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戦争捕虜の少女たちが労働施設でロックバンド  作者:
冒涜的チョコ・コーティング
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人生の一人反省会

 目が覚めると、ドアの下の隙間にライ麦パンがひとかけら落ちていた。夕食ということかもしれないが、なんともケチくさい話だ。パンだけで、スープどころか飲み物さえ無いだなんて。食べると口の中がパサパサするが、しょうがない。尿意があったので、糞箱にまたがって用を足した。排泄物のすぐそばにずっといなければならないのは気分が悪いが、これを避けることはできない。

 食事をして用を足したらすることがなくなった。

 ドアの隙間から差し込む光もまったくないため、いまは夜なんだと思われた。すごく体を伸ばしたい。しかしそれは天井が許してくれそうにない。ずっと膝を曲げているので、なんだか鬱血している感じがする。が、そんなことを気にしていては気が滅入りそうだ。

 せっかくの機会なんだから、もっと寝なきゃ。寝溜めだ、寝溜め。

 そう思うのだが、もはや眠気は一切なかった。体は全身がだるいのに、頭はぐるぐるといろんな思考が回って一切休もうとしてくれない。急に監察官に殴られた頬が痛みだし、頭の中で勝手に呪詛が広がっていた。

 なんで突然殴られなきゃいけないんだよ。おかしいじゃんそんなの。何が偉くてそんなことができるんだろう。同じ人間なのに、ニッポニア人よりムオン人の方が偉いと思ってるんだろうか。そういえば雲が言っていた気がする。ここにいる監察官の大半は犯罪者なのだという。

 つまりろくな人間じゃない。だから、私に八つ当たりしてるんだ。自分の境遇がよく無いからって、もっと弱いやつを見つけていたぶって喜んでるんだ。きっと心が貧しいからそんなことしかできないし、彼女たちもこの場所で奴隷の管理なんていうしみったれた仕事をずっとやっていくしかないに違いない。可哀想な人たちだ。本当に可哀想な人たち。ああ。

 まぁでも、敗戦国の捕虜である私たちほどではないんだろうな。きっと今、この世界でもっとも惨めなのが私たち。

 でさ、そんなことになったのだって、きっと理由があるんだよ。自分でいうのもなんだが、私はいい人間じゃなかった。むしろ悪い人間だと思う。国立女子医療学校にだって望まれて入ったわけじゃないし。お父さんもおばあちゃんも、私に実家の近くで嫁いでお嫁さんになって欲しかったんだ。でも、私はその未来を勝手に悪いものだと決めつけて、馬鹿なのに、馬鹿みたいに勉強して国女に入った。いま戦争が行われているのもわかっていたし、もし戦争に駆り出されるのならばお国のために戦えるチャンスじゃんなんて、頭空っぽにもほどがある想いを抱いてしまった。

 馬鹿な私は馬鹿な私の希望通りに戦場の後方部隊に駆り出され、仲間の治療に当たった。いや嘘だ。本当に自分の頭の中で過去を美化しようだなんて最低。私はたくさんの仲間を殺したんだった。爆撃で片足を失った歩兵や、伝染病の症状が出ていた総長を。あるいは戦場でメンタルが壊れてしまいずっと発狂していた同僚を。

『痛みなく逝かせてあげることは、私たちの責務であり、優しさなのです』

 そんな建前の元で、部隊全体を機能させるために個別の人々を切り捨てた。いや、でもそれは必要なことじゃん。ニッポニア軍をちゃんと戦えるようにするためにはそれらは必要なことだった。

 そうだよね?

 じゃあたとえば、今私が懲罰房に閉じ込められていることだって、バクルシュミュール女子収容所を正しく機能させるために必要なことだったのでは? だったらあの監察官たちだって、やるべきことをただやっただけに過ぎないんじゃないか。彼女たちだって、私を懲罰房に入れなきゃしょうがなかったんだ。だって私は、家族を裏切って戦地へ出た味方殺しのクソ野郎だから。

 そんなやつ、懲罰房へ入れて当然だ。


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