37話・……覚醒者?まじかよ
ダンジョン・魚民、エリアボスの大部屋。
奥から現れたトライデントシャーマン3体が、ゆっくりと槍を構え直す。
トバリは冷や汗を流しながら、シオンとソラの手を掴み河原と共に出入り口付近へ下がった。
「河原さん、逃げますか?」
「そうしたいのは山々だけど、シオンさんとソラさんはどうしたい?」
「ぶっ倒したい!」「叩き潰したいッス!」
「「だよね!」」
余裕そうに歩くトライデント達へ、トバリが苦笑いを浮かべる。
「お前ら相手はソードマンと互角くらいの相手なんだぞ! ここは逃げるのもいいだろ!」
「逃げた方がいいのはわたしでもわかる! でもなトバリ、ここで引くのは面白くないんだよ!」
「今回に関してはシオンと同じ気持ちッス!」
「2人とも、命がかかっているのに何を言っているんだ!?」
河原が珍しくキレ気味で叫ぶと、ソラとシオンがぎこちない笑みを作った。
「河原さん、わたしもソラもトバリの足手纏いにはなりたくないんだよ」
「うす!」
「……わかった。危険ならすぐに逃げるからね」
「「はい!!」」「ええ!?」
2人が頷き、トバリがドン引きする。
準備運動を終わらせたトライデント3体は、槍を突き出し容赦なく突っ込んできた。
「ああもう、拡散型・サンダーボルト!!」
「「「グオオォォ!?」」」
「おお! トバリ、麻痺をありがとうッス!」
トバリが2人から手を離して、雷魔法でトライデント達に麻痺を与えた。
動きが鈍ったトライデントの攻撃を回避した4人は身体強化を発動してから武器を抜き斬りかかる。
「武技・アースクエイク!!」
「武技・ソードストライク!!」
「武技・戦華!!」
「武技・ハヤブサアーク!!」
ソラがメイスを茶色へ光らせ、トバリがソーディアを赤く光らせ、シオンがアイアンカタナを青白く光らせ、河原が片手剣のアイアンソードを黄色に光らせ、そのままトライデント3匹を狙う。
だが一番左のトライデントは槍で、ソラのメイスを防御して弾く。
「いける!」
トバリがすぐにカバーへ入り、ソラをうまく使い斜めからソードストライクで攻撃する。
だが左のトライデントは、ソードストライクをしゃがんで回避して、真ん中のトライデントがトバリへ向けて槍を突き出す。
「ぐっ!?」
「トバリ!」
トバリが顔を逸らして直撃は避けるが、槍が頬を掠った。
ソラはすぐに大盾で真ん中のトライデントを殴るが、そこまで効いていないのか、すぐに顔を上げた。
「トバリ君、ソラさん、悪いけどそっちは頼むよ!」
「無茶言いますね!?」
対する河原とシオンは、右側にいるトライデントに対して武技を使ったが、槍で弾かれたのか後退した。
「ソラ、少し下がるぞ!」
「はいッス!」
ソラが真ん中のトライデントの槍を気合いで弾いた後、トバリと共に左後ろへ下がる。
真ん中と左のトライデントがすぐさま、槍を突き出し2人へ突進を仕掛けた。
「悪いが読み通りだ!」
背を向けていたトバリが振り返り、左手をトライデントへ向ける。
「連射型・サンダーボルト!!」
「「グオッ!?」」
トバリが左手から複数のサンダーボルトの雷を出し、追いかけてくるトライデント2体へ攻撃する。
その動きに隣にいるソラが、トバリへ語りかけた。
「それが出来るなら早くやった方がいいじゃないッスか!」
「お、お前な! サンダーボルトの連続撃ちは魔力をかなり使うんだぞ!?」
トバリは連射型のサンダーボルトを20発ほど放ち、顔を真っ青にしている。
雷魔法の連打を受けたトライデントだが、前にいたやつが両膝をついて倒れた。
「い、1匹は倒せたけど!」
紫色の煙になって消えたトライデントの後ろにいたもう1匹が、麻痺はあるがほぼダメージなしで突っ込んできた。
「ぐっ!?」
「トバリ! 武技・シールドガード!!」
足をもたつかせたトバリを庇うようにソラが前に立ち腰を落として大盾を構えた。
トライデントの槍がソラの大盾とぶつかり、鈍い音が大部屋内に響く。
「ぐうぅ! ま、負けないッス!」
「ソラ!」
「トバリを助けるのはおれッスよ!!」
ソラはメイスを捨てて大盾を両手で持つ。
だがトライデントは容赦なく、突きをやめ槍を引いた。
「え?」
前のめりになるソラへ、トライデントが槍で横薙ぎを放つ。
その一撃が体勢を崩したソラの大盾に当たり、彼女は後ろに吹き飛んだ。
「ソラ! トバリ、早く援護しろ!」
「わかっているけど!!」
もう1匹のトライデントと戦闘するシオンが叫ぶが、トバリは魔力をかなり消費しており、立つのが精一杯になっている。
それを見たトライデントがギリギリ立っているトバリへ槍を向けた。
「ははっ、ここで死ぬかもな。でも……」
トバリは気合いでソーディアを握るが、頬からは血を流す。
トライデントがトバリへトドメを刺そうとした時、地面が揺れた。
「トバリを守るのはおれッス!!!!」
「……え?」
歯を食いしばり立ち上がったソラは、大盾に土を纏わせ全力で突進をする。
その時、ソラは両目ではなく左目だけ黄色に変化して光っていた。
「土の覚醒者……」
トバリが呟く中、トライデントが大きく吹き飛ばされる。
そのままソラが荒い息を吐き、トバリへ微笑んだ。
「トバリ、無事ッスか?」
「ああ。っと、少しは回復したし、あいつをもらうぞ」
「了解ッス!」
ソラの左目が黄色から黒に戻り、トバリに肩を貸した。
「ソラ、あいつに勝つぞ!」
「うす!」
トバリとソラが深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後、立ち上がったトライデントへ勢いよく突っ込む。
対するシオンと河原組は、手堅くトライデントとやり合っている。
「武技・戦華!!」
「グオオォォ!?」
「よし! シオンさん、このまま倒しきるぞ」
「ああ!」
シオンの一撃が、ついにトライデントの左腕を切断した。
河原がニヤリと笑い、右手の片手剣をトライデントの腹に突き刺す。
「グオオォォ!?」
河原はあえて腹に刺さっている片手剣から手を離し、腰に装備している短剣を引き抜く。
「やっぱり一筋縄ではいかないね!」
河原が冷や汗を流しつつ、トバリ達の方をチラッと見る。
「向こうもギリギリみたいだな……」
息を吐く河原が見る先には、必死な形相でトライデントと戦うトバリとソラがいた。
「「くたばれ!!」」
トバリの振り下ろしがトライデントの槍に弾かれるが、右からソラが拾ったメイスで腹を強打する。
「グオオォォ!?」
叫び声を上げるトライデントに対して、トバリとソラは後ろに下がり息を整える。
「トバリ! 魔力的に雷魔法や武技とか使えるッスか!」
「いけるけど多くて3発が限界だぞ!!」
「充分ッス!」
ニヤリと笑うソラへ、トバリがジト目を向けながら頬を緩めるのだった。




