35話・あれ?なんかボスが違うくないか?やっぱり違うよな!?
ナバールリゾート施設から徒歩30分の場所にある、ダンジョン・魚民。
洞窟タイプのダンジョンで、トバリ達は地図片手に朝の9時半から奥へ潜っていく。
「洞窟ダンジョンの割に高速道路のトンネルくらい広くないか?」
「かもね。っと、魔物が出てきたよ!」
「「「はい!」」」
大盾を持つソラを先頭に歩いていると、洞窟にある穴から1.2メートルほどの青い肌を持つ魚人が現れた。
武器はサーベルで背中にはヒレがあり、現れた魔物・サバジン5匹がトバリ達へ武器を向ける。
「あいつらが噂のサバジンですね!」
「そうそう! たぶん、今の君たちなら余裕で倒せると思うよ」
「……すでにソラとシオンが突っ込みましたよ」
「あ、うん、せっかく目を逸らしていたんだけど!」
頬を引きつらせる河原をよそに、トバリがため息を吐く。
2人の前にはリュックを置いて武器を構えたシオンとソラが、笑顔で突っ込んで行く。
「「「「「ギャキャ!?」」」」」
「「最高!!」」
ソラが中央のサバジンのサーベルを大盾で弾き飛ばした後、金属メイスで頭をかち割った。
その動きに合わせて、他の4匹のサバジンがソラに向けてサーベルで斬りかかる。
「貴様ら、わたしを忘れるなよ!」
右側のサバジン2匹をシオンがアイアンカタナで真っ二つに切り裂く。
残った2匹はソラがメイスで殴り潰し、5匹のサバジンは紫色の煙になり、武器とドロップ品を残して消えた。
「サバジンってそこまで強くないのか?」
「んー、サバジン自体は普通のゴブリンより少し強いくらいだけど、あの2人の腕がいいから無傷で倒せたんだよ」
「そうなんですね」
戦闘終わり。
河原がトバリの肩を優しく叩いた。
「トバリ君が人を頼るのは苦手かもしれないが、あの2人は弱者じゃないから大丈夫だよ」
「……はい」
〈本当の弱者はあいつらじゃない。俺なんだよな〉
額に手を置くトバリへ、ソラとシオンが微笑んだ。
「トバリ! ドロップ品を拾うのを手伝ってくれ!」
「はいはい。お前ら、派手に暴れたのはいいけど体力は使いすぎるなよ」
「「もちろん!!」」
リュックを拾い直した2人は、地面に落ちたドロップ品を回収する。
トバリはサバジンのサーベルを律儀に落ちている鞘へ戻し、河原の大型バックパックへ差し込んでいく。
「あ、うん、トバリ君。おれは荷物持ちかい?」
「一番効率がいいんでよろしくお願いします」
「ええ!?」
真顔で5本のサーベルをバックパックに入れたトバリは、そのまま河原へ背負ってもらう。
「こっちも回収が終わったッスよ」
「ああ! 奥に行くぞ」
「おう!」「うす!」「あ、ああ」
トバリの一言に、シオンとソラは元気よく、河原が苦笑いを浮かべた。
そのまま4人は雑魚のサバジンや、上位種のスイサバジンを倒しながら奥へ進んでいく。
ーー
ダンジョン・魚民に入ってから約3時間半後の13時。
昼食休憩も終わり、4人はリュックや大型のバックパックを背負い直し、目の前にある石製の大きな扉の前に立つ。
近くの広場には他に冒険者・傭兵チームがおり、大規模戦闘の準備を整えていた。
「すみません。次は自分達の番でいいですよね」
「ああ! 角刈りの兄さんもお守りを頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
河原がスキンヘッドの傭兵に頭を下げた後、4人は石の扉を開けた。
すると、中にはコイみたいな顔に黒っぽい鱗を持つ3メートルほどの分厚い鎧を着た大きな魚人が、右手に持つ白銀の槍を構えていた。
「「「「……え?」」」」
トバリ達は予想外の敵に口を大きく開けた。
そのまま石扉が閉まり、ガチャリと音が鳴る。
「あ、あの、河原さん。アイツは噂に聞いていたトライデントシャーマンではないですよね!?」
「おそらくアイツは、ワンランク上のボス・アクアヘビィ・フィッシャーマンだ」
「ほう? つまりわたし達は当たりを引いたんだな」
「さ、さあ? って、攻撃が来るよ!」
4人はすぐさま壁際に荷物を置いた後、武器を抜刀する。
相手のアクアヘビィは、槍を両手で持ちクルクルと回し始めた。
「コオオォ!!」
「通常のサンダーボルト!!」
「ゴオォ!?」
槍を回してやる気満々のアクアヘビィに対して、トバリが容赦なく雷魔法のサンダーボルトを当てた。
トバリのやり方に、シオンやソラが苦笑いを浮かべる。
「トバリはいつも通りだな」
「ああ! 相手は麻痺が入ったし倒すぞ」
「「「おう!!」」」
片膝をついて体からバチバチと音がするアクアヘビィに対して、トバリ達は全力で斬りかかる。
先頭はソラで片膝をついているアクアヘビィへシールドタックルを仕掛けた。
「これでも食らえッス!」
ソラのシールドチャージがアクアヘビィの頭に直撃するが、相手は頭突きで弾き返した。
そのままソラは尻餅をつくが、すぐに起き上がりバックステップを踏んだ。
「ゴオォ!!」
「集中型のサンダーボルト!!」
「ごがっ!?」
ソラが離れた隙に、トバリが2発目のサンダーボルトを放つ。
今回は集中型でアクアヘビィの左肩を貫き、左腕を地面に落とした。
〈やっぱり予想外は起きたけど、これなら勝てる!!〉
トバリがニヤリと笑う中、片腕を落としたアクアヘビィが周りに咆哮を上げた。
「グオオォォ!!」
「チッ!」
斬りかかろうとしていたシオンと河原はすぐに後ろに下がる。
「トバリ君、魔力に余裕はあるかい!」
「もちろんありますよ」
少しズレた黒縁メガネを直したトバリは、軽く息を吐いた。
〈さて、どう勝つかだな〉
最初はトバリ達有利だが、アクアヘビィは右手一本で槍を持ち、やる気満々で鋭い目を浮かべるのだった。




