第4話・やっぱり才能関連は説明が難しいが、彼女は強いな
天馬市の外れにある山の中で、ゴブリンが出て来る洞窟を発見。
トバリはスマホを使い警察を呼ぶ要領で、天馬市の地方騎士団へ連絡。
通報を受けた地方騎士5人が30分後に到着して、トバリとシオンから情報を聞いて洞窟を見る。
「班長! 二人の言う通り中にはゴブリンがいました!」
「そうか……。少年達、通報ありがとう! それと、謝礼やドロップ品を換金してあげるよ」
「「ありがとうございます!」」
班長さんが隊員に指示を出す。
すると隊員がトラックに乗り込み、トバリへお金の入った封筒を渡す。
「未開拓のダンジョン発見の謝礼10万円。それと追加でドロップ品のお金は後で渡すよ」
「……はい。先に10万円は確認終わりました」
「おいトバリ、後で山分けだからな」
「おいこら、今はお金の話をするなよ」
苦笑いを浮かべるトバリのリュックには武器が入っており、片手剣がチャックから突き出ている。
彼の隣にいるシオンはジト目で、トバリが持つ封筒を見つめていた。
「2人とも山の中で修行するのはいいけど、ほどほどにな」
「班長さん、ありがとうございました」
「仕事だし気にしなくてもいい。私は仕事に戻るが2人は街に戻るかい?」
「「はい」」
班長が手を振りながら離れる中、トバリとシオンはお金を分けてから山を降りていく。
「これでハトバのキャラメルチョコチップがめっちゃ飲めるな」
「ああ! わたしはダークココアモカで頼むぞ」
「自分で払えよ!」
「ここは男らしく奢ってくれ!」
「やだ」
トバリは嫌そうに首を振る。
「ケチ! まあでも、トバリのおかげで今日は助かったな!」
「俺に感謝しろよ」
「ああ、ありがとう」
〈コイツが原作メインヒロインの1人、暴力系理不尽の如月トウカじゃないのはなんとなくわかったけど、コイツも別で難がありそうだな〉
素直にお礼を言うシオンに、トバリがドン引きする。
「お、おいトバリ! なんでそんな幽霊を見るような目になるんだよ!」
「なんでもない。それよりお前はいつまで俺について来るんだ?」
「気分」
「ええ……」
シオンは微笑み、トバリが唖然とする。
2人はそのまま山から降りて、徒歩20分の場所にあるショッピングモール内にある大人気チェーン店のカフェ・パートバックルで甘い飲み物を注文した。
ーー
ショッピングモール・オリーブオイルの1階にあるパートバックル、通称はハトバ。
2人席に座ったトバリとシオンはビッグサイズの飲み物を片手に会話を始めた。
「なあトバリ。お前の家族ってどんなやつなんだ?」
「普通の一般家庭で父親が営業サラリーマンをやって母親はパート、俺は中学生で弟と妹が小学生をやってるよ」
「わたしの実家とは全然違うな」
シオンはどこか辛そうに呟いた。
「家庭が違うなら当たり前だろ」
「ああ。そうなんだが、わたしの実家は日本国内でも名家と言われる如月家なんだよ」
「急に説明口調になるな!? てかお前、かなり辛そうだけど大丈夫か?」
「なんとか……」
シオンはドリンクを飲み深く息を吐いた。
「お、おう。って今更だけど、なんで俺はお前とハトバに来ているんだ?」
「わたしがトバリに興味あるからだよ」
「あ、はい。俺からしたら怖いんだけど?」
「先週の件は殴り合いはともかく、先に仕掛けたのはすまなかった!」
〈こいつ、なんでこんなに落ち着いているんだ?〉
テーブルにつくほど頭を下げるシオンに、トバリが焦ったように思考を回す。
「いや俺も大人気なく本気でやり返したから、そこまで気にしてないよ」
「ありがとう。で、トバリには悪いが、わたしの話に付き合ってくれないか?」
「お前、そこまで話したことない奴に自分のことを話すのかよ」
「これでもわたしは人を見る目があるし、トバリがわたしの話をバラしても大して得にならないだろ」
「そりゃそう」
頭を上げたシオンに、トバリは呆れたようにため息を吐く。
「だろ。それでわたしの話だが、お前は才能をどう思う?」
「あくまで個人の意見だけど複数のタイプがあると思っているよ」
「聞いてもいいか」
「もちろん。まず身長や性別、体格とかのフィジカルエリート。これに関しては生まれつきの才能でほぼ決まるな」
才能の話を始めた2人は顔を見合わせる。
「ふむふむ。つまりトバリよりガタイのいいわたしの方がフィジカルが強いんだな」
