30話・ナーバルリゾートだぁ!!
納豆県にあるナバールリゾートへ行く当日、7月下旬の火曜日。
朝8時に集まった4人はレンタカーのワンボックスカーに乗り込み、高速を含めて片道3時間で隣の納豆県の沿岸部にあるナバールリゾートに到着した。
「やっとついた!!」
「ねえシオン。あんだけお尻を痛がっていたのに今は平気なんスか?」
「ふふん! 昨日、母上から特別に回復ポーションをもらって、それで今はあんまり痛くないんだよ」
「な、なるほどッス」
「2人とも、早くホテルに荷物を置きに行くぞ」
「「はい!」」
河原の一言でシオンとソラも車から降りた。
先にトランクを開けていたトバリは、頬をひきつらせた。
〈4人分のフル装備や荷物があるのはわかるけど、よく積み込めたな〉
トバリは自分の大型リュックを背負い、着替えや必要品の入った別の大きなカバンを肩にかける。
すると車から降りてきたシオンとソラがトランクの方へ現れた。
「なあトバリ。わたしの荷物を少し持ってくれないか?」
「やだ。お前は今の俺の姿を見てわからないのかよ!」
「冗談だ」
イタズラ小僧のような笑みを浮かべるシオンへ、トバリがため息を吐く。
そのまま4人はかなり大きなホテルのナバールリゾート・アクアランスの1階エントランスへ入り、受付に向かう。
「すみません。予約していた河原です」
「河原様ですね! ……確認が終わりました!」
「ありがとうございます!」
受付の女性が微笑み、ホテルの簡易ルール説明をした後に部屋の鍵を渡してきた。
トバリ達は1人ずつ鍵を受け取り、エレベーターに乗り込む。
「12階か……」
「高い部屋が取れてよかったです」
「それはいいんだがトバリ君、1人1泊3万円もよくかけたね」
「たまには贅沢したいんですよ」
シオンの追加金も含めて40万円を持つトバリは、ニヤリと笑う。
エレベーターから見える海岸の景色に、シオンとソラが目を輝かせる。
「おおお! さすがナバールリゾートのビーチはすごいッスね」
「アナタは子供か!」
「おれは子供ッスよ」
「まあまあ。他にも遊園地や巨大プール施設、ショッピングモールにダンジョンもあるらしいぞ」
「最後だけおかしく感じるのはオレだけかな?」
「「「さあ?」」」
トバリがパンフレット片手にリゾート内の地図を見る中、河原が頬をひきつらせた。
「あ、うん。それでメインのダンジョンに行くのは明日の朝でいいんだよね」
「はい。河原さんには俺達がダンジョンに入れるように許可取りもお願いします」
「丸投げ!? 君たちもダンジョン管理所に行くんだよ」
「「「はい!」」」
河原のツッコミに、トバリ達は頷いた。
エレベーターは12階に到着して、大荷物の4人は頑張って部屋の前まで運んだ。
「じゃあ部屋に荷物を置いたらすぐに外へ出てきてね」
「「「わかりました!」」」
息を整えた河原の指示に3人は軽く頷いた。
トバリは1205室に入ると、中は8畳ほどの部屋で窓の外から綺麗な海が見えた。
「最高!」
床に荷物を置いたトバリは、腰のベルトにゴブテツソードを装備しながら窓の外を見る。
〈久しぶりにリゾートのホテルに来たけど、ここはすごいな〉
部屋の中は清潔なセミダブルのベッドに備え付けのテレビや冷蔵庫がある。
しかもユニットバスは大きな風呂もあり、トバリは個室を軽く確認した後、河原の言葉を思い出してカードキーと財布を持って外に出た。
「……あれ?」
トバリが廊下に出るが、誰もいなかった。
少し待っていると、シオンとソラが同じタイミングで部屋から出てくる。
「ふふん! 新しい装備はどう?」
「おれも防具に着替えてきたッス」
