40話・自分が恵まれてる? ありがとうソラ……。
ナバールリゾート近くのダンジョン管理所で魚民で回収したドロップ品や武器を売却した後、トバリ達がホテルに戻り河原の部屋でお金の計算をした。
夕方、ホテルの一室。
河原が分厚い封筒をテーブルに置き、私服姿に着替えた3人を見る。
「今回の報酬は手取りで220万円だったぞ」
「……え? そんなにしたんですか!?」
「ああ。アクアヘビィの槍が80万、トライデント3本が60万で、魔石や雑魚のドロップ品を含めたらこんなものだね」
「す、すごい! 今回の旅行費を軽く超えたッスね」
テーブルに置かれた札束を見るトバリとソラへ、壁にもたれかかっているシオンがため息を吐く。
「2人とも、儲かりはしたが装備はどうなった?」
「……あ。おれの鎧や盾はひしゃけたッス」
「俺の方はそこまで問題ないが、傷が痛いな」
トバリが手当てされた頬を自分で撫でた。
「と、なるとだ。今回の儲かった金から経費や修理代を引くべきだろ」
「お前、急にどうした?」
「わたしはわたしだ!? トバリはわたしをどう思っているんだ!」
シオンがジト目になる中、トバリは笑顔で言葉を返す。
「ポンコツなバカ娘!」
「そうだけども! これでも常識は持っているぞ!?」
「「「え?」」」
「貴様ら!?」
悔しそうに歯を噛むシオンへ、ソラがトバリの方へ目線を戻した。
「それで装備の修理はおれの叔父さんに頼めるッスよ」
「それは助かるな!」
「河原さんまでわたしをスルーする気か!」
「いやその、シオンさんは少し落ち着いてほしい……」
「ええ!?」
シオンが唖然として、トバリが露骨に目を逸らす。
「何はともあれ、一旦は河原さんはお金を預けて経費問題は帰ってからにしよう」
「わかったッス!」
「お、オレがお金を管理するのか?」
「「お願いします!!」」
「あ、はい、わかったよ」
「貴様ら、わたしを無視するな!?」
頬を膨らませるシオンが、悔しそうに唇を噛んだ。
その時、トバリが立ち上がりシオンの前に立つ。
「シオン」
「お、おう、トバリ、急にどうした」
「いやな。お前のアドバイスで少しは人に頼れるようになったよ、ありがとう」
「トバリ……。なら、今度はわたしがお前を助けてやるよ」
頭を下げるトバリへ、シオンが嬉しそうに微笑んだ。
「まあでも、今回トバリを助けたのはおれッスけどね!」
「あ、ああ、ソラもありがとう」
「ふふん! どういたしましてッス!」
ソラが柔らかく笑い、トバリが頭を上げた。
河原が椅子に座りながら、3人のやりとりを見守る。
「トバリ君達が仲良さそうでよかった」
河原がテーブルに置いてあるお茶を飲んだ。
「っと、お腹が空いたしご飯を食べに行きたいな」
「それはいいッスけど場所はどうするんスか?」
「近くの美味しそうなレストランはどうだ」
「あり!」「ありッス」
「決まるのが早いね!?」
トバリの提案に、シオンとソラが頷いた。
あまりにも早い3人の決定に、河原が苦笑いで突っ込んだ。
ーー
4人がレストランで爆食いした後、ホテルの部屋に戻ったトバリは風呂から上がった。
「この2日間で色々とあったな」
風呂から出てきたトバリは、寝巻きのジャージのチャックを上げて髪の毛をタオルで拭いた。
そのまま部屋のベッドに座ると、ドアが優しくノックされる。
「トバリ、ソラだけど入れるッスか?」
「ああ。いま開けるよ」
トバリが立ち上がり部屋の扉を開けると、寝巻き姿のソラが立っていた。
「トバリ、少しお話したいッス」
「別にいいけどお前、震えてないか?」
「……はいッス」
ソラが震えた左手でトバリの腕を掴み、強引に部屋の中へ入ってきた。
ドアがガチャリと閉まる中、ソラが右手でトバリの頬を撫でた。
「トバリが生きててよかったッス!」
「急にどうした?」
涙目のソラにトバリが戸惑う。
そのまま2人はセミダブルのベッドに座り、会話を始めた。
「今日のトライデントと戦っている時、トバリは殺されそうになったじゃないッスか」
「あ、ああ、ソラの左目が黄色に輝いた時だよな」
「うす! あの時はトバリを守りたくてがむしゃらだったッスけどね」
ソラがぎこちなく笑う。
「それでも助かったよ」
「うん! それでトバリは死ぬのが怖くなかったんスか?」
「……正直かなり怖かった。でも、お前が一瞬だけ覚醒で俺を助けてくれた時、かっこいいと思ったぞ」
「トバリもおかしいッスね」
「あのな。俺達の中でまともな人は河原さんだけだろ」
「確かに!」
トバリがため息を吐く中、ソラが微笑んだ。
「まあでも、ソラが土魔法を使えるなんてな」
「土魔法って強いんスか?」
「んー? 土魔法は防御がかなり得意で、盾役をやるには一番合う属性魔法だな」
「やったッス!」
嬉しそうなソラのテンションが上がり、トバリに抱きついた。
「おまっ!? 俺を押し倒すなよ!」
「今日くらいはご褒美でいいじゃないッスか!」
「この大型犬が!? ってお前、まさか……」
「シオンの言うとおり、トバリは抱き枕にはちょうどいいッスね」
トバリを押したソラが、幸せそうに抱きつく力を強くした。
「ですよね! じゃなくて、さっさと自分の部屋に帰れ!!」
「やだ!」
「断るの早いわ!? しかもこの姿を見られたらやばいだろ!?」
「大丈夫。トバリはおれの所有物ッス」
「抱き枕設定を引っ張るなよ……」
ソラがゆっくりと目を閉じる中、トバリは抵抗するが消耗が残っているのか力負けしている。
その後、部屋で爆睡したソラへトバリは仕方なく朝まで抱き枕にされるのだった。




