20話・やっぱりこういう時はやばい敵が現れるよな!?
トバリとソラが青月山に入って約1時間後。
2人は川に沿って山の上に登る中、河川敷で戦闘跡とゴブリンの装備が落ちているのを発見した。
「ん? おれ達以外に誰か来てそうッスか?」
「いや、冒険者や騎士ならこんな戦闘の跡にはならないだろ」
「確かに……。周りの木が爪に引っ掻かれたように傷ついているッスね」
互いに周りを警戒する。
すると、河川敷の奥にある森から草木をかき分け、5匹のゴブリンと1.5メートルほどの戦斧持ちの大きなゴブリンが現れた。
「まさか、ゴブリンの縄張り争いッスか?」
「多分、違うけど今はこいつらを倒すぞ!」
「はいッス!」
トバリはソーディアが入ったリュックを大岩の後ろに置き、ソラと共に武器を引き抜く。
現れたゴブリン達は、2人を見つけるとすぐに警戒したように抜刀した。
「ゴーブ!!」
「「「「「ゴブッ!!」」」」」
「やっぱでかいのは群れの指揮官かよ!」
ゴブリン達は全員盾持ちで、右手の武器は片手剣か棍棒だった。
トバリは冷や汗を流すと、隣にいるソラがニヤリと笑う。
「おれがでかいやつをやるので、雑魚は任せたッスよ」
「勝手に決めるな! と、言いたいけど、今はそう動いてやる!」
ゴブリン5匹がトバリ達に襲いかかってくる。
トバリは基礎の身体強化を使い、半透明のオーラを体に纏わせる。
前に出るソラを援護するように、一歩後ろについて行く。
「ゴブッ!」
大盾を突き出して前に出るソラへ、片手剣持ちがゴブリンが斬りかかる。
それをトバリがゴブテツソードで防いでから、力いっぱいに弾き飛ばす。
「悪いが、お前らの相手は俺だ」
ソラが身体強化を使いながら、進路上にいる片手剣持ちゴブリンを金属メイスで殴り飛ばして倒した。
ただ本人は振り返らず、戦斧持ちの大きなゴブリンへシールドチャージを仕掛けた。
「ハアァ!」
「ゴブッ」
「チッ! あいつ、やっぱホブゴブリンかよ」
ソラのシールドチャージをホブゴブリンは戦斧を盾にして防いだ。
力と力のぶつかり合いが起きる中、ホブゴブリンは強引に押して行く。
「負けないッス!」
対するソラも足腰に力を入れ踏ん張る。
そこにゴブリンの1匹が接近するが、トバリはすぐさま蹴り飛ばしてから片手剣を頭に突き刺して倒した。
「残り3匹!」
トバリが振り返ると、片手剣持ちが2匹、棍棒持ちゴブリンが1匹残っている。
軽く息を吐くトバリは、地面を踏み締めてゴブリンへ接近する。
「「「ゴブッ」」」
ゴブリン3匹は一箇所に固まり盾を前面に突き出す。
その動きにトバリは軽く頬を緩め、身体強化を生かして飛び越えた。
大きさ60センチほどのゴブリンが飛び越えるトバリを見て固まる。
「悪いが時間がないんでな」
ゴブリンの後ろに回ったトバリは水平斬りを放ち、左側のゴブリンと真ん中のゴブリンの首を刎ねた。
だが、2匹目を切ったところで斬撃の威力が弱まり、片手剣持ちが反射的にバックラーでガードしたので、雑魚の全滅は出来なかった。
「ゴウブ!!」
「ゴブッ!」
「なっ!? コイツ、逃げるつもりか!」
ホブゴブリンの鳴き声を聞いたゴブリンが、振り返り全力で走り始めた。
「トバリさん、こいつはオレに任せろ!」
「ああ!」
鍔迫り合いをするソラがトバリに声をかける。
トバリは森の中に入りそうなゴブリンを追いかけようとした時、木が倒れる音を聞いた。
「え?」
次の瞬間、逃げようとしたゴブリンが何者かに吹き飛ばされて地面を転がった。
「ゴブッ……」
ゴブリンは紫色の煙になってドロップアイテムと装備を残した。
森の中から現れたは大きさ3.5メートルほどのクマで、頭には紫色のツノが生えている。
「な、なんだよあいつ」
〈テスタメントソウルであんなやつは……いや? あいつは、まさか中ボスのトトクマ!?〉
唖然とするトバリは反射的に下がる。
現れた大きなクマはゴブリンの魔石をボリボリと食べ始めた。
〈新種かトトクマかわからないけど厄介なことになった〉
トバリは冷や汗を流す。
すると今まで鍔迫り合いをしていたホブゴブリンが、ソラを強引に弾いてクマへ突撃した。
「ゴブッ!!」
ホブゴブリンは戦斧を振り上げ、クマへ攻撃する。
だがクマはその一撃を軽く左腕でガードした後、右手でホブゴブリンを上から押さえつけた。
「う、うそ……。あいつは化け物ッスか!?」
「ああ! ソラさん、今すぐ警備員の待機場へ走れ!」
「と、トバリさんはどうするんスか?」
「俺はここで時間を稼ぐんだよ!!」
尻餅をついていたソラが立ち上がり、顔を真っ青にした。
「そんなよ無茶ッスよ」
「うるさい! さっさと行かないと蹴り飛ばすぞ!」
「……わかったッス。でも絶対に生き残ってくださいッスよ」
「約束してやるから早く行け!」
ソラが悔しそうに唇を噛みながら下流へ向かって行く。
クマは地面に倒したホブゴブリンの首元に左爪を突き刺して倒した。
そのままホブゴブリンの魔石もバリバリと食べたクマは、よだれを垂らしながらトバリを見る。
「まーた、原作にない負けイベントかよ……。でもまあ、今回も負けるつもりはないけどな!」
ギリッと歯を鳴らすトバリは、ゴブテツソードを震えた手で握る。
トバリはチラッと岩影にあるリュックを見て、ホッと息を吐く。
〈最悪、奥の手のソーディアと雷魔法があるから、ソラより俺が残った方が勝率が高いはず〉
軽く息を吐いたトバリへ、クマが咆哮を上げながら突撃する。
その突撃を左に飛んで回避したトバリは、頬に冷たい汗が流れた。
「こいよ、大きなクマさん様!」
トバリぎこちない笑みを浮かべながら、振り返るクマへ勢いよく斬りかかるのだった。




