29話・普通にショッピングだけど、なんか大変だわ!
来週の火曜日にナバールリゾートに行く計画を立てた数日後の土曜日。
7月下旬の真夏の日差しが強い中、しんどそうな顔をした河原がトバリ達を乗せて大型ショッピングタウン・エアロの駐車場に車を停めていた。
「本当に親御さんから許可が取れるとは……」
「河原さんが元地方騎士かつ、如月家の関係者のおかげですよ」
「そうなんだけどトバリ君はギリギリを狙ったね!?」
「はい!」
朝の10時のエアロ。
トバリは助手席で笑顔で頷いた。
後部座席にいるシオンとソラは、楽しそうに話し始めた。
「天馬市のエアロはやっぱり大きいッスね」
「ああ。それでソラはエアロで何を買うつもりだ?」
「おれは新しい水着や服、それと日焼け止めや泳ぐのに必要な道具ッス」
「ふむ。わたしも似たものを買うつもりだぞ!」
「……え?」
ソラはシオンを見て固まった。
「おい!? なんでそこで頷かないんだよ」
「かわいそう」
「何が可哀想だ!? 貴様はわたしを煽って楽しいのか!」
「はいッス!」
「うぐっ!?」
悔しそうに唇を噛むシオンへ、ソラが頷いた。
「2人とも、いくぞ」
「「は、はい!」」
「トバリ君、君はなぜ冷静なんだい?」
「いやだって、2人とも女性らしくないもん」
「「は?」」
トバリがシートベルトを外して外に出る中、シオンがジト目を浮かべ、ソラが嬉しそうに笑った。
車を降りた4人は店内に向かって歩いていく。
「おいトバリ! わたしのどこか女らしくないんだよ!」
「自分で考えろ。逆にソラはなんで笑顔なんだ?」
「おれは、女と言われるより漢らしいの方が好きなんだよ」
「お、おう、そうか……」
河原が先頭で、その後ろに3人がついていく。
「き、君達は、ほんと変わっているね」
「「「はい!」」」
「自覚があるのがタチ悪いよ!?」
全力で突っ込む河原をよそに、トバリが考え込むように口元に手を置く。
〈しっかし、俺が見た目は美少女な2人やお兄さんと共に買い物に来ることになるとは。てか、普通に考えて、荷物持ち確定だよな〉
渋い顔をするトバリへ、シオンがニヤリと笑う。
「トバリはエアロで何を買うつもりだ?」
「んー。ゴーグルや海パン、日焼け止めや必要品かな」
「じゃあ、わたし達と共に来れるな」
「いえ、結構です!」
「なんでだ!?」「なんでッスか!」
トバリが首を横に振ると、シオンとソラが口を大きく開けた。
可哀想な女子2人の姿を振り向いて見た河原が苦笑いを浮かべる。
「と、トバリ君、青春を楽しんだ方がいいよ」
「青春って胃が痛い物なんですか?」
「ごめん! オレが悪かった!」
河原が露骨に目を逸らし、シオンとソラがトバリへジト目を向けた。
「トバリはわたしとソラをどう思っているんだ?」
「シオンはじゃじゃ馬なバカ娘、ソラはメスガキ系の大型犬だな」
「「ええ!?」」
「あー……」
トバリの評価に2人は驚き、河原が軽く頷いた。
そのまま4人は揉めながら、大型ショッピングタウン・エアロの建物内へ入っていく。
ーー
大型ショッピングタウン・エアロの建物に入って1時間半後の11時半。
水着店の近くのソファでトバリと河原が、死んだ魚のような目を浮かべて座っていた。
「なあトバリ君。なんで娘じゃないのにおれが女子中学生の買い物に付き合っているんだろう?」
「知りません。てか、俺も割とダメージを受けてますよ」
2人の近くには買い物袋が複数あり、互いにため息を吐く。
「ごめん。そういや、トバリ君の誕生日はいつだい?」
「4月10日なのでもう終わってますよ」
「は、早いね」
「まあでも、今年で28歳になりました」
「そのネタはまだ続けるんだね!?」
〈ネタじゃなくて本当なんだけど、もうネタみたいになってきたな〉
河原のツッコミにトバリが頷く。
するとソラとシオンが水着店から出てきたが、互いにダメージを受けており沈んでいる。
「お、おいお前ら、何があったんだ?」
「いやなトバリ。店員さんから同情の目を向けられたんだよ」
「おれは店員さんに運動部の女子高校生と勘違いされた」
「「ハァ……」」
沈んだ顔を浮かべる2人の手元には紙袋がある。
トバリと河原は同じタイミングで顔を見合わせた後に、立ち上がった。
「な、何はともあれ、ある程度の物は買ったからお昼を食べに行こうぜ!」
「トバリ、無理にテンションを上げなくてもいいぞ」
「あ、はい、ごめんなさい……」
申し訳なさそうに謝るトバリへ、シオンとソラがため息を吐く。
「それとトバリ、まだ買い忘れている物があるぞ」
「え?」
「今回行くところはダンジョンリゾートッスよね」
「ああ! 潜るためのアイテムとかを買いに行くんだな」
「「そういうこと!!」」
トバリの一言に、2人は頷いた。
中学生3人のやり取りを聞いていた河原は、しんどそうに口を大きく開けた。
「保護者の立場も考えてくれ」
「ダンジョンに入るには河原さんがいれば問題ないですよね」
「それはそうなんだが、オレが元地方騎士なのを上手く悪用してないか?」
「「「もちろんです!!」」」
「君たちは認めるのが早いよ!?」
河原が頭を抱える中、トバリ達は笑顔で頷いた。
その後、自腹で必要なアイテムを購入してからワンボックスカーに荷物を乗せる。
「「「ギリギリ乗った!!」」」
「ほんとギリギリだよ!?」
一番後ろの席を倒してトランク側にしてやっと荷物が乗り切った。
河原が突っ込む中、トバリが軽く息を吐く。
「改めて昼飯を食べに行くぞ」
「うん!」「はいッス」
「あ、ああ、若いのはいいね」
〈河原さん、精神年齢はアナタとほぼ同じくらいですよ〉
トバリは河原に同情の視線を送りつつ、みんなで昼ごはんを食べに行くのだった。




