28話・シオンとソラの模擬戦、かなり激しいな……。
如月訓練施設内にある第8道場。
ソラとシオンの模擬戦が続く中、トバリが頬を歪める。
〈互いにガチで殴り合っているが大丈夫か?〉
首を傾げるトバリをよそに、シオンが踏み込んだ。
「武技・戦華!!」
「やっぱり武技を使えるんスね!」
シオンが木刀にオーラを纏わせ、身体強化と共に全力で振り抜く。
その重たい一撃をソラは身体強化を使ったまま大盾を両手で持ち、全力で防御した。
「「ぐっ!?」」
木刀と大盾がフィールドの中央でぶつかり合う。
すると木製の大盾にヒビが入り、シオンがもっと力を込めた。
「ハアアアァァ!!!!」
シオンの気合いの入った叫びに、ソラはギリッと歯を鳴らす。
「負けないっス!!」
ソラもさらに足腰を落として斬撃を受け止め続ける。
完全に拮抗する中、ソラの木製の大盾のヒビがさらに大きくなり、ついに砕けた。
「いける!」
シオンが砕けた大盾の破片を踏み、運悪く転んでしまう。
「あ」「「「え?」」」
ソラが咄嗟に左へ回避すると、シオンが床を転がった。
その隙を見逃さずソラは接近してうつ伏せに倒れるシオンの背中を踏みつけ、メイスを後頭部へ向ける。
「そこまで! 勝者、新道ソラ!!」
「おれの勝ちッスね!」
「うぐっ!? も、もう一回!!」
悔しそうに床を叩くシオンへ、ソラが満面の笑みを浮かべる。
2人の模擬戦を見ていたトバリは立ち上がり、2人の元に近づく。
「2人ともお疲れさん」
ソラはシオンの背中から足を離して、トバリに近づいた。
その姿にトバリは戸惑いつつ、目の前にいるソラへ言葉を発する。
「ねえトバリ、褒めてほしいッス」
「お、おう、こういう時はどう褒めたらいいんだ?」
「優しく頭を撫でてほしいッスね」
「お前は大型犬か!?」
ソラの微笑みにトバリが突っ込んだ。
「かもッス! そんなわけでよろしくッス」
「いや、あの、流石に……」
「ちょっ! 貴様、なんでトバリを独り占めしているんだ!」
「ギャン!?」「ゴフッ!?」
キレたシオンがソラに飛び蹴りをした。
すると、吹っ飛んだソラがトバリを押し倒してしまう。
シオンは飛び蹴りをして尻餅をついて、涙目になった。
「いったあ!?」
「き、君たち、流石にやりすぎだ!?」
河原が焦って止めようとするが、シオンが鋭い目を浮かべる。
「河原さん。コイツには負けたくないんだよ!」
「ふふん! さっき負けたやつが何を言っているんスか?」
「き、貴様!? もう一度、わたしと戦え!」
「今はトバリに褒めてほしいッス」
「……やだ」
「「ええ!?」」
ソラが押し倒したトバリに抱きつく。
だがトバリは死んだ魚のような目になり、首を横に振った。
「当たり前だろ!? てかお前ら、なんで俺を巻き込んだよ!」
「ふふん! だってトバリは性格が悪くて文句は言うけど優しいじゃん」
「おいこらシオン!?」
「確かに! トバリさんは不器用ッスよね」
「……コイツら」
ため息を吐くトバリへ、シオンとソラが満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ、次の模擬戦で勝った方がトバリに褒められるのはどうッスか?」
「乗った!!」
「……え?」
〈コイツら、なんで俺に褒められるのがいいんだ?〉
トバリから離れたソラが立ち上がる。
そんな中、箒と塵取りを持ってきた河原が3人へジト目を向ける。
「模擬戦を再開する前に砕けた大盾の破片を掃除するよ!」
「「「あ」」」
ソラとシオン、そしてトバリが河原からの一言に固まった。
ーー
その後、壊れた大盾の破片を掃除してゴミ袋に捨て、別の大盾を装備したソラはシオンとの模擬戦を再開した。
「ふふん! 7勝3敗でおれの勝ち越しッスね!!」
「ま、まだ! 次の10本はわたしが勝ち越すわ!」
「シオンさんはボロボロかつ足がガクガクだからこれ以上は模擬戦をやめてほしい!」
「ええ!?」
「「「当たり前だ!!」」」
驚くシオンに、トバリ達が全力で突っ込んだ。
「ではトバリ、おれを褒めろッス!」
「いや待って!? ネタを考えてないんだけど?」
「じゃあ、壁際で座って頭を撫でてほしいッスね」
「悪いけど、恥ずかしいからやだ」
「酷い!? 少しくらいいいじゃないッスか!」
頬を膨らませるソラをよそに、シオンがニヤリと笑う。
「ねえトバリ。わたしも3回勝ったから撫でられる権利はあるよな?」
「……河原さん、どうすればいいですか?」
「オレに聞くなよ!?」
「ですよね!」
トバリが苦笑いを浮かべる中、ソラとシオンが満面の笑みを浮かべた。
「やっぱりトバリをいじるのは楽しいッスね」
「ああ、最高だな」
「2人ともお仕置きされたいか?」
「「ごめんなさい!!」」
トバリの冷たい瞳に、2人は冷や汗を流しながら頭を下げた。
「ったく、お前の冗談はきついぞ」
「冗談じゃないッスけどね! それでトバリ、一緒に行くナバールリゾートの打ち合わせをしたいッス」
「……は? 貴様ら2人で遊びに行くつもりか!?」
「いや、河原さんが責任者としているぞ」
シオンが固まる中、ソラが自信満々に言葉を返す。
「そんなわけでおれ達だけで行ってくるッス!」
「待て待て!? なんでわたしを誘ってくれないんだ!!」
「この話が出た午前にいなかっただろ」
「そうだけど! 一緒に行きたい!」
「お、おう。俺はいいけど、ソラと河原さんはどうする?」
トバリがソラや河原の方へ目を向ける。
「んー? ルートはこっちが決めるけどいいッスか?」
「理不尽じゃなければいいぞ」
「わかったッス! 責任者の河原さんはどうっスかね」
「お、おれと問題ないが、面倒が増えるな……」
「「「お世話になります!!」」」
河原がぎこちない笑みを浮かべる中、トバリ達は笑顔で一礼した。
「じゃあトバリ、今週土曜日の買い物は2人で回ろうッス」
「ふざけるな!? なんでわざわざ2人で出かけるんだ」
「おれは貴様じゃなくて新道ソラッスよ」
「そ、そうか! じゃなくてわたしの話を聞け」
「やだッス!」
ニヤリと笑ったソラが首を横に振った。
2人のやりとりにトバリが露骨にため息を吐く。
「ソラも煽りすぎるな。それに土曜日は河原さんが運転するから実際は3人だろ」
「確かに! 河原さん、運転は頼むッス」
「あ、ああ。今更だけど胃が痛い……」
河原が胃を抑える中、ソラとシオンはショッピングの計画を立て始め、トバリが頭を抱えるのだった。