「かもな。で、二つ目は基礎スペックで最初に始めた時の飲み込みや成長率の速さ。これも土台の才能や血筋が多そうだし、覆すのは難しいぞ」
「あー……。じゃあ血筋はいいのに凡人なわたしは落ちこぼれなのか?」
不安そうに顔を上げるシオンに、トバリはため息を吐く。
「知らん。てかお前、名家で比べるより一般も含めた同世代で見ろよ」
「……え? どういうことだ?」
「簡単に言うと、その如月家ではどうか知らないけど、俺が見る限りお前は弱くないぞ」
「本当か?」
シオンの声が今にも消えそう。
その声を聞いたトバリは、真面目な顔を浮かべ言葉を返す。
「確かに二つ目の基礎スペックなら、お前は凡人かもしれない。でも俺がまだ話してない3つ目の才能、努力の才能の内容を聞いてから自分で判断しろよ」
「あ、ああ!」
少しだけ回復したシオンが、ぎこちない笑顔で頷いた。
「で、3つ目の努力の才能。これはシンプルに積み立てだな」
「と、いうと? 努力しただけ伸びるのか?」
「いや? 俺の体感だけど、質と量の掛け算だな」
「そういうことか! 貴様が言いたいのは、もっと辛い努力を死ぬほどやり込めばいいんだな!」
「ちがーう!? なんでそこに飛んだんだよ!」
顎が外れるほど突っ込むトバリに、シオンが首を傾げる。
「違うのか?」
「ああ! 質のいい努力ってのは、がむしゃらにやるんじゃなくて、なぜ修行をするのか、どう修行したら伸びやすいか、自分の適性はなんなのか理解して、それに合った修行ができるか、じゃないかな?」
「なんで途中から自信がなくなるんだ!?」
「説明するのに必死なんだよ!」
トバリは頭の中で内容を整理する。
対するシオンは優雅にドリンクを飲んでおり、軽く息を吐いた。
「もっとシンプルに敵を殴れば解決で良くないか?」
「お、おお……。んー、量だけ積むなら模擬戦や実戦をした後に反省会をして、次に活かすとかでもいいかもな」
「そうか! なら、トバリに頼みたいことがある」
「嫌な予感がするが聞きはする」
額に手を置くトバリに、シオンが満面の笑みを浮かべた。
「トバリにはわたしの訓練相手になって欲しい」
「やっぱり。お前は名家なんだから実家にいる師匠とかに習え」
「師匠はいるが、それとは別にお前と戦って上を目指したいんだよ」
「お前、なんで上を目指したいんだ?」
トバリはシオンにジト目を向ける。
シオンは少しだけ息を吐いた後、真面目な顔で言葉を返す。
「わたしは名家の娘として、結果を出したいんだよ」
「その結果って、例えばどんな感じだ?」
「例えば半年に1回行われる剣術の全国大会で優勝するとかだな」
「なるほど……。ちなみにお前はその剣術の全国大会に出たのか?」
「あ、ああ、去年に中学生の部で出たけど、最高で県予選の2回戦負けだった」
シオンは悔しそうに唇を噛んだ。
「そうか。なあシオン、俺は剣術はそこまで知らないし、近接戦闘も大して強くはないぞ」
「だろうな。でもお前は、わたしにはない視点と優しさがあるだろ」
「アホ。俺は優しくないぞ」
「なら、今のは訂正させてもらう」
ぎこちなく微笑んだシオンに、トバリがドリンクを飲む。
「そうしてくれ。でだシオン、お前はどうしたい?」
「んー? トバリ、わたしと共にシンラ学園を目指さないか?」
「……お、おお」
〈ちょおおぉ!? シンラ学園ってテスタメントソウルの舞台で、阿笠トバリが雑にダンジョンのモンスターに殺される場所じゃん! やばい、このまま頷くと、俺が死亡フラグでマジで人生退場になる〉
トバリの頬から冷たい汗が流れる。
「おいトバリ! 急に顔が真っ青になったけど大丈夫か?」
「あ、ああ、気にするな。まあでも、目指すのはいいんじゃないか?」
「そうか! なら、お前には付き合ってもらうぞ」
「……え?」
〈いや待って!? なんで取り巻き2の俺が頭のネジがなさそうなコイツに巻き込まれるんだよ!〉
固まるトバリにシオンが右手を突き出す。
「これからよろしくな」
「ちなみに断るのは?」
「ダメに決まっているだろうが」
「ですよねー」
シオンの笑顔を見たトバリが、死んだ魚のような目でぎこちなく頷く。
〈グッバイ! 俺の安定した人生様!〉
トバリは寒気を感じるのか体を震わせながら、シオンの手を取るのだった。




