第6話・現時点の負けイベントっぽい敵が出てきたんですが!?
天馬市の外れにある山の川辺エリア。
トバリとシオンが互いに不機嫌そうにしている中、対岸にゴブリンの群れが現れた。
4体は通常のゴブリンで、それぞれゴフテツの装備を手にしているが、残り1匹は体格から全く違う。
〈え? なんで2メートル近くのゴブリンが片手剣を……? あいつ、もしかして上位種か!?〉
冷や汗を流すトバリに、シオンがやる気満々で立ち上がった。
「ちょうどいいところにわたしのストレス発散ができる相手が来たな!」
「いや待って! 普通のゴブリンはともかく、上位種がいるんだぞ!」
「だから? てか、貴様はわたしの意見を聞かなかったよな?」
「お、おう? それがどうしたんだ?」
「なら、わたしが貴様の意見に従う理由もない!」
シオンはギリッと歯を鳴らし、木刀と短剣を持ってゴブリンの群れへ突っ込んだ。
〈あ、あの馬鹿!? 命がかかっているのに無茶をするなよ!〉
焦って立ち上がったトバリが、片手剣を持ってシオンを追いかける。
「はあぁ!!」
浅瀬を超えて対岸の岸に来たシオンが、ゴブリンに向かって木刀で斬りかかる。
だが先頭にいたゴブリンが盾でシオンの攻撃を弾いた。
「ぎゃん!? まだまだ!」
シオンは地面に倒れるがすぐに涙目で立ち上がる。
ゴブリン達はニヤケ顔で武器を構え、上位ゴブリンが白銀に輝く片手剣の切先をシオンに向けた。
「お、おいおい。あいつ、ゴブリンソードマンじゃないよな?」
トバリが冷や汗を流しながら、シオンの元に向かう。
ゴブリン4匹は一斉に飛びかかり、シオンは1匹を木刀で迎撃するが残り3匹の攻撃を受ける。
「がっ!?」
短剣で斬られたり、棍棒、盾で殴られたシオンが歯を食いばる中、彼女の顔面をゴブリンが盾で殴打した。
「がっ!?」
またしても地面に倒れたシオンだが、それでも体に力を入れて立つ。
「ま、負けてたまるか!!」
鼻血が出て体はアザだらけでもシオンは前を見る。
最初に迎撃した片手剣持ちのゴブリンも起き上がり、武器を構え直した。
「こ、この程度の雑魚にわたしは負けるのか」
にやけ顔のゴブリン4匹がジリジリと距離を詰め、後ろにいる上位ゴブリンがニヤリと笑う。
「ははっ。あいつの言うことを聞けばよかったな」
片手剣持ちのゴブリンがシオンに突っ込む。
その時、横からトバリが現れて下手くそな水平切りでゴブリンの体を深く切り裂いた。
「おいアホ。後でお話しがある」
「と、トバリ……。なんでわたしを助けるんだよ!」
「話は後! 今はコイツらを倒すぞ!」
トバリは倒したゴブリンの片手剣を拾い、シオンへ渡す。
片手剣を受け取ったシオンは、木刀を躊躇なく捨てた。
「あ、ああ! いいのかトバリ?」
「……さっきは態度が悪くてごめん」
「いや? わたしもすまない」
互いに謝った2人は、残った3匹のゴブリンと向かい合う。
「「「ゴブッ!」」」
警戒を始めた3匹は、盾持ちを真ん中にして攻めてきた。
その動きにトバリとシオンは地面の石を拾い、中央ではなく左右のゴブリンに投げる。
「「よし!」」
石を受けたゴブリン2匹は動きが鈍り、突撃してきた盾持ちをシオンが受け止め、トバリが後頭部を刺して倒した。
「後ろのデカブツがまだ動かないのはなんでだ?」
「さあな? でも今のうちに雑魚を倒すぞ!」
「ああ!」
短剣持ち、棍棒持ちのゴブリンが復活して、同じタイミングで飛びかかってきた。
トバリとシオンは後ろに下がりながら、急に振り向き足払いをして2匹のゴブリンを転がさせた。
「さっきの仕返しだ!」
転けたゴブリンの頭に剣を突き刺した2人は軽く息を吐く。
周りを見ると倒したゴブリンの武器やドロップアイテムが地面に落ちている。
「おいおい急に動きが良くなったな」
「火事場の馬鹿力だよ! で、トバリはあのデカブツを知っているのか?」
ゴブリンを倒した2人は、武器を構える。
2人の目には身長2メートルに筋骨隆々の上位ゴブリンが写っている。
「ボブならいいが、ソードマンなら最悪だな」
「どういうことだ?」
「今にわかる」
ゴブリンが倒されたことで余裕が消えた上位ゴブリンは、白銀の片手剣を構えた。
〈どう見てもやばい気がする〉
冷や汗を流すトバリに、上位ゴブリンは片手剣を赤色に光らせる。
「シオン! 危ない!」
「なっ!?」
トバリが顔色を変えてシオンに飛び掛かる。
するとゴブリンが高速で接近して、シオンに向けて強烈な斬撃を繰り出した。
その一撃がトバリの背中を浅く切り裂く。
「がっ!?」
直撃は避けたが、トバリは背中から血を流す。
「お、おいトバリ!」
「大丈夫! だけど、最悪だ!!」
痛みに耐えるトバリは押し倒したシオンから離れて立ち上がる。
すれ違った上位ゴブリンはニヤリと笑う。
〈今のは武技スキルだよな……。と、なると、こいつはゴブリンソードマンで確定かよ!〉
トバリは右手に持った片手剣を振える。
「じゃああいつはお前の言うゴブリンソードマンか!」
「そうなる! シオン、お前は逃げろ!」
「悪いが、貴様だけ置いていけるかよ」
「このバカが」
「ああ! 好きなだけバカ扱いしてくれ」
ニヤリと笑うシオンに、トバリが呆れたようにため息を吐く。
「なら大馬鹿、死ぬまで付き合ってもらうぞ!」
「もちろん!」
〈まあでも、コイツを死なす気はないけどな〉
トバリはカラコンの奥に光る金色の眼を思い出し、覚悟を決めたように頷く。
振り向いた上位ゴブリン、ゴブリンソードマンは余裕そうにジリジリと2人は歩み寄る。
「「いくぞ!!」」
2人は同じタイミングで頷き、ゴブリンソードマンへ立ち向かうのだった。




