第三話:驚異の分裂!手に入れましたよ!串焼き!
「よしゴン、その子猫の気配、追える?」
「お安い御用でございます。……しかし、今のミズキ様から溢れるこの霊力……これなら、いけるかもしれませぬな。――はぁっ!」
ゴンの気合と共に、ポンッ、ポンポンポンッ! と、小気味よい音があたりに響いた。
「えっ、えええええええっ!? ちょっと、ゴン! 増えすぎじゃない!?」
私の目の前には、見渡す限りのモフモフ。分裂したゴンの数は、なんと30匹!
前の世界では、どんなに頑張っても5匹程度が限界だったのに、今の私はどんだけ燃費がいいのよ。
「おおお……ミズキ様、すごいですぞ! 体が軽い、いくらでも自分を増やせる気がいたします!」
「これなら、街中の路地を一斉に捜索できるわね。……よし、みんな散って! ミーちゃんを見つけて!ローラー作戦開始!」
30匹のゴンは、シッポを振り乱して四方八方へ散っていった。
結果はすぐに出た。わずか数分後、路地裏の木箱の隙間で丸まっていた子猫を、ゴンたちが包囲するようにして見つけ出したのだ。
「やった! さっそく飼い主さんのところに……って言っても、私、どうしようこの街の住所なんてわかんないんだけど」
「こっちです、ミズキ様!」
一匹のゴン(便宜上、彼をゴンAと呼ぶことにした)が、私の裾をグイグイと引っ張る。
「あちらで、必死に猫を探している女性がおります! 匂いがこの子と一致しましたぞ!」
「でかしたわ、ゴンA!」
「Aって……まぁ、分かりやすくてええですけど」
あれ?ちょっと不機嫌?
ゴンAに案内され、角を曲がると、涙目でキョロキョロしている女の人がいた。
「そこのお姉さん! この子はあなたの猫ですか?」
私が抱えた子猫を見せると、彼女の顔がパッと輝いた。
「あ、ああ……! ミーちゃん! ミーちゃんなのね、探したのよ〜!」
「にゃ〜ん」
ミーちゃんは飼い主さんの腕の中に飛び込み、幸せそうに喉を鳴らした。お姉さんは何度も目元を拭いながら、私に向き直った。
「本当にありがとう、お嬢ちゃん。……ええと、」
「ミズキです!」
「ありがとう、ミズキちゃん。これ、少ないけどお礼ね。本当に助かったわ」
手渡されたのは、小さな革の袋。
中を覗くと、キラリと光る**銀貨が4枚**入っていた。
「……ねぇゴン。これって、こっちの世界だとどれくらいの価値があるのかな? 全然相場がわかんないんだけどさ」
「ふむ……。先ほど路店で見かけた香ばしい匂いの串焼きが、一本銅貨4枚ほどでした。お釣りで価値がわかる思うのですが」
「おお、ゴン、冴えてるね」
早速行くわよ!
「よし! 作戦大成功! ゴン、まずはあの串焼きで腹ごしらえよ! 肉串の味、堪能させてもらうんだから!」
「心得ました! さあ、冷めないうちに参りましょう!」
銀貨を握りしめ、私は銀髪をなびかせて屋台へと猛ダッシュした。
「おじさん一本ちょうだいな!?」
「いらっしゃい、お嬢ちゃん」
「これで、いい?銀貨かい、ちょっと待ちな。お釣りは小銀貨9枚とどうか6枚だ。毎度あり!」
「ありがとう、おじさん」
私のお腹が、待ってましたとばかりに本日最大の咆哮を上げた。
グリュリュリュリュリュ〜〜〜〜!
肉串は、めっちゃ美味しかったです。




