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【アーデンティア帝国編 第一章 スタート!】剣を捨てて殴ったら人生が変わった!  作者: 初雪空
アーデンティア帝国編 「第一章 感情がない彼女たちの日常」
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マリカさん、怒ってる(前編)

追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!

https://hatuyuki-ku.com/?p=4566

「私が……じっくり育てていたのに」


 マリカ・フォン・ミシャールこと、風の精霊シルフィード。


 彼女は、自分の男(予定)であるティルを逆NTRされた。


 まだ関係を持っていない時間だけの反応を楽しんでいたのに――


 破裂したティーカップの取っ手を投げ捨てたマリカは、立ったままで肩を震わせる。


「水を操ったから、寝取ったのは精霊のウンディーネ?」


 まだ無事なテーブルの上で、水滴が動く。


“そーだよ! やーい、負け犬!”


「ティルは、私が初めてになるの! 手を出すな!」


“ティル君、まだ未経験? 嬉しいなー! 大事にするね!”


 ブチッと、マリカさんの何かが切れる音。


 次の瞬間、テーブルの真ん中に線が走り、左右に弾け飛ぶ。


 マリカは、下ろしたままの腕で5本の指を開いて、グッと握る。


「うん、殺す! ぐっちゃぐちゃに!」


 その表情は、満面の笑みだった。


 人はあまりに怒ると、逆に笑顔になる。


 その目は、不自然に見開いたまま……。


 とたんに、近くの鳥が残らずに飛び立ち、ギャアギャアと喚き出す。


 物陰にひそんでいた小動物は、全身の毛を逆立てたあとに、全力で逃げ出した。


 それを追いかけるように、ぬるい衝撃波が追いかける。



 ――人里から離れた、原生林の中


 魔法騎士ですら倒される、指定モンスター。


 デスバードという凶兆、ならぬ狂鳥が、巣を作っていた。


 外見はカラスとよく似ているが、二本足で立てば、大人の男を見下ろすほどの大きさ。


 左右の翼を広げれば、まるで黒い壁と向き合っているかのよう。


 その鳴き声は、龍のごとく、聞いた相手が動けないほどの恐怖をもたらす……。


 クソバード……もとい、デスバードの1匹が、クワッと目を開いた。


(危険だ! 今すぐに、この場を離れなくては!)


 巣のボスでもある成体は、ミィイイイイイッ! と、猫ミームみたいな鳴き声を上げた。


 ちなみに、こいつの本来の鳴き声は、クワァアアアッ! である。


 すでに、発狂しているのだ。


 けれども、他のデスバードも、同じように猫のような鳴き声で答えた。


 発狂している奴しか、いない。


 このデスバードは、ワイバーンに匹敵する最高速度をほこっている。

 旋回でドッグファイトをすれば、勝てるほどだ。


 いったん空中に飛び立てば、対空迎撃をやりにくいファンタジー世界で想像以上の脅威。


 二本足で降り立ったデスバードの群れは……。


 懸命に、走り出した。


 その光景は、マラソン大会のスタートを思わせる。



 ――街道


「ゲヘヘ! 運がなかったな、テメエ?」

「俺たちに出会った以上――」


 安物のソードをちらつかせた野盗のコンビが、でくわした旅人を脅している。


 けれど、ドドドと足音。


「な、何だ? げぇええええっ! クソバード!?」

「……嘘だろ?」


 目が据わっているデスバードの群れが、こちらに向かっての全力疾走。


 固まったままの3人を避けるように、彼らは走り去っていく。


 離れた山中から、空を貫くような竜巻の柱。


 世界を滅ぼす魔王のような笑い声も、聞こえる。


「お、おい?」

「……ああ、早く逃げるぞ!」


 野盗2人は、竜巻から逃げるように背を向けた。


「あっ!」


 もう1人の声。


 まだ思考停止で、足をもつれさせたようだ。


 戻った野盗が、左右から旅人を立ち上がらせる。


「立て!」

「……ほら、行くぞ!」


 3人は、デスバードの群れを追いかけるように、マラソン大会の最後尾となった。



 ◇



 サクリフィ王国の王都、ウルティマナ。


 マリカさんが、ティエリー・レ・サクリフィ王子の派閥にいる貴族に嫌がらせをしたまま。


 自分の屋敷にいる貴族の当主は、風が吹かないままで過ごしていた。


 一言で説明すれば、トイレに籠ったままのような生活。


 誰がやっているのかは明確だが、文句を言おうにも、マリカはいない。


 いても、怖くて話せない。


「んんんっ! いい加減に、どうにか……。いや、お前に言ったわけではない」


 立っている執事は、会釈した。


「恐縮です」


 主従の2人は、どちらも疲れ切った様子。


 当主の中年男が、自分に言い聞かせるように告げる。


「私は、エレメンタル騎士団の風へ行ってくる!」


「風の神殿でございますね? はい、馬車の用意はできております」



 ――風の神殿


 風の精霊シルフィードを祀っている、シルフィード騎士団の本拠地。


 騎士たちは、美しさと爵位を重視している。


 高位貴族の令息が多く、たまに実力テストで採用された者も……。


 若い騎士たちが集まり、コソコソと話す。


「聞いたか?」

「……フラヴィオが、ミシャール伯爵令嬢と結婚するんだろ?」


「ティエリー王子は? 諦めたのか?」


「ジェルマーノ公爵家が、取引したんだろ!」

「……後ろ盾になるってことか」


「ミシャール伯爵は?」

「もう、領地に帰ったとさ!」


「無責任だな……」


「どうせ監視がついているし、王都にいても面倒なだけ」

「違いない!」


 1人だけ、筋肉ムキムキの若者がいて、両手をグッとしている。


「そ、そんな! シルフィード様が見初めた男を無視するのか!?」


 好物はササミのような男に、近くの騎士がなだめる。


「どうどう! 落ち着け、タイロン……」

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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