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24話・ソラとの模擬戦……。今日は悪くないな

 青月山で紫ツノのクマが出た次の日、月曜日の海の日。

 7月中旬の35度を超える猛暑に、トバリは汗をかきながら如月訓練施設の敷地内へ入った。

 9時の待ち合わせですでにソラが来ており、ジャケットにジーンズ姿で大きなバックパックを背負っている。


「トバリさん、おはようッス!」

「おはよう。まだ8時50分なのに早いな」

「昨日は楽しみで寝れなかったんスよ」

「そ、そうか。じゃあ、いくぞ」

「はいッス!」


 トバリとソラは2人で河原が待つ、第8道場の建物に向かう。

 その間にソラが白いシャツに青い半袖ジャケットのトバリを見て微笑む。


「やっぱりトバリさんは軽装が似合うッスね」

「あ、うん、ありがとう」

「いえいえ!」


 嬉しそうに笑うソラへ、トバリがぎこちなく笑う。

 如月訓練施設の正門から10分ほど歩き、2人は第8道場の建物前に到着した。

 そのまま2人が中に入ると、中は冷房が効いておりかなり涼しい。


「トバリ君、おはよう! っと、隣にいるのが昨日連絡をもらった新道ソラさんだね」

「はい! 今日はよろしくお願いするッス」

「こちらこそ、オレは河原ゴウキ。よろしく」


 ソラと河原が互いに握手をした。

 2人のやりとりを見たトバリが無言で男子更衣室へ向かい、用意してある道着へ着替える。


「ソラさんもやる気満々だな」


 トバリは軽く息を吐き、少し休憩してから外に出た。

 すると隣の女子更衣室から、道着姿のソラが出てくる。


「ちょうどいいタイミングッスね」

「あ、ああ、そうだな」


 トバリは満面の笑みを浮かべるソラと共に、クーラーが効いて涼しい道場へ戻った。

 道場内では木剣を持った河原が、準備運動の素振りをしている。


「2人とも来たね」

「「はい!」」


 トバリとソラは河原へ軽く一礼した。

 河原は木剣の素振りをやめ、2人の方に振り向く。


「あの河原さん。ソラさんの扱いはどうなりますか?」

「んー。表向きは見学だけど、よければトバリ君達と模擬戦したり、一緒に基礎練をするのはどうかな?」

「おおお! ぜひ一緒に鍛えたいッス!」

「わ、わかった。では、訓練を始めるぞ」

「「よろしくお願いします!」」


 トバリとソラがもう一度頭を下げてから、壁際に用意されている木製の武器を手に取った。


「まずは準備運動から始めていくよ」

「はい!」「おす!」


 河原の指示に従い、トバリとソラは準備運動のラジオ体操や素振りを始めていく。

 

 ーー


 1時間ほどで準備運動と基礎練習が終わり、現在は10時過ぎ。

 道場の壁際で水分休憩をとった3人は、軽く息を吐きフィールドの中央へ戻る。

 そのままトバリとソラは道場倉庫にあるプロテクターを借りて、道着の上へ着た。


「では模擬戦を始めるけど準備はいいかな?」

「「はい!」」


 トバリの右手に木剣、ソラは右手に木製のメイス、左手に大盾が固定されている。

 指導役の河原は2人の顔を見た後、軽く頬を緩めた。


「まずソラさんの実力がまだわからないから、トバリ君と本気の模擬戦をして欲しい!」

「了解ッス! トバリさん、ぶちのめすから覚悟するッスよ」

「げ、元気だな……」


 やる気満々のソラを見てトバリはドン引きする。

 2人のやりとりに河原が、苦笑いで道場を見渡す。


「トバリ君には悪いけど、いつも通り奥の手はなしだよ」

「はい!」

「ん? あの、河原さんはトバリさんの奥の手を知っているんスね」


 ソラは興味津々で、河原の顔を見つめた。

 その反応に河原は困ったように頬をかく。


「い、いや? オレはあくまでトバリ君が奥の手を持っていることを知っているだけで内容は知らないぞ」

「おお……。トバリさんはどんだけ秘密主義なんでスか?」

「俺にも事情があるんだよ」

「ふーん? どんな事情なんスかね」


 ソラのジト目に、トバリはバツが悪そうに目を逸らす。


「秘密。てか、奥の手を知られるとバカ娘の時みたいに拗れるんだよ……」

「へえー? じゃあ、おれが勝ったらトバリさんの奥の手を教えて欲しいッス」

「ええ!?」

「ふむ。確かにおれも気になるし、ソラさん頑張れよ!」

「はいッス!?」


 ソラが笑顔で頷き、トバリが固まった。


「い、いやいや!? なんで勝手に決めるんですか!?」

「別に恥ずかしい秘密じゃないんだよね」

「それはその……。アイツみたいに拗れたり嫉妬されたらどうしましょう」

「ん? トバリさんが本気になればクマを倒せるのはもう見たッスから、大体のことは問題ないッスよ」

「あ、はい」


 ソラの素直さに、トバリが唖然とした。

 

「よし、話はまとまったね」

「いやあの、俺には何の得もないですよ!?」

「じゃあ、トバリ君が勝ったら、オレのできる範囲で願いを聞くよ」

「へえー? 言いましたね」

「あ、なんか、嫌な予感がする」

 

 冷や汗を流す河原をよそに、トバリがニヤリと笑う。


「今度こそ話はまとまったし、模擬戦を始めるッスよ」

「ああ!」

「……う、うん。ソラさん、勝ってくれよ」


 河原が戸惑う中、トバリとソラは一定の距離をとり木製の武器を構えた。


〈絶対に勝ってやる〉


 河原の審判で模擬戦が始まる。

 トバリは軽く息を吐き、目を鋭くしてソラを見た。


「ソラ、悪いが奥の手なしとはいえ本気でいくぞ」

「もちろん! おれも本気でやるッス!」


 互いに睨み合う中、河原の合図を待つ。


「それでは、模擬開始!!」

「はあぁ!」


 開始の合図と共にソラが大盾を前に構えてシールドチャージを仕掛けてきた。

 トバリは冷静に、シールドチャージを左に飛んで回避する。


〈こいつ、見た目はパワータイプなのに割と動きが早いな〉


 床に着地したトバリは、苦笑いを浮かべながらソラをどう倒すか考え始めるのだった。


 

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