第四話:これってテンプレ・・かな?
「もぐもぐ……ん、んまーーい!!」
異世界一食目、念願の串焼き。お肉がちょっと固めだけど、ワイルドなスパイスが効いていて最高に美味しい。銀貨を握りしめて買い食いする背徳感、たまんないわね!
なんて感動に浸っていたら、不意に私の周りに影が落ちた。
「おいおい、モグリだぜ。お嬢ちゃん」
「いけないなぁ、勝手に依頼を受けちゃあ」
見上げると、そこにはいかにも「ガラの悪い冒険者」を絵に描いたような、**むさいおっさん四人組**が立っていた。
「……何、この人たち。ムサイ……」
「誰がむさいんじゃ、ゴラァ!」
私の心の声が漏れてたみたい。おっさんの一人が血管を浮かせて怒鳴る。
「処しますか? ミズキ様。今なら30匹の某で、彼らの足の指だけを執拗に噛むことも可能ですが」
「いや、ゴン。とりあえずおっさんたちの主張を聞こうよ。法治国家かもしれないし」
すると、リーダー格のおっさんが鼻を鳴らして言った。
「お嬢ちゃん、その猫探しの依頼はな、ギルドに正式に出されてたもんなんだよ。それをギルドに登録もしてねぇガキが横取りしたって訳さ。わかるか? 営業妨害だ」
「わかったら、有り金を全部よこしな!」
「えー、なんで〜? 私が自分の足で探して、飼い主さんに直接お礼をもらったんだよ。これ、私の労働対価じゃない」
「だから、それがモグリ行為だって言ってんだろ!」
お肉を食べてる邪魔をされただけでもイラッとするのに、このおじさんたち、子供からお金を巻き上げようとするなんて。
「それにしても、子供からお金巻き上げるなんて、大人の風上に置けないね。情けなーい」
「全くだ。大人として恥ずかしいよ」
私が言うより先に、別の方から呆れたような声が響いた。
人混みを割って現れたのは、身なりのいい軽鎧を着た青年……というか、お兄さんだった。
「大丈夫か? お嬢ちゃん」
「えっと……ありがとうございます? かな?」
「うんうん、お礼を言えるか。偉いなー、いい子だ」
そう言って、彼は馴れ馴れしく私の頭をポンポンと撫でてきた。……ちょっと、銀髪が乱れるじゃない。私、中身はあんたより年上かもしれないんだからね?
「誰だお前! 邪魔すんじゃねぇ!」
「あっれ〜、俺を知らない? お前らこそ、どこのモグリだい?」
お兄さんが余裕の笑みで問い返すと、おっさんたちは誇らしげに一枚のプレートを突き出した。
「モグリじゃねぇよ! これを見ろ、ギルドカードだ。俺らはもうすぐDランクに手が届く、実力派のEランクなんだぜ!」
「へ〜、それってすごいの? おじさん」
私が素朴な疑問を投げかけると、お兄さんは「おじさんはひどいな、これでもまだ29歳なんだぜ?」と少しショックを受けた顔をした。……29歳? うん、立派なおじさんだよね。
「あんまり大したことないよ。結局まだEランクなんだろ? その年でまだ下位ランクに燻ってるなんて、笑えるぜ」
お兄さんは一転して冷ややかな視線をおっさんたちに向ける。
「ひ、ひえっ……!」
おっさんたちがその気迫に腰を抜かして逃げていくのを、私は串焼きの最後の一切れを頬張りながら見送った。
「助けてくれてありがと、29歳のおじさん。……で、さっきの話、本当なの? ギルドに入ってないと依頼を受けちゃいけないの?」
「お兄さん、って呼んでほしいなぁ……。まあ、厳密に言えばギルドを通さない依頼は『個人契約』になるから、ギルドが守ってくれないだけで違法じゃないんだけどね。でも、あんな連中に目をつけられると厄介だよ」
そう言って笑う彼からは、おっさんたちとは違う「強者」の気配がした。……異世界、案外ややこしい場所なのかもしれないわね。




