23話・ソラさんのおかげで色々と助かった!
トバリとソラが大型タクシーで青月山から市街地にあるダンジョン省庁の支部の駐車場へ到着。
5200円を運転手へ払った後、トランクに積まれていたドロップ品やゴブリンの装備を下ろしていく。
「いい筋トレになるッス」
「お、おう、お前は力持ちだな」
ゴブリンの装備品を全て背負ったソラが満面の笑みを浮かべた。
「トバリさんは消耗しているし、おれが頑張るッスよ」
「助かる」
「はいッス!」
ソラが楽しそうに返す中、疲労が抜けきらないトバリが息を吐く。
〈さっきよりはマシになったけど魔力の使いすぎはきつい〉
トバリが首に手を置く中、2人は市役所並みに大きな支部の中へ入る。
建物内には武器や防具を装備した冒険者や傭兵達が多くおり、楽しそうに会話していた。
2人は1階のエントランスを通り過ぎ、買取部門へ向かう。
「やっぱり夕方は人が多いッスね」
「ああ。今のうちに親に連絡しておくよ」
「おれもやっておくッス」
長い列に並びながら、トバリとソラはスマホで親に連絡した。
「「よし」」
列に並びながら2人は待ち、係の人にドロップ品を預けて整理券を受け取った。
そのまま2人はエントランスのソファーに座り、広い買取部門のエリア内を見渡す。
「なんてか、若い人が多いッスね」
「学生は夏休みだし、空いた時間でダンジョンに入っているんだろうな」
「なるほど……。おれも早く高校生になって許可証が欲しいッス」
「お、おう。まあ、俺は自分のペースで強くなりたいな」
ソラがやる気満々で拳を握り、トバリは軽く体を引かせる。
2人の手元にリュックと大盾がある中、ソラがトバリをジッと見つめ始めた。
「なんか俺の顔についているのか?」
「なんでもないッス! それで少し早いかもッスけど、トバリさんは高校はどこにいくつもりッスかね」
「んー? 友人のバカ娘がシンラ学園に行きたがっているから、それの付き添いかな」
「バカ娘? トバリさんは友人がいるんスね」
「ええ……。なんでお前まで俺をボッチ判定するんだよ」
唖然とするトバリにソラがジト目を向ける。
「トバリさんって音楽の前と後の休み時間にいつも誰とも話さずにノートに何か書いているだけじゃないッスか」
「それはそうなんだけど。俺だって中学校で友達はいるはず」
「お、おおう、なんかごめんッス」
「急に謝るのはやめてくれ!?」
涙目になるトバリにソラが優しく肩を叩いた。
「大丈夫。おれはトバリさんの友人ッスから」
「ありがとう。じゃなくて、そんな簡単に俺を友達判定してもいいのか?」
「ひどい!? おれの優しさを返して欲しいッス」
「お、おう。でも、俺達はほぼ初対面で今日話し始めたばかりだろ」
「確かに! でも今日はかなり濃かったッスよね?」
「否定できない返しだな……」
トバリはソラの返答に頬を引きつらせた。
「ッス! それでトバリさんは何を隠しているんスか?」
「悪いけど秘密だ」
「味見くらいさせて欲しいッスよ」
「だめ」
トバリは傾いた眼鏡を直した後、ワカメみたいな前髪に手を置く。
隣に座るソラは不機嫌そうにトバリを見る。
「ケチ! トバリさんって秘密が多いッスね」
「かもな。でも、ソラさんだって色々とあるだろ」
「と、いうと?」
首を傾げるソラへ、トバリが天井に顔を向けた。
「ソラさんのアイアンシリーズは金がかかるし、中学生のお小遣いでは買えないだろ」
「この装備は親戚の叔父さんが鍛冶師をやってて、それで作ってもらったッス!」
「謎の解決が早いな……。いや待って、叔父さんが姪に装備を渡すのはおかしくないか?」
「おれがお願いしたら笑顔で作ってくれたッスよ」
「素材費とか人件費はどうしたんだよ」
目を逸らすトバリにソラが自信満々に言葉を返す。
「お金は父さんと母さんが払ってくれたッスよ」
「ですよねー。ソラさんの両親は金持ちなのか?」
「さあ? わからないッス」
ソラが自分の金属鎧の胸元を撫でた。
「そうかい。家族は大切にしろよ」
「もちろんッスよ! ってトバリさん、テレビを見てほしいッス!」
「どうした?」
ソラの一言でトバリが備え付けのテレビを見る。
そこにはニュースがやっており、キャスターの女性が書類片手に話し始めた。
『臨時ニュースです。玉埼県の天馬市にある青月山で地方騎士団の調査が行われ始め、周辺は封鎖されて立ち入り禁止になりました』
「おいおい、また青月山が閉鎖かよ」
「地方騎士団の奴ら、手抜き調査でもしていたのかしら?」
買取部門の待合室にいる冒険者や傭兵が露骨にため息を吐いた。
トバリとソラは互いに顔を見合わせ、バツが悪そうに目を逸らす。
「なあソラ。おそらく今日の夕方にあったクマ関係だよな」
「たぶんそうッスよ」
ソファーに座りながら曖昧な笑みで話す2人は、気分転換で窓の外へ目を向ける。
今は日が完全に落ちた夜で、大通りを走る車や街灯の光がガラスに写っていた。
「仕方ない。明日の海の日から別の訓練場所を探すか」
「ッスね! トバリさんは明日も空いているんスかね?」
「いや? 明日は如月訓練施設で師匠に稽古をつけてもらうつもりだぞ」
「ふーん? おれも如月訓練施設にはよく行くんで、よかったら明日お邪魔させてもらいたいッス!」
目を輝かせるソラへ、トバリが体を引く。
「お、おう、師匠に聞いて大丈夫なら、連絡するよ」
「ありがとうッス!」
ソラは楽しそうに笑い、トバリはぎこちなくスマホを取り出し河原へ連絡する。
〈河原さん断ってくれよ!〉
しかし、トバリの願いは虚しく河原から『OK』のスタンプがメッセージアプリに返ってくる。
「お、おう、大丈夫だってさ」
「よかったッス!」
トバリは戸惑い、ソラが笑顔で頷いた。
その後、ゴブリンやホブゴブリンのドロップ品買取で、税金や手数料、保険や施設利用などで半分取られても、残りは15万円を超えたので2人は満足そうに微笑む。
「ホブゴブリンの戦斧だけで手取り10万とか高くないか?」
「ッスね! でもまあ、これで美味しい夜ご飯が食べれるッスよ」
「あ、おい、手を引っ張るな!」
今日の引いたお金を山分けした2人は、建物内にあるレストランで食べまくるのだった。




