゴン、周りに人はいない?」
「はっ。某の索敵に引っかかる気配はありません。安心してお呼び出しを」
「じゃあ、行くよ……。四聖召喚! 白虎、朱雀、青龍、玄武、来なさい!」
金剛杖を振り上げ、その石突を力強く地面に叩きつける。飾りなんて付いていない鉄の杖なのに、空間を震わせるような「シャラン……」という涼やかな音が響き渡る。
その瞬間、シュートいう感じで左腕の腕輪が熱を帯び、私の霊力が充実していく。
もしかしてこの腕輪って、周りの霊力を吸収するのかな?
そして、私の霊力が空間に収束していくと、目の前に空間を切り裂いて、巨大な四つの「穴」が現れた。
そこから、懐かしい気配と共に彼らが姿を現す。
前の世界では霊体に近い半透明の姿だったのに、はっきりとした実体を持って現れたのだ。しかも、めちゃくちゃデカい。
「ミズキ様、これは。いや、某が実体を持っていたので、予想はしていましたが」
「みんな……元気だった?大きくなったね」
『ガウ〜〜(主!)』
『ケキョウ〜(お久しぶりですわ)』
『フシュウルゥ(お呼びですか)』
『ホウ(主様……)』
「あはは、姿は少し……いや、かなり変わっちゃったけど、私だよ。……え? 前より可愛くなったって? 何それ、前は可愛くなかったみたいじゃん!」
思わず顔がにやけてしまう。みんなからの親愛の感情が、波のように押し寄せてくる。
白虎のふかふかの毛並み、朱雀の燃えるような羽根、青龍の硬い鱗、玄武の重厚な甲羅……。順番になでなでしてあげていると、本当に幸せな気分になる。
「またみんなに会えて嬉しいよ。でも……やっぱりみんな、前より大きくなったよね?」
白虎なんかは、もふもふ度が増しているよ〜、もふもふ
私がもふもふしていると、肩に乗ったゴンが鋭く声を上げた。
「ミズキ様、感動の再会中失礼いたしますが……」
「うん、わかってる。無粋な客が来たみたいね」
ドシンドシンと地響きを立てて、森の奥から巨体が現れた。腕が四本もある、禍々しい大きな熊――うわ、腕(前足?)が4本もあるよ。さすが異世界だ。
「いい機会だわ。みんな、この世界での私の初仕事、手伝ってくれる? ……(スケさんカクさん)やっておしまいさい!」
私が指を鳴らした、その刹那。
青龍が天から雷を落とし、白虎が風の刃で切り裂き、朱雀が浄化の蒼炎を吹きかけ、玄武が重力で押し潰した。
……いや、正確には「それら全部」が同時に起きた。
ドォォォォォォンッ!!!
爆風で私の銀髪が激しくなびく。
土煙が晴れたあとには、熊どころか、そこにあったはずの地面がクレーターのように抉れ、周囲の木々は消し炭になっていた。
「………………」
あまりの光景に、私は杖を握ったまま固まった。
「……ねぇゴン。これ、」
「ミズキ様……。如何にもですな……塵一つ残っておりませんな」
四聖たちは「やりましたよ!」と言わんばかりにドヤ顔で私を見つめている。
……どうやらこの世界での力加減、思っていた以上に難しいことになりそう。
ミズキちゃん(自分にちゃん付けはちょっと恥ずかしいけど、この見た目だし許して!)、異世界での前途は多難のようです。




