41話・嫉妬は怖いですね……。
次の日の朝、ホテルの朝食ビュッフェ。
テーブル席に座るトバリと隣にいるソラへ、対面の席に座るシオンがジト目を向けた。
「つまり貴様らは楽しく抱き合って寝たと?」
「おおまかに言えばッス!」
「ほう? トバリ、申し開きはあるか?」
「……ソラが抱き枕にしてきました」
トバリがパリッとハーブソーセージを食べた。
「うん! シオンの言うとおり、トバリは抱き枕にちょうどよかったよ」
「なぜ貴様がトバリを抱き枕にしているんだ!」
「シオンさん、怒るところはそこなの!?」
シオンの隣に座る河原が思わず突っ込んだ。
「当たり前だ! わたしだってトバリを抱き枕にしたいんだぞ」
「あ、はい。じゃなくて、普通に考えて一緒に寝るのはアウトよりでは?」
「え? おれは漢ッスよ」
「「……は?」」
ソラのドヤ顔に河原とシオンが首を傾げる。
「俺が言える言葉じゃないんだが、豪華な朝食を楽しもう」
「トバリ君……。確かに今は食べないとやっていけないね」
「河原さん!? ああもうトバリ、わたしの家に帰ったら抱き枕にしてやるからな」
「やだ」
「どうしてだ!?」
唖然とするシオンへ、トバリがため息を吐く。
「名家のお嬢様がホテル内で騒ぐなよ」
「わたしが悪いのか?」
「たぶん違うけど、シオンさんも今は食事を楽しんだほうがいいよ」
「あ、はい」
河原の死んだ魚のような目に、シオンが自然と頷いた。
「それでトバリ。あの近衛姉妹との待ち合わせた10時に個室カフェ・タイキックだったスよね」
「名前にツッコミどころがあるのは気のせいか?」
「シオンにはピッタリッスね」
「貴様はわたしをいじりすぎだろ!?」
シオンがぎこちなく椅子に座り直す。
その姿にソラが、イタズラ小僧のような笑みを浮かべた。
「シオンは最高ッス」
「わたしはまともに座れなくて最悪だけどな」
「はいはい2人とも、また声が大きいよ」
「「ごめんなさい」」
河原の優しめの指摘に、シオンとソラが謝る。
「しっかし、近衛姉妹が言ってた『ウチのプライドが如月家に傷つけられた』ってなんだろうな?」
「んー? 確か家の規模的にはウチと近衛家は同格だが、向こうは中央都の名家だから周りの家との関係があるんだろうな」
「お前、よく覚えているな」
「これでも名家の情報は一通り覚えているんだよ」
シオンが自信満々に鼻を鳴らすが、対面の席に座るソラがジト目を送った。
「その割には名家パーティには参加してないんスよね」
「いやだって面倒だし、トウカがやらかしてから呼ばれなくなったからな」
「なんてか、シオンらしい」
「トバリもそう思うか!」
「褒めてない!?」
トバリが嬉しそうにするシオンへ突っ込んだ。
その後、4人はお腹一杯になるまで朝食ビュッフェを楽しんだ。
ーー
朝食ビュッフェが終わり、4人はチェックアウトして荷物をレンタカーのワンボックスカーに乗せた。
時間がちょうど良くなり、河原の運転で近衛姉妹に指定された個室カフェ・タイキックに到着する。
「名前の割に高級そうなカフェなんだが?」
出入り口の看板にタイキックと書かれているが、建物は4階建てのレンガ造りで歴史ある中世の屋敷に見える。
トバリが固まる中、シオンが満面の笑みを浮かべた。
「貴様ら武器は持ったか!」
「持つわけねーよ! お前、看板に武器の持ち込みは禁止と書いてあるだろ!」
「確かに!」
「やっぱりシオンはポンコツッスね」
ソラがため息を吐くと、河原が軽く頷いた。
「まあでも、今回の相手はかなり警戒したほうが良さそうだし、シオンさんの行動も理解はできるよ」
「おお! 河原さんも武器を持っていくか?」
「気持ちはわかるけど武器は車に置いていこうね!?」
「わたしの日本刀が!!」
河原がシオンの手から強引に日本刀を取り上げた後、ワンボックスカーの後部座席に放り込んだ。
シオンがショックを受ける中、店の前に黒塗りの高級車であるノワールが停車した。
「「「「え?」」」」
トバリ達が駐車場の出入り口で固まる。
ノワールの窓から見えるのは、スーツ姿の近衛姉妹で、2人は運転手の執事にドアを開けられ、優雅に降りてくる。
「皆様おそろいね」
「いやあの、近衛さん。なんでスーツなの?」
「これでも私達は名家の娘なので身だしなみは整えるんですよ」
「ふむ。噂の近衛家はキッチリしているな!」
「如月家がガサツなだけでは?」
ヒョウカの背中から現れたスイレンが、口元に手を置きながら笑う。
「そこのクソガキ。如月家がガサツなんじゃない、わたしがガサツなだけだ!」
「胸を張って言うことですか!?」
「もちろん!」
シオンが自信満々に頬を吊り上げ、スイレンが全力で突っ込んだ。
「ま、まあ、バカ娘はさておき。近衛さん、わざわざ呼んでいただきありがとうございます」
「いえいえ! トバリさんにはウチの愚妹がやらかしたのと大きな貸しがあるから問題ないわ」
「それならいいのですが……」
シオンとスイレンが睨み合う中、トバリとヒョウカはため息を吐く。
「何はともあれ、中に入ってもいいかな?」
「はい! では私が先に入るわね」
「よろしく頼むよ」
河原がぎこちない笑みを浮かべる中、ヒョウカを先頭にトバリ達は中に入っていく。
なお執事の男性はシオンに鋭い目を送っていたが、当の本人は軽く振り返りニヤリと笑うのだった。




