36話・もう、おかわりはいらない!
ダンジョン・魚民、エリアボスの大部屋。
大きさは学校の体育館ほどあり、トバリ達は身体強化も使い全力でアクアヘビィ・フィッシャーマンへ挑んでいた。
「ぐっ! シオン!」
「はあぁ!!」
アクアヘビィが右手一本で、ソラを大盾ごと吹き飛ばす。
だがソラはすぐに立て直すと、背中を足場にしてシオンが飛んだ。
「これでも食らえ!」
シオンがアイアンカタナを振り下ろすが、アクアヘビィは槍で受け止めた後、容赦なく蹴り飛ばす。
「がはっ!? ま、まだまだ!」
吹き飛び地面を転がるシオンだが、口から唾液を吐きながら立ち上がった。
トバリが左側、河原が右側から同じタイミングでアクアヘビィに仕掛ける。
「トバリ君!」
「ええ! 通常型・サンダーボルト!!」
トバリが左手を突き出し、サンダーボルトを放つ。
雷魔法の一撃をアクアヘビィが槍でガードしようとするがすり抜けて、鎧に覆われた腹に直撃する。
「ぐおぉ!!」
「今だ!」
河原が足を踏み込み、水平斬りを放つ。
だがアクアヘビィは苦しそうにしながらも、左足の防具で河原の水平斬りを防御した。
「チッ!」
片手剣を持つ河原がすぐに下がるが、アクアヘビィは槍で薙ぎ払う。
河原は片手剣でガードするが、威力が高く吹き飛ばされた。
「狙い通り」
吹っ飛ぶ河原の目には、ゴブテツソードを捨てて右腰からソーディアを引き抜いたトバリが写っていた。
しかもトバリのソーディアの刃は赤く光っており、本人が全力で叫んだ。
「武技・ソードストライク!!」
「ゴオォ!?」
「トバリがゴブリンソードマンの技を……」
「まあな!」
トバリが高速でアクアヘビィに接近して、時計回りの回転斬りを放つ。
その一撃がアクアヘビィの右足へ直撃して、相手の足が吹き飛んだ。
「ゴオオオォ!!」
アクアヘビィが大きく咆哮して、その衝撃波でトバリも後ろに転がった。
「やっぱり倒しきれないか!」
距離をとったトバリは軽く息を吐き、落ちているゴブテツソードを左腰の鞘に戻した。
すると、左腕と右足を失ったアクアヘビィは、紫色の血を流しながら右手の槍をトバリへ向ける。
「グオッ!」
「は?」
アクアヘビィは、トバリに槍を向けたまま片膝をついた。
その目はかなり真剣で、軽く頭を下げる。
「何が狙いなんだ?」
「わからない。でも、トバリ君をガン見しているね」
なんとか復帰した河原がトバリの隣に立つ。
シオンとソラは軽く首を振り、痛む体を強引に動かした。
「グオオォォ!!」
「あー、例えば、トドメは俺に刺して欲しいとか?」
「グオッ!?」
トバリはニヤリと笑うと、アクアヘビィが全力で首を横に振った。
「た、たぶん、違うと思うよ」
「ですよね。河原さんはどう思いますか?」
「んー。オレの予想だけど、一騎打ちの申し出とかじゃない?」
「グオッ!!」
河原が戸惑う中、トバリは軽く息を吐いた。
すると河原の一言へ、アクアヘビィが全力で頷く。
「なるほど……。魔物ってそんな人間臭いんですか?」
「雑魚はともかく、強い奴にはたまに出る行動だよ」
「ふむ。シオン、ソラ、お前らは少し休んでいて欲しい!!」
「「ええ!?」」
壁際に移動したシオンとソラが唖然とする中、河原がトバリの肩を軽く叩く。
「トバリ君、鍛錬の成果を見せる時だね」
「ええ」
〈しっかし、裏で練習していたソードストライクがやっと使えるようになってよかった〉
河原が笑顔で離れていく中、トバリはアクアヘビィと一定の距離を取る。
