21話・紫ツノのクマさん、普通に強くね?
青月山の河川敷。
紫色のツノが生えたクマが、ヨダレを垂らしながらトバリをジッと見つめる。
「ガウッ!」
「おいおい、クマさんは魔石を食べたいんじゃないのか?」
「グオォ!!」
「ですよね!」
川を背にしたトバリの軽口を無視したクマが、勢いよく突っ込む。
その突進をトバリはジャンプで回避して、クマを川の中へ誘った。
「集中型サンダーボルト!」
「グオオォォ!?」
「悪いがこっちもガチで行かせてもらう」
トバリの左手から離れた雷撃が、水で濡れたクマへ直撃した。
〈よし、これで『麻痺』が入ったな。今のうちに!〉
雷魔法を浴びてクマの動きが鈍った。
チャンスと思ったトバリは、リュックがある岩影に走る。
「グオォ!!」
姿勢を低くしたクマは、怒りの咆哮を上げながらトバリを追う。
振り向いたトバリは足に雷を纏わせ、大ジャンプする。
「雷の翼!!」
〈雷魔法は飛行もできるんだよ! まあでも、練習中で長くは飛べないけどな〉
クマの突進を空に飛んだトバリは、ゴブテツソードを振り下ろす。
その一撃をクマは左手の甲殻でガードして、ガンッと鈍い音が周りに響いた。
「やっぱり無理か!」
すぐさまクマが右腕で叩きつけようとしてきたので、トバリは後ろに下がる。
だが、風圧で軽く吹き飛び地面を転がった。
「ぐっ! やっぱきつい!」
〈麻痺が入って鈍っているはずなのにこの動きかよ!〉
立ち上がったトバリはゴブテツソードを捨てて、岩陰にあるリュックを手に取る。
中からソーディアを取り出し、咆哮を上げるクマへ突撃した。
「グオオォォ!!」
「うるさい! 拡散型サンダーボルト!」
「グオォ!?」
クマへ向かってトバリは左手を向け、サンダーボルトを周りに放つ。
その雷魔法はクマへ直撃して、体を焦がした。
〈まだ全然いけるけど、雷魔法は魔力消費がデカいな〉
トバリは息を整える。
首を振ってトバリを睨むクマは、地面を踏み締め突進してきた。
「グラオォ!」
「さっきよりは遅いな」
「グオッ!?」
雷魔法特有の『麻痺』の影響を受けているクマは、突進する時も渋い顔をしている。
トバリは『雷の翼』をもう一度使い、空中へ逃げてからソーディアを振り下ろした。
「ハアァ!!」
「ガッ!?」
力のこもった振り下ろしを、クマは左手でガードするが、甲殻ごと真っ二つに切り落とされた。
「グオオォォ!?」
〈お、おいおい、ソーディアの切れ味がやばすぎないか!?〉
冷や汗を流すトバリはすぐに後ろへ下がるが、クマの体当たりを受けてしまう。
なんとか剣でガードしたトバリだが、空中に飛び唾液を吐いた。
「がっ!?」
息ができなくなるほどの一撃にトバリは、歯を食いしばり『雷の翼』で体勢を立て直して地面に着地する。
「ハァハァ……。こいつは化け物かよ」
軽くソーディアを振ったトバリは立ち上がり、クマを睨み返した。
クマは左手を失い、切断面から血を大量に流し始める。
「ぐ、グオォ!!」
それでもクマは立ち上がり、トバリを見る。
トバリは息を整えた後に軽く微笑む。
「悪いけど、勝たせてもらう」
ニヤリと笑ったトバリはソーディアに強力な雷魔法を纏わせた。
「モード・雷光!!」
トバリの体には雷魔法の身体強化で、金色のオーラが光り輝いた。
〈3ヶ月前にソードマンとやり合った時は無意識に剣へ雷を纏わせただけだったけど、試行錯誤と鍛錬して出来る様になった今なら、いける!!〉
バチバチとトバリの体から雷が迸る中、クマが左手なしで突っ込んでくる。
「ぐ、グオォ!!」
「元素技・紫電一閃!!」
全力で叫んだトバリは、腰を低くして稲妻の様にクマへ突撃。
目にも止まらない速さで通り過ぎ、クマが振り向いた。
「グオ?」
クマが首を傾げ中、剣を振り抜いた姿のトバリが軽く息を吐く。
「終わりだ」
その一言と共にクマが顔の横から足まで真っ二つに切り裂かれた。
「グオオォォ!?」
雷が迸るクマの体が紫色の煙になって消え、ドロップアイテムを地面に落とした。
トバリはモード・雷光を解いて、顔色が悪い状態でリュックがある岩陰に戻る。
「ハァハァ……」
岩陰に置いてある黒い鞘にソーディアを戻した後、トバリは雲ひとつない空を見上げた。
「か、かった。けど、めっちゃしんどい!」
〈モード・雷光と紫電一閃は両方魔力を食うし、エネルギー効率をもっとよくしたいな〉
リュックから緑茶を取り出したトバリは、がぶ飲みしてホッと息を吐いた。
「ったく、青月山で変なクマが出てくるとは思わなかったぞ」
〈騎士団の見落としか? いや、もしかして何か別のやつでもあるのか?〉
トバリは不思議そうに首を傾げる。
「下手に考えてもわからないが、魔石を食べる魔物か……。ゲームの時にも情報では出ていたけど、リアルになるとマジでバリバリと食ってたな」
少しだけ動ける様になったトバリは立ち上がり、地面に落ちているクマのドロップ品を拾って行く。
その時にソードマンくらい大きな魔石が落ちていたので、トバリは柔らかく微笑んだ。
「俺も少しは強くなってきたけど、まだまだだな」
ドロップ品をリュックに入れたトバリは、救援を呼びに行ったソラを待つために岩陰へ戻るのだった。