「いやあの、ダンジョンに行くのは明日だよね!?」
唖然とするトバリの元に、最後に出てきたのはゴツい金属鎧一式に片手剣と盾を装備した河原だった。
「みんな揃ったな」
「いやなんで河原さんまでフル装備なんだよ!?」
「そりゃ許可を貰いにダンジョン管理所へ行くなら装備を着るだろ」
「私服に片手剣の俺がおかしいのかな?」
「「「うん!」」」
「……あ、はい」
真顔で頷く3人へトバリが目を逸らした。
そのまま河原を先頭にトバリ達は、ホテルを出てダンジョン管理所へ向かう。
ーー
ナバールリゾート近くにあるダンジョン管理所。
リゾートや周辺のダンジョンを管理しており、かなり大きな高層ビル。
ビルの外壁が太陽の光で反射する中、トバリ達は建物の中へ入る。
〈ひっろ!? 前に天馬市にあるダンジョン省庁の支部には行ったことはあるけど、リアルの管理所ってこんなところなんだな〉
1階のエントランスを見渡すトバリを、ソラがニコリと微笑む。
「ほーらトバリ。早く受付に向かうッスよ」
「あ、おい、俺の手を引っ張るな!?」
「おいソラ! なんでお前がトバリを引っ張っているんだ?」
「リードみたいなもんスよ!」
「「「いや、違うだろ!?」」」
トバリ達が突っ込むが、ソラは楽しそうに微笑んだ。
「あのソラ。いつまで俺の手を握っているんだ?」
「トバリが迷子にならないように当分は手を繋ぐッス」
「俺は犬かなんかかよ!?」
「犬はおれッス!」
ビル内では装備を着た冒険者や傭兵達が、テーブル席に座り打ち合わせをしている。
その中、河原の案内で3人は3階にある人材管理課へ向かった。
〈ほんとソラも元気でいいよな〉
エレベーターに乗り込んだトバリが頬を歪める中、隣にいるソラが目を光らせた。
その姿にシオンが不満げに頬を膨らませ、河原が苦笑いを浮かべる。
「青春はいいな」
河原の呟いたタイミングでエレベーターのドアが開いたので、4人は降りて人材管理課へ足を進める。
〈まあでも、これで初めてこの世界のダンジョンへ入れそうだな〉
どこか嬉しそうにトバリが軽く微笑んだ。
その後、受付の前にたった河原が女性担当者へ声をかけた。
「失礼します。整理券をいただけますか?」
「はい! 今は空いているので、隣の機械で整理券を取ったらすぐに案内できますよ」
「ありがとうございます」
一礼した河原が整理券を取ると、ピンポンと音が鳴り係の人が席の前で手を挙げた。
「5番テーブルにどうぞ」
軽く頭を下げた女性担当者にトバリ達も一礼した後、5番テーブルに向かった。
「担当の高橋です」
「河原です」
「河原さんは騎士の免許持ちなんですね」
「ええ」
河原は財布から騎士免許を取り出しテーブルに置いた。
30代後半のスーツ姿の高橋は軽く確認した後、隣にある機械に入れてパソコンで確認する。
「確認しました! それで本日はどのような要件でしょうか?」
「後ろにいる3人とナバールダンジョンに入りたい」
「ふむ。河原さんは騎士免許保持者1人につき、同行者は3人までとなりますが、ご存じでしょうか?」
「もちろんです。あとは何かあっても基本的には自己責任ですよね」
「はい。ただ、全てではなく緊急時の対応はさせていただきますよ」
高橋の説明に河原が真顔で頷いた。
「わかりました。では、後ろにいる3人の特別許可をお願いしますね」
「はい。では、お名前や書類の確認をしてくださいね」
河原の後ろの席に座るトバリ達は、高橋から受け取った書類の内容を飲み込み、名前のところにサインした。
〈ほんと河原さんが騎士免許持ちでよかった〉
トバリはどこか嬉しそうに息を吐きつつ、高橋の説明をしっかり聞いていくのだった。




