31話・新しい出会い?
午後の13時半過ぎ、納豆県にあるナバールリゾートの大型プール施設。
シオンとソラ、そして河原が海水浴を楽しむ中、トバリは1人で大型プール施設に来ていた。
〈なんで海水浴場の隣にプール施設があるんだよ!?〉
トバリは首を傾げつつも、トランクスとパーカー、頭にはゴーグルをつけて男子更衣室の外に出た。
そのまま財布を防水袋に入れてから、シャワーを浴びてプールエリアへ向かう。
「……え? デカくね?」
トバリが目を見開きながら周りを見渡す。
そこは4階建ての建物に匹敵する巨大ウォータースライダーや、流れるプール、一定の水が溜まると下の屋根に落ちてスプラッシュするバケツ、他にも温水プールや室内プールまで完備されていた。
トバリは唖然とする中、施設内にあるお店でレモン味のかき氷を購入して近くのベンチに座る。
「うんまー! やっぱり暑い日のかき氷は最高だな!」
トバリは顔につけている黒縁眼鏡を直した後、ストロースプーンでかき氷を食べていく。
その時、近くを歩いていた中学生が足を滑らせた。
「あ!」
「え? がっ!?」
トバリは近くで中性的な声が聞こえたので振り向くと、顔面にブルーハワイのかき氷が飛んできた。
「は?」
かき氷が入った器がコトリと地面に落ちた。
トバリの顔面はかき氷だらけで、眼鏡がドロドロになる。
「ああ!? ごめんなさい!」
中性的な中学生が、トバリに近づき頭を下げた。
眼鏡を外したトバリはボヤけた目で、言葉を返す。
「と、とりあえず、係の人を呼んでここを片付けてもらおうか」
「は、はい! ボクが呼んできますね」
「俺は顔を洗ってくるし頼んだよ」
「わかりました!」
トバリが立ち上がる中、中学生が係の人を呼びに行った。
「食べかけのかき氷はどうしよう」
黒縁の眼鏡をパーカーのポケットに入れたトバリは、レモン味のかき氷を食べながらシャワー室へ足を進めた。
ーー
20分後。
体と眼鏡を洗ったトバリは、視界が戻りプールエリアへ戻った。
すると青髪ボブカットの中性的な中学生が、トバリを見て申し訳なさそうに頭を下げる。
「あ、あの眼鏡さん。先程はすみませんでした!」
「気にしてはいるけど、わざとではないんだよね」
「ええ」
中性的な中学生は黒いパーカーに赤いトランクスタイプの水着姿で、トバリは首を傾げる。
〈この人の性別がわからない〉
青髪の中学生が頭を下げ続ける中、トバリがため息を吐く。
「下手に頭を下げられると目立つから、今は話し合わないか?」
「は、はい!」
〈なっ!? こ、この人、瞳の色が青い……〉
顔を上げた中学生にトバリが口を大きく開ける。
「あの眼鏡さん、ボクの顔に何かついてますか?」
「い、いや、なんでもない。それより君に怪我はないか?」
「大丈夫! ボクは水属性の覚醒者なので、足の怪我は治せました!」
「お、おう、ならよかった」
苦笑いを浮かべるトバリに、少し小柄な中学生が軽く微笑んだ。
「ありがとうございます! そ、その眼鏡さん、先程聞いたお話ってなんですか?」
「あ、ああ、君の瞳の色が気になったんだよ」
「……なるほど」
〈実際は後付けで話したい内容は、かき氷の片付けとかでもう終わっているんだよな〉
露骨に目を逸らすトバリへ、青髪ボブが頷いた。
プールエリアには多くのお客さんがおり、2人がいる屋台エリアではホットドッグとドリンクセットやかき氷が売れている。
トバリは近くのベンチに座り、青髪ボブが真顔で隣に座った。
「眼鏡さんはボクの瞳がどう気になったんですか?」
「いや、すでに君が水魔法の覚醒者と言っていたし、謎は解けたよ」
「ふーん? あの、眼鏡さんも体つきからして鍛えてますよね?」
「……かもな」
目を逸らすトバリへ、青髪ボブが息を吐く。
「出会ったばかりで名前を聞くのは失礼かもですが、アナタは?」
「悪いけど、名前を聞く時は自分から名乗るのがルールじゃないか」
「ああ! では、ボクは近衛スイレン、中2になります」
「近衛……?」
〈確か原作のテスタメントソウルでも、名前が近衛のキャラはいたよな〉
トバリが口元に手を置くと、近衛が不思議そうに首を傾げる。
「どうされました?」
「い、いや、近衛さんはしっかりしているし、いいところの方かな、と思っただけだ」
「へえー? でも眼鏡さんも大人ですよね」
「これでも28歳だしな!」
「なるほど! 眼鏡さんは冗談も言えるんですね」
〈おおう。やっぱり、俺が28歳なのはネタに聞こえるんだな〉
ショックを受けるトバリに、スイレンが自分の頬に手を置いた。
「それで眼鏡さんのお名前は?」
「阿笠トバリ、中2だ」
「おお、阿笠さんですね! っと、つかぬことをお聞きしますが、阿笠さんはなぜ鍛えているんですか?」
「んー。なんて言えばいいかな……」
トバリが腕を組み、悩み始めた。
その姿にスイレンは、どこか不思議そうに目をトバリへ向け続ける。
「ボクに言えないことでしょうか?」
「そもそも初対面の相手に話してもいいのか悩むんだよ」
「別にいいですよ! それにお詫びに屋台で食べ物や飲み物を買ってきますね!」
「ええ!?」
〈近衛さん、俺と長話する気じゃん〉
自分の財布片手に立ち上がった近衛にトバリが唖然とした。
そのまま近衛が食べ物や飲み物を買いに行く中、トバリはベンチから立ち上がり、近くのテーブル席に移動する。
「まーた、変なやつに絡まれた気がする」
トバリが死んだ目で空で輝く太陽を見た後、軽くため息を吐いた。
少しして近衛がホットドッグとポテト、飲み物を2人分乗せたトレイを持ってくる。
「お待たせしました!」
「ああ、ありがとう」
「いえいえ! 迷惑をかけたお詫びですよ」
ニコリと笑う近衛がトレイをテーブルに置いた。
すると近衛が急に、トバリの体を下から上までジッと見る。
「ふむ。阿笠さんは面白そうですね」
「あ、はい」
〈あれ? そのセリフは他のやつからも聞いた気がする〉
近衛の含みのある笑みへ、トバリがドン引きするのだった。




