22話・警備員さんつよくね? てか、マジで倒すのきつかった!
トバリが紫のツノを持つクマを倒して約1時間半後。
上空に複数のドローンが飛んでおり、ソラと武器を持った警備員たちが駆けつけた。
「おーい、無事か!」
「え、ええ。警備員さん、ありがとうございます」
「仕事だから問題ない」
青月山に入る前にやりとりした黄色い目を持つ50代前半の男性がトバリの方を見る。
「ん? 警備員さんの目……」
「自分は土魔法の覚醒者なんだよ」
「そ、そうなんですね」
警備員の男性がトバリに手を向ける。
その隣には心配そうなソラが目をウルウルとさせていた。
「トバリさんが無事てよかったッス」
「あ、おい、汚いし、重たいぞ!?」
「ははっ。青春はいいものだね」
「土屋さんには青春はなかったんスか?」
「あったけど、もう40年くらい前だぞ」
トバリに抱きついたソラは、ガンガンと鎧をぶつけた。
その重さと痛みにトバリが、顔を歪める。
「離れろバカ!」
「あ、ごめんなさいッス」
ソラが申し訳なさそうに離れて石の上に正座した。
他の警備員が警戒する様に周りを見る中、土屋はトバリへ声をかけ直す。
「それで、新道さんが言っていたクマの化け物はどこに行ったんだ?」
「あ、その、ギリギリでしたが俺が無理やり倒しました」
「おお、そうか! って、本当に倒したのかい!?」
「こちらが証拠になります」
トバリはリュックからクマの魔石を取り出し、土屋へ渡す。
土屋は拳ひとつ分もあるクマの魔石を見て、口を大きく開けた。
「ほ、本当みたいだね」
「トバリさんはすごいッス! って、どうやって倒したんスか?」
「ハメ技」
「いやいや!? ぼかさずに言って欲しいッスよ」
「やだ」
首を横に振るトバリへ、土屋が苦笑いを浮かべる。
「こちらとしてはどう倒したか聞きたいんだが?」
「すみません。俺の大事な手札なので言えないです」
「ええ……」
「あと、お名前はなんでしょうか?」
「この人は土屋さん、おれが待機所へ戻った時に名乗ってくれたッス!」
「土屋さんね」
正座するソラをよそに、トバリが口元に手を置く。
すると森の奥からゴブリンの群れが現れ、警備員4人が土屋の前に集まった。
「土屋さん、ゴブリン7匹とホブゴブリンが来ました!」
「見たらわかる! お前らは少年たちを守れ!」
「「「「はっ!」」」」
警備員4人がトバリの前に立ち武器を構えた。
ゴブリン達が武器を持ってトバリ達に近づく中、槍を持つ土屋が目を光らせる。
「ロックバレット!!」
土屋の左手から離れた複数の岩の弾丸が、ゴブリンの体を貫く。
盾持ちゴブリンはガードするが、岩の弾丸でバックラーが凹み、体へ石の弾丸がつき刺さった。
「す、すごい。土屋さんって強いんスね」
「土屋さんは元中央騎士のエリートだからな」
「ええ!?」
中堅の警備員の返答に、ソラが唖然とした。
そんな中、盾持ちゴブリンは自分の身を盾にしてホブゴブリンを守り切った。
「ふむ。悪くはないが、ワシ相手には意味ないぞ」
ゴブリン7匹が瞬殺され、残ったのは戦斧持ちのホブゴブリンのみ。
しかも弾丸を浴びており、ホブゴブリンの体から血が出ている。
「ホブッ!」
ホブゴブリンは戦斧を構える中、土屋が地面を踏み締め身体強化を発動した。
「はあぁ!!」
土屋が高速でホブゴブリンへ接近。
ホブゴブリンはタイミングよく戦斧を振り下ろすが、土屋は左に回避してから首元に槍を突き刺した。
「お、おれが苦戦したホブゴブリンをあんな簡単に……」
ソラが固まり目を擦った。
ゴブリン達が全て紫色の煙になって消えた後、土屋が振り向き警備員達に指示を出した。
「よし、ドロップ品を回収して待機所へ戻るぞ!」
「「「「はい!!」」」」
警備員4人がゴブリンのドロップ品を回収し始めた。
トバリはなんとか立ち上がり、近くに戻ってきた土屋へ頭を下げる。
「土屋さん、ありがとうございました」
「いやいや! おいぼれが役に立ててよかったぞ」
「え? 土屋さんはまだ50代前半では?」
「まあの」
笑顔の土屋にトバリが苦笑いを浮かべる。
「回収終わりました!」
「よし、戻るぞ」
「「「「はい!」」」」「「はい!」」
警備員達が敬礼した後、トバリとソラも頷く。
そのまま6人は青月山の麓にある警備員の待機所へ戻った。
ーー
1時間かけて青月山の麓にある待機所へ戻った後、2人はドロップ品を査定してもらった。
〈し、しんどい〉
ソラが身守る中、トバリは女性警備員から手当てをされてから、一緒に大会議室へ入った。
「失礼します!」
「怪我は大丈夫か?」
「問題ないです」
奥の中央席には土屋が座り、警備員達が10人ほど席に着いている。
「土屋警備長。地方騎士が帰ってた後に本当にクマが現れたんですか!?」
「ああ。しかも少年から買い取ったドロップ品や魔石は、値段がゴブリンソードマンに匹敵するぞ」
「なんですと!? では騎士団の調査漏れでしょうか?」
「わからない」
首を振る土屋へ、質問をした女性警備員が渋い顔をする。
「あの、また地方騎士へ調査依頼を出しますか?」
「もちろん。ただ、今回はかなり早く終わりそうだ」
「え?」
女性警備員が真顔になる中、土屋が軽く息を吐く。
「さっきドローン班から報告があって、紫色のツノが生えたクマを見つけたらしい」
「で、ではすぐに部隊を編成しますか?」
「いや、クマの討伐は事務が呼んだ騎士に任せて、自分たちは青月山に人が入らない様にするぞ!」
「「「はい!!」」」
警備員が全員立ち上がり、すぐさま大会議室の外に出て行った。
残ったトバリとソラは、近づいてきた土屋から肩を叩かれる。
「中学生の君たちはそろそろ帰りなさい」
「「は、はい、ありがとうございました!」」
大会議室の外から見える空は夕焼けになっており、土屋の一言にトバリとソラが頷いた。
その後、2人は待機所の外に出て顔を見合わせる。
「「どうしよう」」
今日手に入ったドロップ品を売りに行くため、2人は大型タクシーに乗って天馬市の市街地へ向かうのだった。




