27話・ソラとシオンの模擬戦……。あ、容赦ないな
如月訓練施設の第8道場。
フィールドの中央ではソラとシオンが木製の武器を構えている。
審判をする河原はゴクリと唾を飲み込む。
「2人とも準備はいいかな?」
「うす!」「ええ!」
2人は河原へ頷いた後、互いに視線を合わせる。
シオンとソラは鋭い瞳で睨み合う。
「それで貴様はなんで初対面のわたしに模擬戦を挑んだんだ?」
「君がムカつくからッスね」
「ふーん? わたしにはムカつかれる覚えがないぞ」
首を傾げるシオンへ、ソラがさらに目を細めた。
「君にはわからないッスよ」
「そう? まあでも、好きなだけ模擬戦の相手をしてあげるわ!」
シオンは軽く木刀を振った。
「プロテクターもつけず舐めてくるやつに言われたくないッスね」
「ああ、そういうこと! わたしはいつもプロテクターなしで模擬戦しているのよ!」
「……は? 頭がおかしいんスか?」
ソラが唖然とする中、シオンが息を吐く。
「うん! それに痛みは味わいたいでしょ!」
「噂に聞いていた通りのバカ娘ッスね」
「そうだけど? バカ娘って……あ、トバリ! 貴様が教えたのか!」
「ああ」
壁際にいるトバリがシオンに睨まれて露骨に目を逸らす。
「あのな! わたしはバカ娘だけど、人に紹介するならもう少しマシなやり方をしろよ」
「マシなやり方? お前、自分がどんだけやらかしてきたか覚えているのか?」
トバリはシオンに睨まれつつ、痛いところをつく。
「それはごめん! でも、出来れば他のやつがいいんだよ!」
「じゃあ、ポンコツ娘はどうだ?」
「わたしはトンコツより、醤油ラーメン派だぞ!」
「「「なんの話をしているんだ!?」」」
シオンの返しにトバリ達は首を傾げた。
「と、トンコツか、ドンケツか、知らないッスけど、君がバカ娘じゃないッスか!」
「確かにわたしはバカ娘だが、本名は如月シオンだぞ」
「ええ!? じゃあ、ここの持ち主の名家じゃないッスか!」
「まあなー!」
鼻を長くするシオンへ、ソラが呆れたようにため息を吐く。
「こんなやつが如月家なんスね」
「如月家は姉が継ぐからわたしは関係ないぞ!」
「そういう話じゃないッス!? てかさっきから、話をずらすのはやめてほしいッスよ!」
「ごめんごめん。貴様を煽るのが楽しくてな」
「……は?」
満面の笑みで煽るシオンへ、ソラがドスの聞いた声を放つ。
審判の河原が冷や汗を流す中、右手を上げた。
「最初の舌戦はこのくらいで、模擬戦の準備!」
「はい!」「うす!」
河原の一言で、シオンとソラは改めて武器を構え直す。
少しして、2人の顔を見た河原が右手を振り下ろした。
「それでは、模擬戦開始!!」
「ハアァ!」
開始の合図と共にシオンが踏み込み、ソラへ斬りかかる。
直線上の動きにソラはあえて大盾を前に構えず、メイスを突き出す。
「やっぱり予想通りッスね」
ソラが上段からの振り下ろしをする。
シオンの一撃をソラから見て右に回避して、メイスの横薙ぎでシオンのお尻を本気で強打する。
「ぎゃん!?」
悲鳴を上げたシオンが涙目になるが、すぐに前に転がり木刀を構えた。
「き、貴様、なぜ尻を狙った!」
「君にプロテクターをつけさせるためッスね」
「はん! この程度の痛みは慣れているからプロテクターなんてつけるか!」
「じゃあ、ボコボコにして痛い目に合わせてやるッス」
シオンは痛みで歯を食いしばりながらも、木刀を構え直す。
「やってみろ!」
「わかったッス!」
ソラが真顔で頷き、大盾を構えて突撃する。
そのソラの突進をシオンは左に飛んで回避して、木刀を振るう。
だがソラはメイスでしっかりガードした後、そのまま力任せに振り抜いた。
「ぐっ!?」
体勢の崩れたシオンが尻餅をつき、表情を歪める。
「散々煽ってきた割にはこの程度なんスね」
「おいおい! まだ準備運動だぞ」
「なら、さっさと本気になった方がいいッスよ」
軽く息を吐いたソラへ、シオンが睨む。
そのままシオンが軽く距離をとり、身体強化を発動して、体に半透明のオーラを纏わせた。
2人の模擬戦を見ているトバリは、頬をかく。
「ソラも性格が悪いな」
トバリが死んだ魚のような目になる中、ソラも身体強化を発動した。
「どう躾けてやるッスかね?」
「ふーん? わたしを躾けるなんて面白いことを言うな」
シオンがニヤリと笑う。
互いに身体強化を使い、シオンが先に攻撃を仕掛けた。
「ハアァ!」
「また愚直な突撃ッスか!」
シオンが木刀を上段に構え、ソラへ突撃をする。
ソラはため息を吐き、先ほどと同じく自分の左側に回避をしてメイスを構える。
そのままメイスでシオンのお尻を強打した。
「がっ!? まだまだ!」
「え!?!?」
シオンは強打されたお尻の痛みに耐えつつ、ソラへ向かって木刀を切り上げる。
その切り上げがソラの左脇腹に直撃した。
「ぐっ!? 負けないッス!」
脇腹にダメージを受けたソラだが、すぐにメイスをもう一度振り上げた。
シオンはソラがメイスを振り上げたところを見て、ニヤリと笑う。
「貴様は足元が弱い!」
軽く息を吐いたシオンがしゃがみ、ソラへ足払いを仕掛けた。
するとソラは体勢を崩して、うつ伏せに床へ倒れる。
「さっきの仕返しだ!!」
「あぐっ!? ま、まだまだッス!!」
うつ伏せになったソラへ、シオンが木刀を何回も振り下ろす。
それでもソラは痛みに耐えつつ、床を転がり大盾でシオンの足の脛を殴った。
「あがっ!? それは反則だろ!!」
「悪いッスけど、ルール違反はしてないッスよ!」
思わぬ反撃に、シオンが涙目で後ろに下がった。
その隙にソラが立ち上がり、息を整える。
「貴様の耐久力はどうなっているんだ!」
「君の方こそ、お尻にメイス強打2発を受けているのになんで動けるんスか!」
「お尻はめっちゃ痛いが、如月家の厳しい折檻で慣れているんだよ!」
「な、なるほど……」
シオンの返答にソラがドン引きした。
「まあでも、また当分はまともに座れなさそうだな」
渋い顔をするシオンが、ギリッと歯を鳴らす。
「もっとやってやるッスよ!」
「へえー? やってみろよデカブツ!」
「まな板には言われたくないッスね!」
「「……ぶちのめす!!」」
「あ、はい。コイツら仲がいいな」
トバリが呆れたようにため息を吐く中、シオンとソラの模擬戦は続いていくのだった。