左腕と右足を失ったアクアヘビィは、左足で立ち上がり右手に持つ槍を構えた。
「グオオォォ」
アクアヘビィがトバリに一礼した後、槍の切先を向ける。
トバリもソーディアを右手に持ち、中段に構えた。
「行くぞ!」
「ゴオォ!!」
互いに踏み込み、フィールドの中央でぶつかる。
アクアヘビィの突きをしゃがんで回避したトバリは、そのまま切り上げを放つ。
だが、アクアヘビィはすぐさま反応して左足でバックステップを踏み、浅く切り裂かれる程度で済ませた。
「トバリ、もっと踏み込め!!」
「すでにやっとるわ、シオン!」
壁際にいるシオンの指摘にトバリが叫び返す。
アクアヘビィはニヤリと笑い、体勢を立て直した後に槍の棒の部分で横薙ぎを放つ。
その一撃に対してトバリは、ソーディアで防御するが威力がかなり高く宙を舞う。
「雷の翼!!」
空中に舞うトバリは背中にコウモリに似た金色の翼を生やして、空中で体勢を立て直す。
対するアクアヘビィはニヤリと笑い、地面に着地したトバリを槍で狙う。
「ゴオォ!!」
「やっぱりそう来るよな!」
アクアヘビィの突きへ、トバリが冷や汗を流す。
その一撃に対して、トバリは右でサイドステップしながら左手を向ける。
「通常型・サンダーボルト!!」
「グオオォォ!?」
トバリが放ったサンダーボルトが、アクアヘビィの鎧の腹に直撃した。
そのまま左膝をつくアクアヘビィへ、トバリが全力で踏み込む。
その時、ソーディアに強力な雷を纏わせ、トバリが叫んだ。
「元素技・紫電一閃!!」
「グオッ!」
アクアヘビィは運命を受け入れたのか、静かに目を閉じた。
トバリの雷のまとった水平斬りが、アクアヘビィの首を綺麗に切り飛ばす。
〈勝てた、のか?〉
息を荒くするトバリはソーディアを軽く振り、後ろに振り返る。
すると槍を手放していたアクアヘビィが、グッドサインをしながら地面に倒れた。
「と、トバリが勝ったのか?」
「そうみたいだね。ただ、監督者としてはかなりヒヤヒヤしたよ」
「もしトバリがやばかったら、河原さんが入るつもりだったんスか?」
「もちろん」
壁際にいる3人がへたり込んだトバリへ近づく。
地面に倒れたアクアヘビィが紫色の煙になって消えて、ドロップ品と白銀の槍を残した。
「お前ら、待っていてくれてありがとう」
「そりゃいいけど、トバリはまた1人で美味しいところを持って行ったな!」
「ああ、ご馳走様でした」
「ったく! わたし達が前座みたいじゃん!」
頬を膨らませるシオンへ、トバリが軽く息を吐く。
「まあでも、ワンランク上のエリアボスを倒せたのは君達の成長だよ」
「「「はい! ありがとうございます」」」
アクアヘビィの槍やドロップ品を回収した河原が、笑顔を浮かべた。
トバリ達が立ち上がり河原へ一礼する中、急に大部屋の奥の壁がガコリと開く。
「「「「……え?」」」」
4人が奥を見ると、そこにはトライデントっぽい槍を持つ3匹の魚人が現れた。
装備は固そうなスケイルアーマー系で、大きさは2.5メートルほどの青い鱗を持つ相手で、トバリ達を睨んでいる。
「あ、うん、アイツらが普通のエリアボスだね」
「なるほど……。で、噂のトライデントシャーマンが出てきましたが、どうしますか?」
「倒すに決まっているだろ」
「うん! 今度こそおれ達の出番ッス!」
「「ですよね!」」
やる気満々で武器を構えるシオンとソラへ、トバリと河原が突っ込んだ。
現れたトライデントシャーマン3匹は、槍の切先をトバリ達へ向けるのだった。




