19話・まずは安定の雑魚ゴブリン……うん、なんかあるよな
天馬市にある青月山。
警備員と別れたトバリとソラは足場の悪い道を進んでいく。
「それでソラさんは青月山でどんな訓練をするつもりだ?」
「悪い足元に慣れる訓練と、魔物がいたら倒すためッスね」
「前者はともかく、後者は警備員さんがたくさんいるし、少ないと思うぞ」
「おおう……。せっかく装備を用意したのに悲しいッス」
ショボンと肩を落とすソラへ、トバリが苦笑いを浮かべる。
「まあでも、ワンチャン魔物と戦えるかもな」
「トバリさん、励ましありがとうッス」
「別に? 俺は素直に返しているだけだぞ」
軽く息を吐くトバリは山の中を見渡す。
足元は土が盛り上がり草が生えていたり、木の根っこが剥ぎ出しになっている。
トバリは汗をハンカチで拭きながら、ソラと共に奥へ進んでいく。
「そうッスか。じゃあ、トバリさんはなんでおれの筋トレに付き合ってくれるんスか?」
「シンプルにレベル上げが好きなんだよ」
「れ、レベル上げ?」
首を傾げるソラへ、トバリが楽しそうに微笑む。
「俺が鍛えているのは自己満なのは前に言ったよな」
「鍛えているのとゲームのレベル上げは何が繋がるんスかね」
「単純に、ゲームで魔物を倒したり特訓するのをリアルにしても変わらないだろ」
「つまりトバリさんはゲーム感覚で体を鍛えているんスね!」
「そうそう!」
トバリは前を歩くソラを見ながら頷く。
「なるほど! トバリさんの言うレベルアップは筋肉を鍛えるのと同じッスね!」
「お、おう? そうかな?」
「ッス! あ、トバリさん、なんかいたッス」
「普通にゴブリンがいたな」
川辺に着いた2人は水を飲むゴブリン3匹を見つけた。
トバリは懐かしい気持ちになりながら、リュックを木の下へ置いて腰に装備している、ゴブテツソードを引き抜く。
「ソラさんが前衛をするか?」
「もちろんッス! トバリさん、撃ち漏らしはお願いするッスよ!」
「わかった」
ソラが大盾を左手に、金属メイスを右手に持ち、構えた。
そのままソラがチラッとトバリを見た後、地面を踏み締めながら突撃する。
「ハアァ!!」
ソラの気合いの入った叫びに、水を飲んでいたゴブリンが焦って立ち上がった。
ゴブリンはそれぞれ、短剣、棍棒とバックラー、片手剣を持ち、ソラへ向かう。
「これでも食らえッス!」
ソラのメイス振り下ろしは、真ん中にいる盾持ちゴブリンのバックラーにぶつかる。
ガンッと鈍い音がして、盾持ちゴブリンは勢いに押されて川の中に落ちた。
「「ゴブッ!?」」
短剣持ちと片手剣持ちゴブリン2匹が、ソラへ攻撃を仕掛ける。
するとソラの右側にトバリが、駆け足で近づき短剣のゴブリンの胴体を水平斬りで倒す。
「トバリさんありがとう!」
トバリに斬られたゴブリンは紫色の煙になって消えて、武器とドロップアイテムを地面に残した。
対する片手剣ゴブリンはソラの大盾に攻撃を防がれて、後ろに弾き飛ばされた。
「この感覚は久しぶりだな!」
「トバリさん! 川から上がってくるゴブリンをお願いするッス!」
「おう! ソラさんは片手剣持ちを頼んだぞ!」
「もちろんッスよ!」
地面に残る片手剣持ちゴブリンが後ろに下がる中、ソラが無属性の身体強化を発動。
体から半透明のオーラが溢れ出し、ソラが金属のブーツで石を踏むと砕けた。
「す、すごいパワーだな……」
ドン引きするトバリは、川から上がって来た棍棒とバックラー持ちのゴブリンへ体を向ける。
「ゴブッ!」
「おっと! 悪いけど、お前には用はない!」
トバリは盾持ちゴブリンの棍棒横薙ぎを後ろに下がって回避した。
そのまま突っ込んでくる相手に、足払いを仕掛けて転ばせる。
「お疲れさん」
うつ伏せで倒れたゴブリンの後頭部へゴブテツソードを突き刺して倒す。
トバリはゴブテツソードを軽く振り、ソラの方を見る。
「……え?」
口を開けたトバリが見る先、ソラがシールドバッシュで片手剣ゴブリンを吹き飛ばしているところだった。
「んー、これじゃ全然足りないッス!」
地面を転がるゴブリンが顔を上げたら、ソラが目の前におり、メイスの振り下ろしを頭に受けて沈んだ。
そのままゴブリンは倒され、紫色の煙になって消えた。
「もっと強い魔物と戦いたいッス!」
「それはいいんだけど、今はゴブリンのドロップ品を回収するぞ」
「はーい!」
トバリは木の下に置いてあるリュックを取りに戻り、ゴブテツソードを布で軽く拭いてから鞘に戻す。
ソラが装備を背負い直した時に、トバリがドロップ品を拾い始めた。
「なあソラさん。倒した魔物の取り分はどうする?」
「山分けでどうッスか?」
「了解、それでいこう」
互いに軽く頷き、地面に落ちたドロップ品を拾う。
「そういえば、トバリさんは身体強化は使えないんスか?」
「んー。一応、無属性の身体強化や武器強化も使えるが、雑魚ゴブリン相手に使うのは魔力が無駄になるだろ」
「確かに! じゃあ次に出会うゴブリンは素で倒すッス!」
「お、おう、無理するなよ……」
トバリは苦笑いを浮かべる。
そのまま2人はドロップ品を回収した後、川の上の方へ向かって行くのだった。




